車両のさまざまなコンポーネントの温度を適切に管理することをサーマルマネジメントといいます。特に電動自動車においては、バッテリーやモーター、インバーターなどの主要なシステムが発熱するために冷却が必要なので、サーマルマネジメントが重要とされています。
電動自動車におけるサーマルマネジメントの重要性とは。
FBGセンサーが支える温度管理と安全性
2024.09.27 | FBGセンサー
電動自動車(EV)の普及が急速に進む中で、「サーマルマネジメント」に注目が集まっています。この記事では、EVにおけるサーマルマネジメントの基本や技術について詳しく解説し、その重要性を説明します。
サーマルマネジメントの基本
電動自動車におけるサーマルマネジメントとは
自動車における温度管理は、多くの理由でとても重要です。まず、エンジンやバッテリー、モーターなどの主要なコンポーネントが適切な温度で動作しなければ、性能が低下し、故障のリスクが高まります。また、過熱や過冷によって効率が悪化し、燃費や走行距離が影響を受けることもあります。さらに、極端な温度は安全性に重大な影響を及ぼす可能性があるため、厳密な温度管理が必要です。
サーマルマネジメントの必要性
サーマルマネジメントは、以下のような理由で重要です。
- バッテリーの温度管理
リチウムイオンバッテリーは、温度に非常に敏感です。高温や低温はバッテリーの劣化を加速させ、寿命を短くします。また、極端な温度はバッテリーの性能にも影響を与え、航続距離が短くなる可能性があります。
- モーターとインバーターの温度管理
電動モーターとインバーターは、電力を供給する際に発熱します。これらのコンポーネントが過熱すると、エネルギー変換効率が低下するだけではなく、部品の劣化に繋がり故障のリスクが高まります。
- 車内環境の維持
電動自動車では、車内の温度管理もサーマルマネジメントの一部です。電動自動車ではバッテリーやモーターを熱源として利用することができないため、特に寒冷地では、車内を暖かく保つためのヒーターが必要となります。
電動自動車におけるサーマルマネジメント技術
電気自動車の温度管理システムは、主に以下の部分で構成されています。
- バッテリー温度管理システム
バッテリーの温度を適切に保つため、冷却や加熱を行います。このシステムには、バッテリーセル、冷却板、細管、熱交換器、冷却液ポンプ、膨張タンク、バルブ、制御装置、ファン、温度センサー、バッテリー管理システムなどが含まれます。
- モーターと電力制御装置の冷却システム
電動モーター、インバーター、DC-DCコンバーターなどの電力制御装置を冷却します。
- 車内温度調整システム
暖房、換気、エアコンを使って、車内を快適な温度に保ちます。
- トランスミッションオイル冷却システム
ギアのある電気自動車では、摩擦熱を処理するためにオイル冷却が必要です。
- 制御装置とソフトウェア
各部分の動きを制御し、加熱、冷却、温度調整を最適化します。
これらの部分が連携して働くことで、電気自動車の効率的な動作、バッテリーの長寿命化、乗員の快適性確保を実現しています。 例えば、バッテリー温度管理システムは、バッテリーが熱くなりすぎたら冷やし、逆に冷えすぎたら温めることで、常に最適な温度を保ちます。また、急速充電の際にはバッテリーの温度を約55℃に保つことで、内部の抵抗を下げ、より速い充電を可能にします。 電気自動車の温度管理技術は、電気自動車の普及と進化に伴い、ますます重要になっています。バッテリーの性能向上、急速充電技術の進化、走行距離の延長など、電気自動車の進化には、より高度な温度管理技術が求められています。
参考:MokoEnergy A Complete Introduction of EV Thermal Management System(最終閲覧日:2024年9月1日)
サーマルマネジメントにおけるFBGセンサー
FBGセンサーは、サーマルマネジメントに特に適したセンサーです。以下に、FBGセンサーの主な特長とその優位性について説明します。
1本で複数点のモニタリングが可能
FBGセンサーは、1本の光ファイバー内に複数の回折格子を配置することで、複数の測定点を同時にモニタリングすることが可能です。各FBGは異なる波長の光に対して選択的に反射するため、複数の温度やひずみデータを一本のファイバーで取得できます。これにより、広範囲の温度管理が必要な場面や、多数のポイントを監視する必要があるシステムにおいて、配線の簡素化と省スペース化を実現します。
一方、熱電対やひずみゲージは、各測定点に個別のセンサーを設置しなければならず、それぞれに対して配線が必要です。これにより、複数の測定点をカバーするためには大量の配線が必要となり、物理的なスペースが制約されるだけでなく、設置やメンテナンスの手間も増加します。
電磁波・電気的なノイズの影響を受けない
FBGセンサーは、センサ部に電気・電子部品が使用されておらず光ファイバ及び光学部品でのみ構成されているため、電磁波や電気的なノイズの影響を受けません。特に、電磁波が強い環境や高電圧がかかる装置の近くでの使用において、この特性は大きな利点です。これにより、ノイズに対して非常に高い耐性を持ち、信号の精度が確保されます。
これに対して、熱電対やひずみゲージは金属線や電子回路を使用しているため、外部からの電磁ノイズや電気的干渉を受けやすく、これが測定データに誤差を生じさせる原因となります。特に、長距離での信号伝送が必要な場合や、ノイズの多い産業環境では、信号の劣化が問題になることがあります。
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【カタログ】Fisens社
温度・ひずみFBGセンサー
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【解説記事】
FBGセンサーと他センサー比較
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電気自動車のリチウムイオン電池におけるFBGセンサーの活用事例
これまでのバッテリー管理システムでは、電圧や電流、外部の温度といった外部パラメータしか測れず、バッテリーの安全性に重要な内部の状態をリアルタイムで知ることが困難でした。この問題を解決するためにFBGセンサーが活用されています。FBGセンサーは従来のセンサーに比べ、バッテリーの過酷な環境に対する耐久性が高く、バッテリーセルに入れても影響が少ないので、より信頼性の高い測定ができます。FBGセンサーは、複数の測定を同時に多くの場所で行え、電磁波の影響を受けず、小さくて反応が速いため、バッテリーの状態を把握するのに適しています。バッテリーの異なる領域での温度とひずみの変化をリアルタイムで監視し、異常動作の兆候を早期に検出することが可能になりました。この技術は、バッテリーの状態をリアルタイムで知らせてくれるので、より安全で効率が良く、長持ちするバッテリーの開発に役立つと期待されています。
サーマルマネジメント向けFiSens FBGセンサー
電動自動車における適切な温度管理を目指すみなさまにとって、FiSensのFBGセンサーは非常に役立つ製品です。他のFBGセンサーと比較して低価格でありながら、高精度な測定能力と優れた耐環境性能をご提供します。
まとめ
電動自動車の普及に伴い、サーマルマネジメントの重要性が増しています。バッテリーやモーターの温度を適切に管理することで、性能向上や故障リスクが低減できます。特にリチウムイオンバッテリーの温度管理は、車両の寿命や航続距離に直接影響するため、欠かせない技術です。また、FBGセンサーの導入により、リアルタイムで正確な温度監視が可能となり、安全性の向上が期待できます。
FBG(温度・ひずみセンサー)
当製品は「FBGが書き込まれた光ファイバー」と「インテロゲ一夕(分光器)」で構成された「FBGセンシングシステム」です。 光ファイバーをインテロゲ一夕へと接続することで、温度・ひずみを検出できるセンサーとしてご使用いただけます。 FisensのFBGセンシングシステムは、他のFBGセンサーと比較して低価格でご提供することが可能です。 ⇒低価格で始めるFBGセンサー
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