チクソ性は、液体の流れ方に関する特殊な性質です。この性質を持つ液体は、動かしたり振ったりするとサラサラと流れやすくなりますが、静かに置いておくとドロドロと固まりやすくなるという特徴があります。
例えば、日常生活でよく見かけるケチャップはチクソ性の典型的な例です。ケチャップのボトルを振ると、中のケチャップが液状になり、簡単に出てきます。しかし、ボトルを放置しておくと、ケチャップは再び固まり、ボトルから出にくくなります。
このように、チクソ性を持つ液体は、振動や圧力などの外部からの力(せん断応力)によってその流れやすさが変化するのが特徴です。この珍しい性質は、工業製品や日用品の製造において様々な形で利用されています。
チクソ性とは?
産業分野におけるチクソ性の活用と計測・分析
2023.12.14 |
チクソ性とは
産業分野におけるチクソ性の活用
チクソ性は化学製品の製造において多くの利点があり、幅広く応用されています。以下に、主な使用方法と例をご紹介します。
塗料とインク
チクソ性を持つ塗料は、塗布時には低粘度となり、スムーズに塗り広げることができます。しかし、塗布後は粘度が回復し、塗料が垂れることなく安定します。この性質により、均一なコーティング層を作成することができ、美しく仕上がります。インクの塗布においてチクソ性を持つインクは、印刷機のノズルやローラーを通る際の流動性を向上させ、均一に塗布、そして印刷後の垂れやにじみを防ぐことが可能です。
食品産業
食品産業では、チクソ性は食感の改善や扱いやすさのために用いられます。例えば、ソースやドレッシングは、容器から簡単に出せる必要がありますが、皿上では流れ広がりすぎないような粘度が求められます。チクソ性を持つ食品は、このように扱いやすくなるのです。
医薬品と化粧品
医薬品や化粧品の分野でもチクソ性は製品の利便性と性能を向上させるために使用されます。例えば、美容液やクリームは塗布しやすくするためにある程度の流動性が必要ですが、肌に塗った後は流れ落ちない程度の粘度が必要です。チクソ性は扱いやすく、効果を発揮する手助けをします。
建設材料
建設材料の分野でチクソ性を利用すると、セメントやモルタルが流れやすくなり、作業がしやすくなります。そして、動かさないときはしっかり固まって耐久性が高くなります。このような性質があることで、建築現場での作業効率化にも役立ちます。
セラミック製造
セラミック製造におけるチクソ性の役割は、液体状のセラミック(スリップ)の流動性を制御し、型へ均一に流し込み、形状を安定させることです。複雑な形状の製品を高品質に効率的に生産するのに不可欠です。また、適切なチクソ性により乾燥時の収縮やクラックをコントロールすることができ、最終的な製品の強度と耐久性を向上させる重要な役割を担っています。
チクソ性の分析方法
チクソ性の分析では、粘土などの材料がどのように流れるかを理解するために、せん断応力とせん断速度の関係を精密に測定します。これは、粘度計を使って測定され、材料の流動性や固化の挙動を詳細に把握するために不可欠です。
せん断応力とは、材料を流動させるために必要な力のことで、これが大きいほど材料は固く、小さいほど材料は柔らかい、つまり流れやすいといえます。一方、せん断速度は、材料がどれだけ早く動かされるかを表し、この速度が速いほど材料はより流動しやすくなります。
測定の際には、一般的にB型粘度計とE型粘度計の二種類が用いられます。
B型粘度計
B型粘度計は、せん断速度を変えながら材料の抵抗を測るために使われます。具体的には、回転する円盤や円筒を液体に沈め、それがどれだけ材料を動かすことができるか、つまり材料がどれだけ流れやすいかを測定します。実際の測定では、この回転する部分にかかる力を測定し、それによって材料の粘度を計算します。
E型粘度計
一方、E型粘度計は、特定のせん断速度で材料がどれだけの力に抵抗するかを測定します。このタイプの粘度計では、測定したいせん断速度を設定し、材料がその速度でどれだけ力に抵抗するかを測定します。このデータで材料の流動性やチクソ性が特定の条件下でどのように変わるかを知ることができます。
B型粘度計とE型粘度計の主な違い
B型とE型の粘度計の主な違いは、B型が動的な測定に用いられ、材料がさまざまな速度でどのような挙動をするかを観察するのに対し、E型はより静的な条件での材料の挙動を測定する点にあります。つまり、B型は変化する条件下での材料の反応を見るのに適しており、E型は一定の条件での反応を詳細に調べるために使用されます。
チクソ性の粘度測定結果
