しかし、従来の点検方法では多くの手間と費用がかかり、人手不足も相まって維持管理の課題が浮き彫りになっています。従来の方法では点検員が現場に赴き、目視や物理的な検査を行うため、時間と労力がかかります。また、これらの方法では異常を見逃すリスクもあります。このような背景から、より効率的で正確なモニタリング技術が求められています。
構造ヘルスモニタリングを支えるFBGセンサーの成功事例
2024.06.12 | FBGセンサー
近年、インフラの老朽化が深刻な問題となっており、特に橋梁はその影響を大きく受けています。多くの橋梁が耐用年数を迎え、定期的な点検や補修が必要です。

構造ヘルスモニタリングとは
構造ヘルスモニタリングは、構造物の状態をリアルタイムで監視し、異常の早期発見や予防保全を行うための技術です。特に老朽化が進んだ構造物においては、突然の故障や崩壊を防ぐために不可欠です。

構造ヘルスモニタリングは主に、センサー、データ収集システム、データ解析ソフトウェア、通信インフラ、通知・警報システムで構成され、これらを適切に活用することで、効果的な構造ヘルスモニタリングシステムが可能になります。
構造ヘルスモニタリングのメリット
- 異常の早期発見
構造ヘルスモニタリングは構造物のリアルタイム監視を可能にし、微細な異常や劣化を早期に検知することで、大規模な損傷や事故の発生を防ぐことができます。
- 保守コストの削減
定期的な目視検査や物理的な検査を減らし、センサーや自動化されたシステムによる監視を導入することで、保守・点検にかかるコストを大幅に削減できます。
- 構造物の延命化
構造物の状態を常に把握することで、適切なタイミングでの修繕や補強が可能となり、結果として構造物の寿命を延ばすことができます。
構造ヘルスモニタリングにおけるセンサーの課題
構造ヘルスモニタリングには上記のようなメリットがある一方で課題もあります。特にセンサーに関しては、以下のような課題があります。
- 高コスト
一般的に異常を正確に検知するための高感度なセンサーは高額であり、広範囲に設置する場合、コストが大きな課題となります。
- 耐久性が求められる
構造物に設置されるセンサーは、過酷な環境条件(温度変化、湿度、振動、衝撃など)に耐える必要があります。
- センサー配置と設置が難しい
効果的なモニタリングを行うためには、どのセンサーをどこに設置するかを適切に行う必要があります。
構造ヘルスモニタリングに使われるセンサー技術
橋梁の構造ヘルスモニタリングにおいては、様々な不具合を見つけるためにセンサーを使った計測が行われます。以下は橋梁の構造ヘルスモニタリングに使用される代表的な計測項目・不具合・センサーの例です。
計測項目 | 不具合例 | センサー例 |
---|---|---|
歪み | 亀裂、疲労損傷 | 光ファイバーセンサー、歪みゲージ |
温度 | 温度膨張・収縮による損傷 | 光ファイバーセンサー、温度センサー |
振動 | 構造振動、地震応答 | 加速度センサー |
圧力 | 亀裂、構造的変形 | ワイヤーセンサー |
変位 | 構造変位、たわみ | レーザー距離計、LVDT |
傾き | 基礎の沈下、傾斜 | 加速度センサー |
劣化 | 亀裂の発生・進展 | 超音波センサー、ハイパースペクトルカメラ |
特に以下のセンサーは橋梁をはじめとした構造ヘルスモニタリングでよく用いられます。
- 光ファイバーセンサー
光ファイバー技術を利用し、歪みや温度の変化を高精度で検出します。耐環境性に優れ、長期間の監視が可能です。
- 歪みゲージ
構造物の表面に直接取り付け、局所的な歪みを測定します。
- 加速度センサー
構造物の振動や加速度、傾きを測定します。地震や風による動的な反応を監視するために使用されます。
- レーザー距離計
構造物の変位や距離を高精度で測定します。大規模な変形の検出に有効です。
- 超音波センサー
超音波を利用して構造内部の欠陥やひび割れを検出します。非破壊検査技術の一種です。
- ハイパースペクトルカメラ
非破壊で分析でき、コンクリートの成分分析ができるため、コンクリートの劣化を監視できます。
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構造ヘルスモニタリングにおけるFBGセンサーのメリット
FBGセンサーは光ファイバーセンサーの一種で構造ヘルスモニタリングに最適な技術です。FBGセンサーは、以下のような特長により、橋梁の安全性の確保に役立ちます。
- 高精度な測定が可能
FBGセンサーは光ファイバーに書き込まれたFBGの位置にかかる歪みの変化をピンポイントで検知することが可能です。
- リアルタイム監視が可能
FBGセンサーはリアルタイムでデータを収集し、即座に変化を検知することができます。
- 長寿命で高い耐環境性能
光ファイバーは耐熱性の高い素材で作られ、構造上、曲げに強く柔軟で、防爆に優れているという特性をもつため、過酷な環境下でも長期間安定して動作することが可能です。
- 多点測定が可能
光ファイバーの1本に複数のFBGを書き込むことができるため、1本のファイバーで複数箇所を測定することが可能です。
- 電磁ノイズの影響を受けない
検出素子に光ファイバーを使用しているため、測定データが、雷や電磁ノイズの影響を受けずに測定できます。
FBGセンサーはこれらの特長で橋梁の状態を的確に把握し、予防保全や迅速な対応を可能にします。
構造ヘルスモニタリングを支えるFBGセンサー事例
鋼橋におけるFBGセンサーによる溶接継手の応力測定の改善

