ケイエルブイは、ハイパースペクトルカメラ・光学部品・光源など世界中の光学機器を取り扱う専門商社です。

03-3258-1238

お問い合わせ
KLV大学 マシンビジョンコース

熱ノイズや熱暴走を引き起こす?
産業カメラの発熱とそのコントロール

産業用カメラの耐熱性

カメラと発熱の問題は切っても切り離せない関係にあります。長時間の使用や外気温の影響など、さまざまな要因によって、カメラは熱くなってしまいます。この熱を放置しておくと、カメラの解像度が低下してしまう場合があります。また、熱ノイズや熱暴走、故障などの心配もあります。高度な機能を保ったまま、産業用カメラを安定的に運用していくためには、熱を上手にコントロールしていく必要があります。

熱問題の前提として考えておかなければならないのが、カメラ自体の耐熱性です。産業用カメラには、動作温度が定められていますので、使用環境に適した温度の製品を選ぶことが、まず大切です。

例えば、ケイエルブイの超小型カメラモジュール(Lシリーズ)マイクロオプティクスでは、次のような動作温度が設定されています。

・超小型カメラモジュール(Lシリーズ)マイクロオプティクス
型番 動作温度
85-0001-01 0~70℃
85-0001-02
85-0011-01 0~60℃
85-0011-02
85-0901-01 -10~80(105)℃


産業用カメラは、なぜ熱くなるのか?

長時間、産業用カメラを使い続けていると本体が熱くなってしまうことがあります。カメラが発熱してしまうと、安全性、信頼性、機能性などに悪影響が出てしまう恐れが出てきます。近年は、産業用カメラも高性能化・小型化が進み、昔より発熱しやすい構造になっていますので、この発熱への注意はますます重要です。

産業用カメラの発熱の原因としては、「外部温度の上昇」、「回路の発熱」、「光源の問題」などが考えられます。

発熱の原因1外部温度の上昇

夏季には、外部の温度が上昇していきます。空調の効いた室内か、それとも外気温の影響を直接受ける現場かなど、カメラの使用環境によって異なりますが、少なからず外部温度の影響を受けることは確かです。

東京都の場合、夏には30℃を超える気温が観測されており、産業用カメラを使用する環境も高温になる場合があるため、夏場の発熱のケアが重要となります。
また、カメラを使用する場所が装置内で、炉・モーター・ヒーターなどの熱源の近くに設置する場合には、そこからの放射熱でカメラが高温になる可能性があるため注意が必要です。

発熱の原因2カメラ自身の回路の発熱

電子回路の基本となるトランジスタでは、クロックごとにスイッチングを繰り返しており、そのたびに電力を消費しています。この電力は微量ですが、何回も繰り返すことで人が感じ取れるほどの熱を帯びてきます。また、回路から電流が漏れてしまうこともあり、これも発熱につながってしまいます。

回路の発熱の図

信号のやり取りは、電気回路に沿って電子が移動することで行われていますが、そこにも多少の「抵抗」があります。そのため、そこで電力が消費され、発熱につながっています。

CMOSセンサーなどの半導体デバイスは、集積回路といわれる通り電気回路のかたまりです。電流が流れると、オン抵抗(電流を流した時の内部抵抗)に応じて、熱が発生します。

熱が発生すると、半導体デバイスに悪影響を及ぼしてしまいます。特に、安全性と性能、信頼性への影響に注意する必要があります。 安全面では、発熱により、電子機器から煙が出たり、発火してしまう危険性があります。また、性能面では、動作速度の低下やデバイスの破壊による動作不良などが懸念されます。

産業用カメラに使われるイメージセンサーでは、温度が50℃を超えると画質の低下が懸念されます。CMOSセンサーはCCDよりも温度に対する感度は低くなっていますが、それでも影響は免れません。

発熱の原因3光源

ほとんどのカメラ撮像には光源が必要です。今日では、小型で指向性の高いLEDが光源として使われることが多くなっています。LED照明は、白熱ランプなどと比べて電気から光への変換が高効率になっていますが、投入された電気がすべて光になるというわけではありません。そのため、白熱ランプほどではありませんが、LED光源も発熱しています。

回路の発熱の図

LEDは、点灯によって発光層の温度が上昇し、温度が高くなるほど発光効率が下がってしまいますので、温度管理には注意が必要です。



産業用カメラが熱を持つとどうなってしまうのか?

