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ハイスピードカメラとは
フレームレートだけではない11個の選び方ポイントも解説

高速で動く物体を捉えることができるハイスピードカメラは、「製造工程の検査」、「科学研究」、「スポーツ科学」などのさまざまな分野で、人間の目では到底捉えることができない瞬間を可視化し、問題の解明や新たな発見の可能性を広げてくれます。

一方で、通常のカメラよりも考慮するべきことが多いため、より仕組みをより理解して選択する必要があります。
本記事では、ハイスピードカメラの基本的な原理から、実際のアプリケーション例、用途に合ったカメラを選び出すためのポイントまで、わかりやすく解説していきます。


1. ハイスピードカメラとは

ハイスピードカメラは、非常に短い間隔で連続的に映像を撮影することができるビデオカメラです。
人間の目が認識できるフレームは、1秒間に30〜60枚なので、通常のカメラのフレームレートは最大60pfsぐらいのものが一般的です。
これに対してハイスピードカメラは、数百fpsから数百万fpsという速度で撮影を行い、通常のビデオカメラでは捉えられないような高速で動く被写体を捉えることができます。

以下はフレームレートが30fpsの通常のビデオカメラと600pfsのハイスピードカメラの0.1秒間の撮影イメージです。
フレームレートが20倍になると1秒間に撮影できる枚数が20倍になり、画像と画像の間の時間間隔が1/20になります。

high-speed-camera.jpg

2. ハイスピードカメラの価値(高フレームレートが生み出す価値)

前述したように、ハイスピードカメラは、画像と画像の間の時間間隔が非常に短くできるので、高速で移動する被写体を観察することが可能となります。

例えば、高速で上下に移動するボールがあった場合に、通常のビデオカメラではフレームとフレームの間にボールが動いていてもその部分が撮影できないので、ボールが止まって見えます。

これに対してハイスピードカメラでは、フレームとフレームの間隔が非常に狭いので、ボールの動きを捉えることが可能となります。

high-speed-camera_2.jpg

つまり、ハイスピードカメラは、「刹那的な現象の解明」、「高速に動作する製造ライン上の検査」など人が普段目にすることができない世界を可視化し、解明するという価値をもたらしてくれます。
また、撮影した詳細な情報をスローモーションで再生することができるので、「スポーツ科学分析」や「エンターテイメントでの演出」などでも使用されます。


3. ハイスピードカメラのアプリケーション

前述したハイスピードカメラの価値で紹介したハイスピードカメラの用途をより詳しく紹介していきます。

・製造工程の検査

製造工程の検査において、人の目で行っていた検査は、産業用ビデオカメラと画像処理技術の進歩により自動化が進んでいます。
この自動化は、検査品質の向上、検査コストの低減などに非常に大きく貢献しており、産業用ビデオカメラや画像処理技術を用いた検査装置は、製造ラインの構築に欠かせない存在になっています。

同時に、工場の生産ラインは、競争力確保のために、リードタイム・コスト削減を目的とした”高速化”が重要視されています。
こちらは、オートメーション技術やロボット技術により高いレベルで実現されるようになってきました。

このように、「カメラによる検査の自動化」と「リードタイム削減のためのラインの高速化」が同時に進んでいるため、生産ラインに導入する検査システムに対して、高速に物体を捉えて処理するニーズが高まっており、そのような現場でハイスピードカメラが活躍します。

現在、ハイスピードカメラが使用される装置・生産ライン・検査は、「半導体製造装置(ボンディングなど)」、「金属プレス機」、「エアバック検査」、「製薬ライン」、「プラスチック成形」、「製品パッケージング」、「ラベリング検査」など様々です。

このような、装置・生産ライン・検査において不良を発見するだけでなく、なぜその不良が発生したかという過程・原因の特定までも実現することができる点がハイスピードカメラの強みです。

ハイスピードカメラのアプリケーション_製造工程

・化学研究

化学反応、物理現象には、短い時間で発生するものがあり、これらの瞬間的な変化の詳細を捉えることは通常のカメラでは難しいので、ハイスピードカメラが活躍します。

例えば、「爆発」、「稲妻」、「流体の流れ(微粒子の動き)」、「蛍光物質の励起」、「界面現象」などは、瞬時の変化が重要であり、これらを解明することは、複雑なメカニズムを解明し、化学の理解を深めるのに役立ちます。