出典:Xu, J.; Jiang, S.; Wei, T.; Rao, Y.-J. Advances in Distributed Fiber Optic Temperature and Strain Sensor Technologies. Sensors 2018, 18, 491. (最終閲覧日:2024年6月7日)
中国の杭州にある京杭大運河に架かる鋼橋において、溶接によって接合された部分は複雑な形状や材料の特性を持つことが多いため、どのような力がどの程度かかっているかを正確に測定することは非常に難しい課題でした。特に、溶接された部分の力を正確に測定できないことで、構造物の安全性の評価が困難となり、全体の信頼性や耐久性に対する不安がありました。
浙江大学土木工学部の研究チームは、数ある応力測定技術の中からFBGセンサーを選びました。その理由は、高い測定精度と温度の変化によって生じる測定誤差を自動的に補正する機能にありました。他の機械的センサーや電気的センサーと比較して、FBGセンサーは小型で軽量、また電磁波干渉や腐食に対する耐性も持っているため、過酷な環境下でも安定した性能を発揮します。特に、温度変化による応力の変動を正確に測定できる点が決め手となりました。
2015年10月からの橋梁建設期間中に構造ヘルスモニタリングとしてFBGセンサーを導入した結果、溶接部分にかかる力を正確に測定できるようになりました。これにより、温度変化による材料の膨張や収縮の影響で変化する力を正確に測定でき、構造物の安全性評価に大きく貢献しました。結果として、構造物の信頼性が向上し、維持管理や保守の計画もより的確に行えるようになりました。
地下構造物の構造ヘルスモニタリングシステム

出典:Yin, S.; Yu, X.; Dai, Y. Fiber Bragg Grating Sensors for Distributed Strain Measurement: A Review. Sensors 2019, 19, 2849.(最終閲覧日:2024年6月7日)
南中国の埋立地にある地下トンネルは、車両の振動や潮位、降雨、気温などの環境要因に敏感で、亀裂が生じたり、構造物の一部が歪むなどの問題がありました。そのため、安全性を確保するために継続的な保守と検査が必要でした。
中山大学土木工学部は、FBGセンサーを使用した統合リモートリアルタイム構造ヘルスモニタリングシステムの導入を決定しました。このシステムは、車両による振動や環境要因の影響を継続的かつリアルタイムで監視し評価できます。
このシステムの導入により、地下トンネルの状態を継続的かつリアルタイムで監視、評価することが可能となりました。これにより、適切な維持管理や修理を行うことができ安全性を確保できるようになりました。さらに、リアルタイムに問題を把握できるため、大規模な修理が必要になる前に対処でき、長期的なメンテナンスコストの削減にもつながりました。
構造ヘルスモニタリング向けFisens FBGセンサー
橋梁の安全性と長寿命化を目指すみなさまにとって、FisensのFBGセンサーは非常に役立つ製品です。他のFBGセンサーと比較して低価格でありながら、高精度な測定能力と優れた耐環境性能により、橋梁をはじめとした構造物の安全性を確保し、長寿命化を支援します。

まとめ
構造ヘルスモニタリングは、老朽化が進むインフラの安全性を維持するために重要な技術です。特にFBGセンサーを用いることで過酷な環境においてもリアルタイムの状態監視が可能となり、異常の早期発見や保守コストの削減に貢献します。

FBG(温度・ひずみセンサー)
当製品は「FBGが書き込まれた光ファイバー」と「インテロゲ一夕(分光器)」で構成された「FBGセンシングシステム」です。 光ファイバーをインテロゲ一夕へと接続することで、温度・ひずみを検出できるセンサーとしてご使用いただけます。 FisensのFBGセンシングシステムは、他のFBGセンサーと比較して低価格でご提供することが可能です。 ⇒低価格で始めるFBGセンサー
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