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KLV大学 マシンビジョンコース

デジタル画像相関法をわかりやすく解説!

デジタル画像相関法は、様々な工業製品の品質検査や研究開発の現場で欠かせない技術となっています。この記事では、DIC技術の基本原理から他手法との比較、さらに実際の活用例をわかりやすく解説していきます。

デジタル画像相関法(DIC)とは

デジタル画像相関法(DIC)は、2枚の画像を比較してその類似性を評価する手法です。ここで重要な役割を果たすのが「スペックルパターン」と呼ばれるランダムなまだら模様です。デジタル画像相関法では計測対象物の表面に塗布されたスペックルパターンを追跡することで、物体がどのようにひずみ・変形したのかを測定します。

スペックルパターン

計測対象物の表面にスペックルパターンを塗料などを使って塗布し、力を加える前後の変形を撮影します。撮影された画像には、類似度を測る小さな四角い領域「サブセット」を設定します。変形前の画像を基準として、これらのサブセット内のまだら模様が変形後にどのように移動したのかを追跡、観察します。計測対象物全体でサブセットを追跡していくと、最終的には物体の表面がどのように変形したかが見えてきます。

デジタル画像相関法を応用した解析システム

デジタル画像相関法を応用した解析システムでは、この原理を応用して、物体のどの部分がどれだけ伸びたり縮んだりしたかを高精度で測定することができます。つまり、物体表面の「ひずみ」や「応力」の分布を詳細に可視化し、定量的に評価することが可能です。

以下は、Motion Scope社のデジタル画像相関法 ひずみ計測システム「Tracker SW」で実際の構造物の変形を測定している様子を示しています。

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これは、翼状の部品を特定の周波数で振動させた際の様子です。部品のどの部分に大きな振動や変位が生じているかを視覚的に強調することで、力の分布や伝達の様子を分かりやすく表現しています。

これは、平らな板を特定の周波数で振動させた際の様子です。変位量を色の濃淡で表現しています。変位の大きい部分ほど濃い色で示されるため、プレートの中で力が集中している領域を視覚的に捉えることができます。

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このような解析システムを用いることで、これらの構造物がどのように変形し、ひずみや応力がどのように分布しているかを視覚的に捉えることができます。

デジタル画像相関法のメリットとデメリット

デジタル画像相関法は、物体の変形や変位を非接触で測定する有効な手法ですが、メリットとデメリットの両方があります。

デジタル画像相関法のメリット

  • 非接触測定が可能
    デジタル画像相関法では物体に物理的な接触を必要としないため、測定中にサンプルを損傷するリスクがありません。これにより、デリケートな材料や高温、高圧などの厳しい環境下での測定が可能になります。
  • 全面的な変形測定が可能
    デジタル画像相関法では物体表面全体の変形やひずみを全面的に捉えることができ、局所的な変化も詳細に分析できます。
  • 高精度
    適切な設定と高品質な画像があれば、デジタル画像相関法は非常に高い精度で変位やひずみを測定できます。サブピクセルレベルでの測定が可能です。
  • さまざまな環境条件に対応可能
    デジタル画像相関法では様々なサイズの物体や、さまざまな環境条件下での測定に適応できます。カメラやレンズ、照明の選択によって、幅広いアプリケーションに対応することができます。

デジタル画像相関法のデメリット

  • スペックルパターンの塗布が必要
    スペックルパターンの正確な塗布はDIC測定の成功に不可欠ですが、適切なパターンサイズの使用やサンプルへ悪影響を及ぼさないような塗料や塗布技術を選ぶ必要があります。
  • 高コスト
    一般的に高品質のデジタル画像相関法システムは高価であり、高解像度のカメラ、専門のソフトウェア、適切な照明装置など、初期投資が大きくなりがちです。

これらのメリットとデメリットを理解し、プロジェクトの要件に応じてデジタル画像相関法を検討することが重要です。適切に使用すれば、デジタル画像相関法は非常に有用な測定手法です。

デジタル画像相関法と他のひずみ計測方法の比較

ひずみを計測する方法にはいくつか代表的なものがありますが、特に代表的な手法は走査型レーザー振動計とFBGセンサーです。これらの方法とデジタル画像相関法を比較し、各手法の特長やアプリケーションにおける違いを解説していきます。

走査型レーザー振動計

走査型レーザー振動計は、レーザーを使って物体の振動や動きを捉える方法です。非常に高い精度で小さな振動も測定できるため、複雑な構造物の振動を詳しく調べたい時に役立ちます。しかし、レーザーを使うための設備が必要で、コストがかかることがデメリットです。