ハイスピードカメラのアプリケーション_科学研究

・スポーツ科学分析

スポーツ選手の動きの改善やスポーツ用品の改良を行う上で、非常に重要になってくるのが分析です。

スポーツ選手の姿勢や動作をハイスピードカメラで捉えることで、「選手の荷重移動・球への力の伝達・関節の動きなどを運動力学での解析」、「スポーツ用品に伝わる衝撃の弾性力学での解析」、「空気や水の抵抗の流体力学での解析」などが可能となります。

これらにより、結果とそれに関連する科学的な要因の相互作用が解き明かされ、選手やスポーツ用品のパフォーマンス向上につながる新たな知見を得ることが可能になっています。

ハイスピードカメラのアプリケーション_スポーツ

4. ハイスピードカメラと通常のカメラの構造の違い

ハイスピードカメラは、通常のビデオカメラと同じで、主に、レンズ、シャッター、イメージセンサー、画像処理回路から構成されています。

High_speed_camera_structure.jpg

そして、高速に画像を撮影するために、特に通常のカメラより「シャッター」、「イメージセンサー」、「画像処理回路」の3点が強化されています。

①高速動作のシャッター

シャッターはイメージセンサーへの光の入力タイミングを制御する役割をはたします。
ハイスピードカメラのシャッターは、非常に早いスピード(数μ〜数n秒)で動作する高速動作のシャッターが求められます。

シャッターには、”グローバルシャッター”と”ローリングシャッター”があり、特徴が異なります。
一般的にハイスピードカメラでは、全ての画素の光を同時に取り込む”グローバルシャッター”が、”ブレ”が少ないため好まれます。
ただし、高速で動作するグローバルシャッターは機械式・電子式ともに高価なため、コストの観点からローリングシャッターが選択されることもあります。

②高感度のイメージセンサー

イメージセンサ

イメージセンサーは、光を電気信号に変換する役割を果たしています。
ハイスピードカメラのイメージセンサーは、非常に短時間で光を取り込んで画像を処理する高速性が求められます。
そして、短時間で光を取り込むということは、イメージセンサーが取得する光の総量が少なくなるので、感度の高いイメージセンサー(光電効率の高いセンサー、ピクセルサイズの大きいセンサー)が使用されます。

ハイスピードカメラには、低消費電力で高速な読み出しが可能なCMOSイメージセンサーが主に使用されますが、感度の観点で優れているCCDイメージセンサーが選択されている場合もあります。

③高速な画像処理回路

FPGA

画像処理回路は、イメージセンサーからの生データを必要な形式の映像に変換する役割をはたします。
ハイスピードカメラの画像処理回路は、この処理を非常に高速に行う必要があります。
そのため、ハイスピードカメラに要求されるフレームレートや解像度に応じて、高い演算処理性能を持ったFPGAやASICなどのハードウェアアクセラレータ(特定のタスクを高速に実行するために設計されたハードウェア)が使用されます。

ASICは完全にカスタム設計された集積回路で、高速に処理が行えますが非常に高価です。
FPGAは、特定のタスクに特化したロジックを設定・プログラムできるデバイスのため、速度ではASICに劣りますが、多様なアプリケーションに自由に対応することが可能です。


5. ハイスピードカメラの選び方

ハイスピードカメラは、撮影速度、解像度、サイズやそれにともなう価格などを踏まえて決める必要があります。
どの仕様が重要かは用途によって変わってきますので、ここでは、ハイスピードカメラを選択する際の主な仕様(要素)を網羅的に紹介していきます。

1) フレームレート

フレームレートは1秒間に何枚の画像を撮影できるかの性能を表す値で、fps(Frames Par Second)の単位で表されます。

FPGA

ハイスピードカメラのメインの仕様であり、フレームレートが高ければ高いほど、写真と写真の間の時間が短くなるため、より高速に動くものを捉えることができます。
ただし、不必要に高いフレームレートは、画像が暗くなったり、データ量が増えるなどのデメリットもあります。

自身が撮影したい対象が1秒間にどの程度動くのか、それは何枚ぐらいの写真があれば捉えることができるのかをあらかじめ確認して、最低限必要なフレームレートを明確にしておくと選択が容易になります。

