FBG(Fiber Bragg Grating:ファイバブラッググレーティング)は、光ファイバーのコア内に短いセグメントで構築された屈折率変調(回折格子)を指します。
ファイバーのコア中にFBGが描画された光ファイバーがFBGセンサーです。
今回はFBGセンサーと他のセンサー(電気式ひずみゲージ、熱電対、光ファイバー温度計)について、比較していきます。
「比較」に入る前にまずはFBGセンサーについて軽く整理してみましょう。
FBG(Fiber Bragg Grating:ファイバブラッググレーティング)は、光ファイバーのコア内に短いセグメントで構築された屈折率変調(回折格子)を指します。
ファイバーのコア中にFBGが描画された光ファイバーがFBGセンサーです。
中でも「複数の対象を測定可能」という点が大きな特徴です。
例えば「熱電対」の場合は「温度」のみ測定可能ですが、FBGセンサーは温度や歪み、加速度といった様々な対象を測定できます。
しかし複数の値を測れるのはいいものの「他のセンサーと比べてどうなのか?」というのは気になるところでしょう。そこで今回はFBGセンサーで測定できる「歪み」と「温度」に関して、それぞれ他のセンサーと比較してみました。
比較対象となるセンサーはこちらです。
まずは「電気式ひずみゲージ」と比較してみましょう。
電気式ひずみゲージは金属の伸縮性を利用し「歪み」を測定するセンサーです。
電気式ひずみゲージは、電気絶縁物と共に物体に接着して使用します。センサーを貼り付けることによって、物体に歪みが生じると物体に合わせてゲージも歪みます。
ゲージが歪むと、金属中の電気抵抗が変化するため、この電気抵抗の変化を見ることで歪みを割り出すことができるという仕組みです。
電気式ひずみゲージとの比較の場合、FBGセンサーに優位性があります。
今回は「耐久性」という側面で双方のセンサーを比べてみます。
「検出素子が何でできているか」という点に注目してみていきましょう。
電気式ひずみゲージでは「疲労寿命」という言葉が頻繁に用いられます。これは「使用による劣化」や「不可逆な変化」を指します。
歪みを検知する検出素子はコンスタンタン(ニッケル45%、銅55%)等の金属で構成されています。
電気式ひずみゲージは、金属の伸縮による電気抵抗の変化を測定していますが「金属の伸縮」が問題になります。
金属が可逆的に変化する範囲には限界があります。長年の使用や、一度にセンサーが耐えることができない大きな負荷が掛かったケースでは、ひずみゲージが「疲労限界」を迎えます。つまり検知する金属部が不可逆的に変化し、センサーとして機能する状態に戻らなくなるのです。
一方、FBGセンサーは検出素子が「光ファイバー」で構成されています。
そのため、金属を用いる電気式ひずみゲージとは異なり「柔軟性が高い」という特徴があります。そのため、疲労寿命のような繰り返しの負荷による不可逆的な変化を心配する必要はありません。
FBGセンサーは耐久性に優れています。
これは「FBGセンサーのアプリケーション」を見ることで「過酷な環境でも動作する耐久性のあるセンサー」だとわかります。
FBGセンサーでの測定が求められるアプリケーションとしては「建築物の監視」が一般的です。
詳細に言うと「経年劣化によって構造に歪みが生じると困る建築物の監視」です。
具体的には、道路や橋、トンネルといったインフラと関わる建築物を指します。
さらには、電力施設、原子炉、航空機の内部設備、風車のブレード等、「稼働中の設備」の監視も行います。
地震や災害等時に構造物の損傷を検出したり、建築物それ自体を監視する「構造ヘルスモニタリング」でも使用されている両センサーですが、これらアプリケーションに共通して言えることは「環境への適合性」及び「耐久性」が求められるという点です。
道路や橋の場合は、風雨に晒され続ける環境であり、地域によっては夏場・冬場の状態が過酷になることもあるでしょう。また内部設備の監視の場合は風雨こそないものの、温度や湿度、電磁ノイズといったセンサーの劣化につながる要素が多く存在します。
FBGセンサーは高温・多湿・電磁ノイズ等が存在する環境でも正しく動作します。
こうした事情から、建築物の経年劣化・稼働中の設備の監視用途では「耐久性」に優れたFBGセンサーが積極的に用いられているのです。
ここからはFBGセンサーと同様「温度」の測定が可能なセンサーとの比較です。
これらセンサーと比較してみましょう。
それぞれのセンサーの概要は次の通りです。
熱電対は、2種類の金属の端を接合して作られる温度計です。金属中の自由電子が熱によって低温側へと移動し、電位差が生じることによって電流が流れ、この電位差(圧力)を測定することによって、温度を割り出します。
熱によって電気を発生させるため、他の多くの温度センサーと異なり、自己給電ができ、外部形式の励起を必要としないなどの特徴があります。
光ファイバー温度計は、バンドギャップの温度依存性に基づいて温度を測定する温度センサーです。
FBGセンサー同様「光ファイバー」を用いた光ファイバーセンシング技術ですから、「高温でも動作する」「防爆性に優れる」「ハードな気候条件でも正常に動作する」等、FBGセンサーと類似する特徴を持ち合わせています。
「電磁波への耐性」と「測定箇所」の2点で比較してみましょう。
「電磁波への耐性」とは、平たく言うと「電磁波の影響を受けない」ということです。
電磁波の影響によって、動作に不具合が生じることがあります。
電磁波は、電磁場の周期的な変化が波動として真空もしくは物質中を伝搬する現象や波自体を指します。電磁波には自然界に存在するもの(例えば赤外線、市街戦のような光など)の他に、人工の機器からも発せられます。自然・人工に関わらず、多種多様な電磁波が発せられますが、これらが機器に干渉することで「電磁ノイズ障害」が発生します。このような障害を引き起こす電波を「電磁ノイズ」と呼び表します。
つまり「電磁波に耐性がない」場合、測定値に影響が出たり、測定それ自体が困難になる自体が発生する可能性があるということを指します。
この点について、熱電対、光ファイバー温度計、FBGセンサーで比較すると次の通りです。
比較センサー | 熱電対 | 光ファイバー温度計 | FBGセンサー |
---|---|---|---|
電磁ノイズの影響 | 受ける | 受けない | 受けない |
熱電対は電磁波の影響を受けるため、電磁波によって動作に不具合が生じることがあります。
他方「光ファイバーセンシング技術」を用いた、光ファイバー温度計及びFBGセンサーは「電磁波の影響がない」ため、電磁波の干渉を受けずに正常に動作します。
FBGセンサーは多点測定が可能です。
「多点測定」とは「1本のファイバーで複数箇所を測定可能」ということを指します。
他方、熱電対と光ファイバー温度計は他店測定ができません。
つまり、複数箇所を測定する場合、複数のセンサー(あるいは検出素子)が必要になります。
光ファイバー温度計が、道路、橋、トンネル、パイプライン等の「長距離区間」のモニタリングに使用されているのは、このように「複数箇所の同時測定が可能」という強みがあるからです。
またFBGセンサーは、検出素子に光ファイバーを用いていることから「長距離伝送に優れている」という特徴があるという点も、インフラストラクチャーで用いられる所です。