FBGセンサー

FBGセンサーは、光ファイバーの中に特定の間隔で反射するブラッグ格子を作成し、その格子を通る光の反射パターンを分析することで、ひずみや温度の変化を測定するセンサーです。このセンサーは非常に小さくて精密なので、物体の内部や難しい場所の変形を測るのに適しています。また、電磁波の影響を受けにくいという特長もあります。

それぞれの特徴や強み

それぞれの特徴や強みをまとめると以下のようになります。

名称 デジタル画像相関法 走査型レーザー振動計 FBGセンサー
向いている場面 表面全体の変形を測定したい時 特定ポイントを非常に正確に計測したい時 内部や微細な範囲のひずみを計測したい時
電磁波の影響が気になる環境で測定したい時
接触/非接触 非接触 非接触 接触(センサーを物体に取り付ける必要あり)
メリット
  • 物理的接触が不要
  • 広範囲の変形測定可能
  • 直感的な結果解析
  • 高精度な測定が可能
  • 微細な振動も捉えられる
  • 特定ポイントの測定が得意
  • 小型で精密
  • 電磁干渉に強い
  • 内部のひずみの測定が可能
デメリット スペックルパターンの塗布が必要
  • 高価
  • 設備が必要
測定範囲が限定される
主な応用
  • 全面的な表面変形の分析
  • 材料の挙動分析
  • 高精度振動分析
  • 構造物の動的特性調査
  • 内部ひずみの検出
  • 温度や振動のモニタリング

これらの技術は、測定したい物体の状況や、求める情報によって使い分けるとそれぞれの強みをいかすことができます。デジタル画像相関法は物体の表面全体の変形を一覧できるので、広い範囲の変形を見たい時に便利です。走査型レーザー振動計は特定のポイントの振動を非常に正確に測りたい時に最適です。FBGセンサーは物体の内部や特定の小さな範囲の変形を測りたい時、または電磁波の影響が気になる環境での使用に適しています。
どの技術を選ぶかは、何を知りたいか、どんな環境で測定するかによって決まります。

用途例

デジタル画像相関法は、材料の変形やひび割れなどの物理的変化を非接触で精密に測定するために用いられます。この手法は航空機や自動車のエンジン耐久試験や、土木工学分野でのコンクリートひび割れの監視など、多岐にわたる分野で活用されています。

航空機、自動車のエンジンの耐久試験

デジタル画像相関法を用いた航空機や自動車のエンジン耐久試験は、エンジンの材料や構造が実際の運用中にどのように振る舞うかを詳細に分析するために行われます。この手法は、エンジン部品の微細な変形や疲労の進行を知ることができ、設計や材料選定の決定に貢献するデータを得ることができます。
以下に計測の大まかな手順を解説します。

航空機、自動車のエンジンの耐久試験

試験の準備段階で、デジタル画像相関法分析のための重要なステップとして、エンジン部品の表面にスペックルパターンが塗布されます。このランダムなパターンは、エンジンが運転される際に部品の表面がどのように変形するかを記録するために使用されます。パターンの正確な塗布は、後の解析の精度を大きく左右するため重要なステップです。さらに、適切な位置にカメラと照明を配置し、エンジン部品を連続的に撮影できるようにします。試験が始まると、設定した条件下でエンジンを稼働し、デジタル画像相関法システムを用いて運転中の画像がリアルタイムで記録されます。これらの画像データとエンジンの運転データは同時に収集され、後に分析されます。試験後には、デジタル画像相関法ソフトウェアが画像を解析し、変形やひび割れのパターンを明らかにします。

この解析を通じて、部品がどのように変形し、どこが最も変形しやすいか、ひび割れが発生しやすい場所と、ひび割れがどのように進行していくか、応力集中領域: 部品の中で応力が集中しやすい場所を調べることで、エンジンのどの部分が故障しやすいか、エンジンの寿命を延ばすためにはどうすればよいかを評価することができます。

コンクリート構造物のひび割れモニタリング

橋、ダム、ビルなどコンクリート構造物の安全性を保つことは公共の安全に直結しています。ひび割れは、構造物の強度や耐久性に影響を及ぼす可能性があるため、早期に発見し、適切な修復や補強を行うことが重要です。デジタル画像相関法は土木工学分野でも活用され、コンクリートのひび割れの測定に有効なツールです。
以下に計測の大まかな手順を解説します。