B型粘度計やE型粘度計で測定したチクソ性流体特性結果を確認します。流体粘性はせん断速度(単位は"1/s"または"rpm")とせん断応力(単位は"Pa")の関係性で評価します。
チクソ性のある塑性流体は、せん断速度が小さい領域ではせん断応力が高い、すなわち粘性が高いことが分かります。一方でせん断速度が大きくなってくるとせん断応力が低くなっていて、一定以上の力がかかると粘度が急激に低下する様子が表れています。
せん断速度に比例してせん断応力が上がるニュートン流体とは全く異なる挙動を示していて、チキソ性が如何に得意な性質であるかが分かりますね。
引用:「素材さん@東大卒のゆとり生活:【素材開発】チクソ性と測定方法【レオロジー】 」(最終閲覧日:2023/12/1)
品質管理におけるチクソ性分析の役割
まとめると、チクソ性分析は、せん断応力とせん断速度の関係を通じて、材料がどのように流れ、どのように固まるかを正確に理解するために行われます。粘度計を使用して、材料に加えられる力(せん断応力)と材料の動き(せん断速度)を測定し、これらのデータから材料の流動挙動を詳細に把握します。力を加えたときに材料がどれだけ流れやすくなるか、また力を取り除いたときにどれだけ早く元の状態に戻るか、といった特性を明らかにすることができます。
セラミック製造工程におけるチクソ性
チクソ性分析
セラミック製造工程においては、チクソ性分析を通じて得られるデータは、材料が機械や型に適切に充填され、均一な品質の製品が生産されるための条件設定に役立ちます。また、乾燥や焼成といった後工程での材料の振る舞いも予測可能となり、不良品の発生を減少させることができます。これにより製品品質を一定させ、信頼と顧客満足度を高めることができます。
さらに、チクソ性分析は、環境条件の変化が製品品質に及ぼす影響を理解するのにも重要です。温度や湿度が変わると材料の流動特性は変化するため、これらの外的条件下での材料のチクソ性を把握することで、より広範囲の条件で安定した品質を保つことができます。
最終的に、品質管理におけるチクソ性分析は、製品の設計から製造、保管、さらには顧客に届けるまでの全過程において、製品の品質を保証するための鍵となります。精密な分析と適切なデータ解釈によって、製品の品質を向上させ、生産効率の最適化を実現することができるのです。
チクソ性の改善と調整方法
材料の成分調整
まず、チクソ性には原材料の選択が大きく関係します。例えば、粘土の種類や粒子サイズ、添加剤の種類と量は材料の流動性に直接関係しています。理想的な粘度を保ちつつ、製品の品質を維持することが課題です。あるメーカーでは、特定の添加剤を導入することで粘土の粘度を均一に保ちながら、製品の強度を向上させた例もあります。
製造過程の最適化
チクソ性を改善することは製造工程の最適化に寄与します。成形や乾燥のプロセスで、適切な温度や圧力の設定が重要です。これらのパラメーターを最適化することで、材料の流動性や形成性を改善し、製品の品質を高めることが可能です。実際に、ある製造業者は、温度と圧力の微調整により、製品の寸法精度を大幅に向上させることに成功しました。
まとめ
さまざまな産業において、チクソ性の理解と管理は高品質な製品を効率的に生産するために不可欠です。液体の粘度や粒子の挙動をリアルタイムで測定するセンサーを導入し、製造過程の最適化を検討するきっかけとなれば幸いです。
Collo Liquid Analyzerの紹介
Collo Liquid Analyzerは、高度なセンサー技術を用いて、液体の粘度や粒子の挙動をリアルタイムで測定する装置です。この装置は、微小な変化も捉えることができるため、セラミック材料の粘土を高精度に分析するのに最適です。 上述のB型粘度計やE型粘度計はサンプリング調査のため、製品製造での粘土をリアルタイムで測定することが難しいという課題がありました。この装置は、材料を通過するときのセンサーの反応を分析することで、粘度の変化を測定します。これにより、製造工程中の材料の状態を正確に把握し、必要に応じて製造パラメーターを調整できます。またCollo Liquid Analyzerは均質化、凝集、ゲル化、結晶化、粒子と粘度以外の視点での製造工程におけるリアルタイム測定が可能です。
インキの状態をリアルタイムに把握する!
ColloidTek社のCollo Liquid Analyzerは、生産工程中の液体を連続的・リアルタイムで測定する液体センサーです。均質化、凝集、ゲル化、結晶化、粒子、粘度変化などを検出することが可能です。
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