物流分野でドローンの活用が進む中、気象データに基づく安全な運航システムの開発ニーズが高まっています。
気象の流れを正確に把握するLiDARシステムの開発において、重要な光学部品の短納期供給を実現した事例をご紹介いたします。
フリースペース AOM(音響光学素子)用途例
ドローン物流の安全を支える:高性能AOMの短納期供給で、気象LiDAR開発を支援
課題の整理
ドローン物流の安全性向上において、気象の流れを把握することは極めて重要です。
本案件は、お客さまから「ドローンを安定的に動かすために、気流の流れを知る気象LiDARを開発したい」とのご相談いただいたことから始まりました。
気象LiDARとは、レーザー光を大気中に照射し、大気中の粒子からの散乱光を測定することによって風向・風速・湿度などの気象データを取得する光学測定技術です。
特に線状降水帯の調査や安全な飛行経路を確定させるには、リアルタイムな気象データ取得が不可欠と言えます。

水蒸気混合比の鉛直分布の推移
この開発における最大の課題は、システムの核となるAOM(音響光学変調器)の調達期間でした。
従来の海外メーカーでは納期が4〜5ヶ月必要であり、開発スケジュールに大きな影響を与えていたのです。
- 線状降水帯の調査ができ、ドローン物流のアシストを行う気象LiDARの開発を実現すること
- 長納期を解消すること
以上の2点を解決すべく、弊社へお問い合わせをいただきました。
Aerodiode社のAOMに着目
音響光学変調器(AOM)は文字どおり、音響(音波)の力を利用して光を変調する装置です。
気象LiDARでは、レーザー光の照射から散乱光の測定までを高速かつ安定して行う必要があるため、Aerodiode社の1550nm AOMに着目しました。

※LiDARシステムにおいては、1064nmのレーザーダイオードとその電源なども光変調器の選択肢として考慮できますが、今回は下記の理由からAOMを選択しています。
安全性と性能の両立
LiDARに使用されるレーザー波長には規定があります。
今回は人体に当たっても有害性のない、1550nm(レンジ:1470-1630nm)を採用しました。この波長であれば、角膜と水晶体で効率的に吸収され、光が敏感な網膜へ到達するのを防ぐことができます。
1550nmレーザーは、レーザー安全規格(IEC 60825-1)において目の角膜と水晶体で大部分が吸収される特性が考慮されており、可視光域のレーザーと比較して安全に使用できる出力が高く設定されています。これにより、検出距離を向上させられます。
また、光通信技術で実績のある信頼性の高い光学部品を使用可能。システム全体の信頼性向上にも寄与します。
高速応答性の実現
200MHzの高速モデルの選定により、気象の急変に対応。
加えて立ち上がり/立ち下がり時間が10ns未満という優れた応答性能により、瞬間的な気流の変化も捉えることが可能です。
また、1550nm帯は大気中の水蒸気による吸収が比較的少なく、様々な気象条件下でも安定した測定が実現できます。
耐環境性能
1550nmの赤外光は、可視光と比べて霧や雨の影響を受けにくい特性があります。太陽光の影響を受けにくい波長帯でもあるため、昼間でも安定した測定が可能です。
温度耐性の面でも、0℃から+60℃まで(動作温度)と幅広い動作温度範囲を有しており、季節変動の大きい様々な気候条件での使用に対応できるよう設計されています。
グローバル調達による開発加速
従来4ヶ月かかっていた納期を3週間へと約87%短縮。開発スケジュールの遵守に貢献しました。
AOMの世界No.1のシェアを誇るのはGooch & Housego社ですが、Aerodiode社は680〜1850nmの全波長域をカバーする14種類のファイバーAOMバージョンを提供しており、日本への供給においても優位性があると言えます。
未来の物流を支えるKLVの取り組み
本事例を通じて、製品の性能と供給体制の両面から開発をサポートすることの重要性を再認識しました。
弊社(ケイエルブイ株式会社)では今後も、ドローン物流をはじめとする新しい技術分野において、お客様の課題に寄り添い、最適なソリューションを提供してまいります。
AOMに関するご質問、ご相談はこちらよりお問い合わせください。
お問い合わせ関連製品情報

フリースペース AOM(音響光学素子)他の用途例
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