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準備と画像撮影の段階では、まずコンクリートの梁や構造物の表面が清潔であり、デジタル画像相関法分析に適していることを確認します。自然なままでは分析に適さない場合、スペックルパターンを塗布する必要が生じることもあります。さらに、観察対象の領域をすべてカバーできるように、高解像度カメラを安定した位置に設置します。2台のカメラを使用した3Dカメラを用いると物体の奥行き情報も含めた3次元のデータを取得できるため、コンクリート表面の変位やひずみを3次元でより正確に測定できます。その後、構造物に力や重さを加えていきます。実験室ではコンクリートの試験片に特定の重量をかけて観察したり、実際の建物や橋などでは自然にかかる重さや力がかかる状態をモニタリングします。ひび割れの発生と進行を観察するために、連続してまたは特定の間隔で画像を撮影します。撮影した画像をデジタル画像相関法ソフトウェアで分析し、力がかかっていない状態と力がかかって変形した状態を比較して変位とひずみを測定します。デジタル画像相関法を使うことで目に見えるひび割れだけでなく、裸眼では検出不可能な微細なひび割れを捉えることが可能です。屋外や難しい条件下でのテストではデータにノイズが含まれることがあるため、ノイズフィルタリング技術を適用することで、より正確な評価を行うようにします。

この解析を通じて、構造物の劣化状況を定期的に監視し、ひび割れを含む必要なメンテナンスを適時に実施することによって、構造物の寿命を延ばすことが可能になります。また、将来、構造物が直面する可能性のある地震や台風などのリスクを予測し、事前に適切な対策を講じることも可能になります。

Motion Scope DICひずみ計測システムの紹介

デジタル画像相関法は計測対象物の表面にスペックルパターンの塗布が必要で、高性能な専用カメラが必要というデメリットがありましたが、Motion Scope DIC(デジタル画像相関法)ひずみ計測システムは、スペックルパターンの塗布や専用カメラが不要でありながら、物体表面の変形やひずみを微細なレベルまで高精度に測定することが可能です。

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このシステムは、1マイクロメートル未満の小さな動きを可視化する能力を持ち、材料や構造物の微細な変形や振動を詳細に捉えることが可能です。これにより、物体の性能や耐久性の評価において、高い解析精度を得ることが可能です。
これらの機能をソフトウエア単体で実現できるため、お手持ちのカメラをそのまま活用でき、初期コストを大幅に抑えることができます。

Motion Scope社 Motion Scope DIC(デジタル画像相関法)ひずみ計測システム 製品詳細

製品の特徴

  • スペックルパターンの塗布が不要
  • ソフトウエア単体で実現でき、専用カメラが不要
  • 1μm未満の小さな動きも可視化
  • 微細な動きを拡大して解析
  • ビジュアルモーダル解析で構造物の振動特性を視覚的に分析
  • スマートアライジング技術で高速な動きにも対応
  • 背景型シュリーレン技術で流体や熱の動きも可視化

おすすめポイント

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Motion Scope DIC ひずみ計測システムでは計測物の表面にスペックルパターンの塗布は不要で、カメラのデータから自動的に動きのあるポイントを解析することが可能です。

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また、動きのある部分を多彩な表現で可視化できるため、分析がしやすいのも特徴です。

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特定のポイントにおける周波数ごとの動きや、任意の直線状における動きを捉えるなど多角的な分析も可能です。

FBGによる多点測定が可能なセンサー

FisensのFBGセンシングシステム

FisensのFBGセンシングシステムは「FBGが書き込まれた光ファイバー」と「インテロゲ一夕(分光器)」で構成された「FBGセンシングシステム」です。光ファイバーをインテロゲ一夕へと接続することで、温度・ひずみを検出できるセンサーとしてご使用いただけます。他のFBGセンサーと比較して低価格でご利用いただけます。

Fisens社 FBG(温度・ひずみセンサー)製品詳細

まとめ

デジタル画像相関法(DIC)は非接触で物体のひずみやひび割れを精密に測定する手法です。この技術は、スペックルパターンを用いて2枚の画像を比較し、物体表面の変形を追跡することによって、高精度な測定結果を得ることができます。非接触測定が可能で、デリケートな材料や過酷な環境下での使用に適しており、実際に航空機や自動車のエンジン耐久試験、土木工学分野でのコンクリートひび割れ監視など、幅広い分野で活用されています。デジタル画像相関法は今後ますます工業製品の品質検査や研究開発の現場で重要な役割を果たすと期待されます。

用語集

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