非常に高速に撮像できるハイスピードカメラには、1秒に数百万フレームを撮影できるカメラもあります。

2) 解像度

解像度は、通常のビデオカメラやデジカメでもよく知られていますが、撮影した画像の細かさを表す値でピクセル(画素数)で表されます。

FPGA

解像度の値が大きい方が画像を細かく撮影できますが、不必要に高い画素数は、データ量が重くなったり、画像処理の負荷が高くなるなどのデメリットもあります。

必要な画素数は、撮影したい領域の大きさとどれだけ細かく撮影したいかで決まります。
例えば、200mm x 100mmの領域を0.1mmの分解能(細かさ)で撮影したい場合は、200/0.1 x 100/0.1 = 2000 x 1000 = 200万ピクセルの解像度が必要であるということが計算できます。

仕様書では、解像度を縦と横の画素数で2000 x 1000と表記する場合と、その計算結果である200万ピクセルを総画素数として表記する場合があるので、比較する際には注意が必要です。

3) 感度

感度は、イメージセンサーが光を電気信号に変換する能力であり、感度が高いと少ない光量でもノイズの少ない画像を得ることができます。

FPGA

ハイスピードカメラは、1回の撮影にかける時間が非常に短いので、取り込める光の量も少なく、感度の高さが非常に重要です。

感度が低いカメラの場合、速度を上げた際や、装置内などのように暗い場所での撮影の際に、画像が暗くなってしまいます。

感度に関しの仕様は、”ISO感度”や”S/N比、ゲイン”を確認することをお勧めします。

・ISO感度

感度に関してのメインの仕様が”ISO感度”です。
ISO感度は、”光の量”に対してのカメラの感度で、値が大きいほど感度が高いことを表しています。
一般的に、ISO感度が2倍になった場合、半分の強さの光まで記録することが可能であることを示しています。

ハイスピードカメラにおいて、ISO感度の測定方法が統一化されていないという背景もあり、メーカー感で比較する際にはとくに注意が必要です。
実際のところは、デモ機等で撮影してみないと比較しにくい項目です。

・S/N比とゲイン

S/N比は、信号に対してのノイズ比、ゲインはカメラのセンサーが捉えた信号を増幅する際の最大の増幅率です。
光が弱い場合には、ゲインを用いて光を増幅することが可能ですが、同時にノイズも増幅されてしまう点に注意が必要です。
S/N比の低いカメラは、ゲインを用いて信号を増幅する余地がありますが、S/N比の高いカメラは、信号を増幅するとノイズで画像が鮮明ではなくなってしまいます。

【補足】感度に関連するイメージセンサータイプ

光の感度は、イメージセンサーの特性におおきな影響を受けるので、イメージセンサーのタイプも確認しておくことをお勧めします。

イメージセンサーには大きく、CMOSとCCDの2種類があり、

  • CMOS:低消費電力・高速
  • CCDは、感度が高く画質が良い

という特徴を持ちます。

通常のカメラは、CMOSが主流になっており、ハイスピードカメラにもCMOSイメージセンサーが使用されることが多くなってきていますが、高感度を背景にCCDが選択される場合もあります。

4) レンズ(レンズマウント)

レンズは、「拡大の倍率」、「ワーキングディスタンス(被写体とカメラの距離)と被写体の領域の関係」、「明るさ」などを調整し、対象を的確に捉えるために非常に重要な要素です。

FPGA

ハイスピードカメラを選択する際には、”レンズが交換可能なのか”、”交換できる場合レンズのマウントがどの規格なのか”を確認し、希望の撮影距離レンズも合わせて検討することが必要になってきます。

ハイスピードカメラで使用される主なレンズマウントには以下のようなものがあります。

Cマウント 小型のマウントで、小型のハイスピードカメラに使用されます。
レンズの種類も豊富で、レンズの種類で困ることはあまりありません。
PLマウント 映画制作など映像業界で使用されている高品質なシネマレンズ用のマウントです。
特に大型で高品質のハイスピードカメラに使用されます。
Fマウント Nikonのレンズ用のマウントです。
光学的に品質が高く、シャープな描写や、優れた色再現ができるNikonのレンズが利用可能です。
EFマウント Caononのレンズ用のマウントです。
Canonのレンズは、シャープな描写と耐久性を有しており、フォーカス、露出などをカメラから制御できる機構にも優れています。