カメラの発熱による主な悪影響としては「熱ノイズ」と「熱暴走」があります。さらに、カメラを高温で使い続けることによって、「製品寿命の低下」も起こってしまいます。

発熱の影響1熱ノイズ

「ノイズ」とは、本来存在していないはずの余分な電気信号のことです。熱の発生に伴って出てくるノイズを「熱ノイズ」と呼んでいます。「熱ノイズ」によって、本来、何もない画像にドット状のスターノイズやランダムノイズが表れて、画像がザラザラとした感じになってしまいます。

CMOSセンサーでは、発熱により暗電流ノイズが発生し、画像解像度が低下してしまいます。概算では、6℃の温度上昇ごとに暗電流が2倍になってしまうことが示されています。

カメラのノイズには、入射光に応じて増加するものもありますが、この暗電流ノイズは、入射光量には関係なく素子温度の上昇に伴って発生してきます。

発熱の影響2熱暴走

カメラの内部で熱が発生し、温度の制御ができなくなると、内部のパーツなどが正常に動作できなくなります。これによって、動作不良が起こり、最悪の場合動作が強制停止されてしまいます。こうしたカメラの状態を「熱暴走」と呼んでいます。

発熱の影響3製品寿命の低下

電子パーツの多くは、高温状態で使い続けると製品寿命が短くなってしまうことが知られています。製品寿命の低下は、故障の原因となります。「熱ノイズ」や「熱暴走」が起こらなかったとしても、高温下で産業用カメラを動作させ続けることは好ましいことではありません。



産業用カメラの冷却を考えることが大切

カメラが熱を持ってしまうと熱ノイズや熱暴走が起きてしまい、映像のクオリティにも影響してしまいます。また、カメラや回路が故障してしまい、修理や交換の必要も出てきます。

これを防止するためには、カメラの冷却を考えておかなければなりません。カメラの冷却方法としては「空冷」、「ヒートシンク」「水冷」「ペルチェ」などの方法があります。

ここでは、これらの冷却方法について解説していきます。

発熱の対策1空冷

「空冷」とは、モーターでファンを回して、直接、風を当てることで冷却をする方法です。一般的なパソコンでも使われており、馴染みある冷却方式です。空冷では、自然冷却では対応できない発熱にも対処することができます。ただし、この方法ではファンを回すモーター音や風切り音の騒音の問題があります。
また、ファンの寿命や外気を取り込むことによるホコリの付着などの心配もあります。筐体の構造や風の流れを把握して、上手に取り付けることで、効率的な冷却を実現することができます。

発熱の対策2ヒートシンク

「ヒートシンク」とは、熱の発生源から熱を吸収して、空気中に放熱する部品のことです。材質としては、熱伝導率が高く加工性にも優れたアルミニウムが多く使われています。電気などを使って冷却するわけではなく、熱を空気中に発散する放熱による自然冷却で温度の上昇を防いでいます。ヒートシンクは、空気に触れる面積が広いほど放熱効率が高くなるため、多くの「フィン」を備えた物もあります。

ヒートシンク画像

シンプルな仕組みであることから故障も少なく、自然冷却のため動作音も発生しません。また、周囲の温度以上には冷却できないため、結露発生の心配もありません。

CMOSセンサーは、通常、50~60℃で画質の低下が起こってしまいます。しかし、屋内での使用であれば、ヒートシンクによって周囲の温度の少し上まで冷却できるため、十分冷却することができます。

発熱の対策3水冷

一般的に「水冷」とは、発熱体に水を循環させるヘッドを接触させて、熱を吸収する方式を指しています。「水冷」では「空冷」よりもさらに大きな冷却効果が得られるため、スーパーコンピューターなどの冷却にも使われています。冷媒として水を使っていますが、水は空気に比べて4倍以上の比熱を持っています。つまり、水は空気の4倍の効率で熱を吸収することができるのです。

「水冷」のメリットは、高効率に冷却できるということの他に、熱を媒介する水を移動させることで、「熱を受け取る場所」と「放熱する場所」を距離的に分離できるという点にあります。

カメラ内部に十分なスペースがなく、ヒートシンクをおけない場合でも、「水冷」方式であれば水冷フィンを設置するだけで放熱を行うことができます。

発熱の対策4ペルチェ

電流を流すと熱が移動する「ペルチェ効果」という原理があります。この効果を利用した半導体素子が「ペルチェ素子」で、冷却と加熱をコントロールすることができます。

ペルチェ素子に電気を流すと、片面に「冷却」、もう片面に「発熱」現象が起こります。この現象を利用して、低温側で熱を吸収し、高温側で放熱を行います。電気の量を変えることで、温度の調節が可能です。また、電気の流れる方向を変えることで、冷却と発熱を逆にすることもできます。

ペルチェ素子画像

特に、屋外でCMOSセンサーを使う場合は、外気温や周辺の電子部品からの発熱により、CMOSセンサーの許容上限温度を超えてしまう状況が考えられます。こうした場合には、ペルチェ冷却が効果を発揮します。



最後に

産業用カメラの熱について、熱くなる理由、熱くなるとどうなるのか、熱くしないためにどうすればいいかを解説してきました。

特に小型産業用カメラは、狭い装置内に挿入するため、どのような環境下で使用するのかを明確化したうえで、耐熱性の高いカメラの選択や、熱対策を施すことが必要になります。

小型カメラに関してのご相談はケイエルブイにお問い合わせください。

お問い合わせ

用語集

マシンビジョンコース

ご質問・ご相談お気軽にお問い合せください

お電話でのお問合せ 03-3258-1238 受付時間 平日9:00-18:00(土日祝日除く)
Webでのお問い合わせ