船の燃料の品質管理で、エンジンの劣化防止を実現
IR Sphinxシリーズご紹介肥料の分析から潤滑油の品質管理まで多彩な分野で活用される中赤外分光システム「IR Sphinxシリーズ」は、ドイツの製造・販売メーカーSpectrolytic(スペクトロリック)社によって提供されています。
- 中赤外分光システム IR Sphinx ATR:全反射測定タイプ
- 中赤外分光システム IR Sphinx Transmission:透過測定タイプ
こちらの製品が船舶の燃料・潤滑油の品質管理でどのように活用できるのかご紹介いたします。
バイオディーゼル燃料と中赤外分光システム
気候変動の影響による異常気象が表面化する中、世界的に「燃料の環境負荷低減」が叫ばれつつあります。
2015年のパリ協定以来、CO2削減への動きが活発化する中、環境へ配慮した新エネルギーとして、バイオディーゼル燃料が注目を集めています。
バイオディーゼル燃料は生物由来の成分で構成されており、二酸化炭素の排出量はゼロとみなされています。
バイオ燃料の原料である植物は大気中のCO2を取り込んで生育するため、燃焼させてCO2を排出しても、全体として大気中のCO2を増加させないという概念、効果であり、京都議定書ではバイオマス燃料はCO2ゼロカウントルールすなわち”カーボンニュートラル”と定義される。
引用:林利昭「船舶における新燃料の動向について」(最終閲覧日:2019/3/27)
環境負荷軽減へと進む潮流においてバイオディーゼル燃料の需要は増していますが、他方で、従来の燃料と比べ、品質が安定していない・管理ノウハウが蓄積されていないなど課題が残ります。バイオディーゼル燃料の品質安定性を確保するためには、その分析が欠かせません。 燃料の品質管理や、分析試験を行いたい、そんなニーズに「中赤外分光システム」が応えます。
こちらが、バイオディーゼルの燃料分析が可能な「中赤外分光システム IR Sphinx ATR:全反射測定タイプ」です。
こちらを使用することで、バイオディーゼル燃料(BDF)にとって燃料の品質・性能に影響を与える脂肪酸メチルエステル(FAME)含有量の分析が可能になります。
FAME含有量補足
例えば、品質が安定していないバイオディーゼル燃料は熱に反応し、酸やスラッジを形成し、エンジンの劣化を招く可能性があります。
そのため、燃料の品質管理のためにFAME含有量を識別することは重要になります。
IR Sphinxスペクトロメーターにより、バイオディーゼルサンプルのFAME濃度を迅速に測定することができます。
- オイルサンプルをATRクリスタル上に設置し、クリスタル全体がオイルで覆われていることを確認
- サンプルが配置されると、ソフトウェアから測定が開始
- 約30秒後にサンプルの分析が可能になる
手順としてはいたってシンプルです。
中赤外分光システムによる分析結果
sFTIR分光計とのFAME検出精度の比較
範囲(%) | FTIRモデル | LVF ATR モデル | |||
---|---|---|---|---|---|
R2(%) | Std. Error | R2(%) | Std. Error | ||
モノアシルグリセロール | 0-2,8 | 91.4 | 0.12 | 88.5 | 0.2 |
ジアシルグリセロール | 0-5,5 | 97.2 | 0.14 | 96.9 | 0.18 |
ジアシルグリセロール | 0-1,2 | 87.5 | 0.09 | 85.6 | 0.14 |
トリアシルグリセロール | 0-13,1 | 95.4 | 0.25 | 95.9 | 0.5 |
トリアシルグリセロール | 0-2,5 | 71.4 | 0.15 | 80.4 | 0.22 |
中赤外分光システムIR Sphinx ATR:全反射測定タイプ
こちらは「燃料分析」を始め、肥料の分析など様々な分野で活用されている中赤外分光システムです。
ATRインターフェイスを特殊なフロースルーセルを使って変更することで、継続的なモニタリングにも使用することができます。
中赤外分光システムによる潤滑油の分析
船舶の航行にとって、燃料と同程度に重視されている「潤滑油」。その品質が劣化した場合、
- 摺動部に摩擦・摩耗が起き、機関の劣化を招く
- 熱を持った部品を冷却できない
- エンジンの汚損
など、さまざまな不具合が起こり、トラブルの原因となります。
航行中の船舶にトラブルが起こらないよう、潤滑油の品質管理・モニタリングは欠かせません。
中赤外分光システムは、バイオディーゼル燃料だけでなく、潤滑油(エンジンオイル)の分析でも活躍します。
船舶用潤滑油(マリンエンジンオイル)の分析には「中赤外分光システム IR Sphinx Transmission:透過測定タイプ」をご活用いただけます。
マリンエンジンオイルには、ベースとなる「ベースオイル(基油)」と、ベースオイル内の特性を向上、追加、または抑制する「添加剤」が混ざっております。
ベースオイルおよび添加剤の量は、油の種類とそれが使用される用途に依存します。
中赤外分光法を採用したシステムを用いることで、
- オイル劣化
- 添加剤の枯渇
- 汚染
これらを分析し、オイルの状態を見極めるための指標を見ることができます。
ベースオイル劣化の分析
ベースオイルの劣化は酸化によって引き起こされます。
中赤外分光法によって、基油劣化に関連する典型的なオイル状態パラメータを見極めることができます。
ベースオイルの劣化と関連したパラメータ
酸化、全酸価(TAN)、全塩基価(TBN)、ニトロ化および硫酸化など。
分子の濃度を割り出し、添加剤を分析
添加剤についても同様です。
添加剤の主な成分となるのは、亜鉛、モリブデン、リン、カルシウム、マグネシウム、バリウムまたはナトリウムの中心イオンを有する分子です。
中赤外分光法では、オイル中にあるこれらの分子を測定し、濃度を割り出すことができます。
汚染の見極め
オイルの汚染は、水、グリコール、ディーゼル、ガソリン、または異物油などの異物によって引き起こされます。
こうした物質も添加剤の場合と同じように、中赤外分光法で分析できます。
このように中赤外分光法によって、エンジンオイルの酸化や、添加剤の分析、オイルへの異物の混入などが分析可能です。
中赤外分光システム IR Sphinx Transmission:透過測定タイプ
潤滑油(エンジンオイル)の分析を始め、ミルクなどの液体サンプルのインライン測定に最適な測定器です。
持ち運び可能な可搬性の高い小型分光システムのため、現場で測定可能。取得したいサンプルデータを迅速に測定できます。