ハイスピードカメラを購入する際には、レンズも合わせて検討した上で、”対象を希望の画角で撮影できるのか”、”全体のコストがどうか”を確認してください。

5) シャッターの種類

シャッターは、イメージセンサーへの光の入力タイミングを制御する役割を果たします。

FPGA

通常のカメラとハイスピードカメラの違いでも紹介しましたが、ハイスピードカメラに使用されるシャッターは、”ブレ”に影響を及ぼすため、撮影スピードと被写体のスピードを踏まえて、正しく選択する必要があります。

シャッターには、大きくグローバルシャッターとローリングシャッター(電子シャッター)があるので、それぞれの特徴を紹介します。

グローバル
シャッター
グローバルシャッターには、機械式と電子式があります。
機械式は、物理的なシャッターを用いて、全てのピクセルに同時に光を当てることで同時撮影を実現します。
一方、電子式は、角ピクセルにメモリ機能を持たせ、そのメモリに保存する電荷の蓄積時間をコントロールすることで同時撮影を実現します。
どちらの方式も、全てのピクセルの撮影タイミングが同時になるので、ブレが発生しません。
ローリング
シャッター
物理的に光を遮るのではなく、イメージセンサー自身が情報を読み込むタイミングを制御する方式で、センサーの行が順番に読み込まれます。
機械的な機構を必要としないので、低コストで実現できますが、高速で動きのある被写体に対してブレが発生しやすいので注意が必要です。

基本的には、”ブレ”に対して強いグローバルシャッタがハイスピードカメラには向いています。

ただし、ハイスピードカメラで1枚の撮影にかかる時間を短くして、物体の速度に対して十分に高速な撮影を行えるのであれば、ローリングシャッターでも”ブレ”は十分に小さくできるので、コストパフォーマンスの高い選択肢となる可能性もあります。

6) 接続インターフェース

接続インターフェースは、カメラとPCを接続する際の物理的なインターフェース(ポートやケーブル)の種類です。

FPGA

接続インターフェースの規格で上限の通信速度が決まっているので、速度が必要なハイスピードカメラでは接続方式も重要になります。

(※ハイスピードカメラ内に十分なストレージ(データ保存容量)があり、撮影後にまとめてデータを転送する場合にはこの限りではありません)

ハイスピードカメラの主な接続インターフェースは、イーサネットとUSBですが、それ以外を使用しているカメラもあるので、主なインターフェースをご紹介します。

イーサネット ローカルエリアネットワーク接続(LAN接続)を利用した接続インターフェースです。
カメラにIPアドレスを持たせて、PC側でネットワーク上のカメラを認識することで、制御・撮影を実現します。
伝送距離が長いことや、ケーブルからある程度の電力の給電も可能であることから産業用ハイスピードカメラで多く使用される接続インターフェースです。
USB カメラに限らず多くのデバイスに使用されている一般的なデバイス接続インターフェースです。
USB2.0, USB3.0, USB3.1 などバージョンごとに通信速度が異なるため、バージョンも重要です。
ほとんどのPCにUSBポートがあるため汎用性が高いこと、プラグアンドプレイによりUSBポートに差し込むだけで使用できること、電源供給も可能であることから、ハイスピードカメラを手軽に使用したい場合に適したインターフェースです。
Camera Link カメラとPCを接続するための専用のインターフェース規格です。
PC側に専用のボードが必要になります。
専用規格として産業用ハイスピードカメラなどで使用されてきましたが、イーサネットやUSBなどの汎用規格の技術革新により使われる機会は減少しています。
HDMI 映像と音声をデジタル形式で伝送するためのインターフェースです。
主に、ディスプレイ、テレビ、レコーダーに接続することを想定した規格であり、画像を受け取った側で表示や録画をする場合に使用されます。
ハイスピードカメラで撮影した動画を通常のスピードで確認することは不可能なので、ハイスピードカメラ側の再生機能(スロー再生)などを使用して確認することになります。

カメラによっては、イーサネットとUSBなど複数のインターフェースに対応しているモデルも存在します。

7) プロトコル

カメラからPCにデータを送付する場合、規格に従ったデータを提供する場合があり、この規格のことをプロトコルと呼びます。

FPGA

GigE VisionやUSB Visionなどの汎用プロトコルに対応しているカメラを使用すると、そのプロトコルに対応したソフトウェアやライブラリを簡単に使用できるため、カメラの組み込みが楽になります。
一方、汎用プロトコルに対応していないカメラの場合には、カメラに付属するSDKなどを用いての組み込みが前提となるため、より高い知識が必要となります。

前述の接続インターフェースとリンクしている項目で、接続インターフェース毎に規格が分かれていますが、接続インターフェースがイーサーネットだからGigEVision、USBだからUSB Visionに必ず対応しているというわけではないという点に注意して確認したおく必要があります。

GigE Vision イーサネット接続でカメラのコントロールや撮像した映像を転送するためのプロトコルです。
10Gbpsまでの高速転送が可能、100mまでの長距離伝送が可能、パソコンのイーサネットのポートを使用可能であることから、産業用のハイスピードカメラで比較的よく使われます。
スイッチングハブなどを使用して複数のカメラを接続することも可能です。
USB Vision USB接続で、カメラのコントロールや撮像した映像の転送を行うためのプロトコルです。
USB3.1 Gen2では、GigEと同等の10Gbpsまで高速転送が可能ですが、それよりも下位の規格が使用されることが多く、比較的FPSの低めのハイスピードカメラを手軽に使用できる点で優れています。
通常のUSBカメラ用のアプリケーションやプログラムのライブラリも使用できます。
Camera Link カメラリンク接続で、カメラのコントロールや撮像した画像の転送を行うためのプロトコルです。
最大転送速度が850MbpsとGigEやUSBと比較して遅い点に注意が必要です。
また、GigEのイーサネットやUSBのように汎用I/Fではないので、カメラリンク用のボードなどを購入してPCに取り付けて使用する必要もあります。

8) 画像処理回路

画像処理回路は、ハイスピードカメラから取得した画像データに対して様々な処理を実行するための専用のハードウェアです。

FPGA

画像処理回路をハイスピードカメラに搭載することで、この後紹介する、「画像の圧縮」や「画像処理」などをハイスピードカメラ側で行い、処理後の画像をPCに送ることができます。
これにより転送する容量の削減やPC側でのCPUやGPUを用いた処理の軽減が図れます。

カメラに搭載する画像処理回路には、”ASIC”、”FPGA”、”DSP”があります。それぞれの概要を以下に紹介します。

ASIC そのハイスピードカメラのために特化して設計・開発される集積回路で、設計・開発の段階で機能が決められてチップに搭載されているため、高速に動作しますが、プログラムの変更等ができないため、機能の変更や追加を行うことはできません。
FPGA 論理ブロック(ゲートアレイ)とインターコネクト(論理ブロックの接続)から構成され、論理ブロックの接続をプログラムによって変更できるため、ユーザーがプログラムによってある程度自由に機能を実現することが可能です。
柔軟性が高いので、ハイスピードカメラの画像の独自のリアルタイム処理を使用したい場合に適しています。
DSP 畳み込み、フィルタリング、FFTなどデジタル信号処理の機能を搭載したマイクロプロセッサです。FPGAほどの柔軟性はありませんが、ある程度のプログラムは可能で、複雑な処理が必要ない場合に、コストパフォーマンスの高い選択になります。

特徴をまとめると、性能を求めるのであればASIC、コストパフォーマンスならDSP、性能と柔軟性とコストのバランスが良いFPGAとなります。

特徴/デバイス ASIC FPGA DSP
性能
柔軟性
(プログラム可能)
チップ開発期間
コスト
(チップ単価)
消費電力

FPGA搭載でプログラム可能!GigE対応 産業用ハイスピードカメラ

Optomotive社のハイスピードカメラは、FPGAを搭載しており、物体やピークの検出、データの圧縮がカメラが側で可能です。
また、グローバルシャッター搭載でブレに強く、イーサネットの高速通信にも対応しています。(GigE対応モデルあり)

産業用途のハイスピードカメラとしてご検討ください。

製品情報を見る >

9) 対応圧縮フォーマット

対応圧縮フォーマットは、撮影した動画の容量を削減する際の規格です。

FPGA

ハイスピードカメラは、大量のフレームを保存するため、ファイルサイズが非常に大きくなる傾向があります。
よって、必要な画質とストレージ管理の観点から適切な圧縮フォーマットを選択することが重要になります。

カメラ内に動画をリアルタイムで圧縮する機能があるのか、カメラから取得したデータをPCのソフトウェアで圧縮する必要があるのか、どのようなフォーマットに対応しているのか、などを確認する必要があります。

代表的な圧縮フォーマットを紹介します。圧縮率や使いやすさの観点ではMP4やMotionJPEGが使用できると便利です。

RAW センサーから取得した各ピクセルのデータをそのまま保存したフォーマットです。
画質は高いですが、ファイルサイズが膨大になるため、特にハイスピードカメラでは大きなストレージが必要になります。
TIFF 画像劣化の小さい圧縮フォーマットです。
画像劣化が少ない分、ファイルサイズの圧縮効果は小さいです。
科学的な解析などのアプリケーションで使われています。
AVI Windows標準の動画用の圧縮フォーマットです。
画像と音声を交互に織り交ぜながら格納する形式で、ビデオと音声を同期させることができます。
ファイルの圧縮効果は限定的で、高圧縮すると画像の品質が大きく劣化してしまいます。
MP4 優れた圧縮率で幅広く使用されている圧縮フォーマットです。
ストリーミング用に高い画質を維持しつつ、高い圧縮率を実現します。
容量の多いハイスピードカメラの映像をリアルタイムで高品質に圧縮するには、非常に強力なハードウェアが必要になります。
Motion JPEG Motion JPEGは画像圧縮形式であるJPEGを応用した圧縮フォーマットです。
MP4と比較して圧縮率は劣りますが、高速に圧縮することができるため、リアルタイム圧縮に向いており、ハイスピードカメラでも非常に有効な圧縮方式です。

10) ストレージ

ストレージは、動画を保存しておくためにカメラに用意されている不揮発メモリやHDDなどです。
ストレージのデータ保存容量や転送速度を確認しておく必要があります。

・データ保存容量
FPGA

ハイスピードカメラは、1秒あたりの画像の枚数が通常のカメラに対して、10〜10000倍と非常に多いため、データの容量も通常のカメラに対して非常に大きくなります。

例えば、RAWデータ(非圧縮)でフルハイビジョン画質・1000fpsの動画を撮影した場合の1分あたりのデータ容量の推定値は、画素数(1920x1080) × RGB情報(3バイト) × 1000枚 × 60秒 = 373GB にもなります。

よって、ハイスピードカメラで長時間の録画を行いたい場合などには、「解像度・圧縮フォーマットなどを調整し、容量を削減する」、「大きなストレージを持ったカメラを選択する」、「撮影した画像を大きなストレージを持ったPCに転送して保存する」などの対応が必要になります。
解像度や圧縮フォーマットの調整には限界があるため、あらかじめ容量を想定しつつ余裕を持ったストレージ容量を持ったカメラ、または、PCを用意する必要があります。

また、ハイスピードカメラの中には、SDカードやコンパクトフラッシュカードなどにデータを保存できるものもあるので、それも考慮に入れることができます。

・書き込み速度/読み込み速度

ハイスピードカメラは時間あたりに保存しなければならないデータ容量が大きいため、ストレージの書き込み速度/読み込み速度にも注意が必要です。

一般的には、SSD > USB > HDD の順に高速ですが、それぞれの中にも規格が複数あり幅があるので、実際の転送速度などを確認しておくことをお勧めします。
また、PCに転送する場合には、PCへの通信速度が重要になるため、”⑧データ転送規格”に注意が必要です。

11) サイズ・重量

サイズと重量は、カメラを機器に取り付けて使用する際に重要となる要素です。

FPGA

ハイスピードカメラには、小型なものから大型なものまでさまざまなものがあります。

サイズ・重量は、光学系やセンサーの大きさに依存するので、画素数が高いカメラ、FPSが高速なカメラは、サイズが大きく重量が重くなる傾向があります。
特に、高性能なものには、冷却システムがつくことによっても大きく・重くなります。

装置の内部に搭載する場合には、あらかじめサイズを測定しておくことや、ドローンやロボットなどの機構に取り付ける場合には、サイズに加えて重量に問題がないことを確認する必要があります。


6. まとめ

ハイスピードカメラに関して、基本的な原理から、実際のアプリケーション例、用途に合ったカメラを選び出ぶためのポイントを解説させていただきました。

ハイスピードカメラは、通常のカメラと原理は変わりませんが、いくつかのポイントで強化されており、それによって高速撮影を実現し、「産業」、「化学」、「スポーツ」などの分野における、異常の検出、問題の解析などに活躍しています。

ハイスピードカメラを選ぶ際には、フレームレート以外にも、用途に応じてさまざまな点に気をつけて選択していただければ幸いです。

ハイスピードカメラの選択にお困りの方は、一度ケイエルブイまでお問い合わせください。

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