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地球温暖化対策に必要なメタンガス削減

この記事では、メタンガスの基本的な概念とその温室効果、削減方法や測定方法について解説しています。

1.メタンガスとは?

メタンガスは化学式CH4で表される、炭素原子1つと水素原子4つからなる炭化水素の一種です。炭化水素ガス中で最も軽く、無色、無味、無臭のガスで、大気中にも存在します。
メタンは、天然ガスの主成分であり、主に石油や天然ガスの採掘、または石炭の採掘によって地下から放出されます。また、有機物の微生物による分解過程でも生成され、湿地や水田、堆肥、家畜の消化器系、都市ごみ埋立地からも発生します。メタンはエネルギー源として広く利用されており、石油や石炭に比べて燃焼時の二酸化炭素の排出量が少ないことが特徴です。

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2.メタンガスの温室効果

メタンは二酸化炭素に次ぎ、人間によって引き起こされる気候変動に大きく影響する温室効果ガスです。メタンの大気中での平均寿命は比較的短く、約12年ですが、同じ重量であれば二酸化炭素よりも強い温室効果を持ちます。二酸化炭素の何倍の効果を持つかは温暖化係数(GWP)と呼ばれ、メタンは100年間では28倍、20年間では約84倍の効果をもちます。そのため、メタンの排出量を削減することは、地球温暖化を効果的に緩和するために非常に重要とされています。

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世界気象機関(WMO)によると、2020年から2021年までの大気中メタン濃度の増加量は、1984年からの解析期間で最大だったと報告されています。この増加は、メタン放出量の長期的な増加傾向などが複合的に影響していると指摘されていますが、特に2020年から始まったラニーニャ現象が熱帯域湿地からのメタン放出量を増加させた可能性が示唆されています。これらの結果は、日本の気象庁の観測地点でも確認され、観測史上最大のメタン濃度を記録しました。

参考:「参考:気象庁:Ⅳ 2021 年の大気中メタン濃度の年増加量が観測史上最大を記録」(最終閲覧日:2023/9/22)

メタンガスの排出源

メタンガスの排出源は様々です。主な排出源は、天然ガスや石炭などの化石燃料の採掘・使用、農業、特に反芻動物からの発酵と水田からの排出、そして廃棄物の処理といった人間の活動から排出されます。また、自然界でも湿地や一部の森林、沼地などからメタンが放出されます。

分類 排出源 詳細説明
人為
起源
化石燃料採掘 天然ガスなどの化石燃料採掘に伴うガス田やパイプラインからのメタン漏出
廃棄物処理 ゴミなど廃棄物やそれを用いた埋立地からのメタン放出
家畜飼育 牛や羊などの家畜飼育から排出
稲作 水田や人工的な湿原から排出
自然
起源
湿地 微生物によりメタンが生成
シロアリ シロアリの体内の微生物が木材を分解する際に生成
火山や山火事 火山活動や山火事で生じる枯死物の不完全燃焼により生成

3.メタンガスの削減

2021年10月に閣議決定された地球温暖化対策計画において、日本ではメタンの削減目標を2030年度において、2013年度比11%減の約2,670万t-Co2にすることとしています。2019年度の排出量は2,840万t-Co2で、2013年度と比較すると5.4%削減することができています。

参考:「参考:環境省:地球温暖化対策計画(令和3年10月22日閣議決定)」(最終閲覧日:2023/9/22)

t-Co2とは

二酸化炭素その他の温室効果ガスの排出、吸収、貯蔵等の量を、相当する温室効果を有する二酸化炭素の重量に換算した単位。

参考:「農林水産省:森林吸収源対策に関連する単位量について」(最終閲覧日:2023/9/22)

この削減目標の背景には、畜産業、米作り、廃棄物管理、天然ガス、工場排気ガスにおけるメタン排出の大きな影響があります。畜産業では、動物の消化過程でメタンガスが発生するため、効率的な飼育方法や餌の改善、メタン排出の少ない品種の育成などの施策が求められています。また、米作りにおいても、水田からのメタン放出が問題となっており、水田管理の改善や畑作への転換、水管理の見直しなどの取り組みが進められています。
これらの背景を踏まえ、以下に日本で実施しているメタン排出削減のための施策をご紹介します。

工場廃液からのメタンガス回収

清水建設株式会社は、その長年にわたる建設業での経験と技術力を活かし、温室効果ガス排出削減を目的としたさまざまなプロジェクトを推進しています。特に注目すべきは、パームオイル工場での廃液メタン回収技術です。この技術を用いることで、大量に発生するメタンガスを効果的に回収し、発電に利用することが可能となります。これにより、メタンガスの大気への放出を防ぎつつ、再生可能なエネルギー源としての活用が進められています。

パームオイル工場における廃液メタン回収技術

水田

パームオイル工場では大量の廃液が、ラグーン(廃液処理池)による嫌気性発酵で処理されており、大量のメタンガスが発生しています。プロジェクトではこの嫌気性ラグーンから発生するメタンガスをシートカバーを用いて回収し、発電に利用します。メタンガスの大気放出防止と、系統の発電所における化石燃料消費の抑制により、温室効果ガスの排出削減ができます。

引用:「清水建設:温室効果ガスの排出削減技術/シミズの温室効果ガス排出削減プロジェクト」(最終閲覧日:2023/9/22)

メタンの漏れ検知

日揮ホールディングス株式会社は茨城県東茨城郡大洗町の技術研究所に「メタン排出計測技術評価設備」を設置しました。この設備は石油・天然ガス関連のメタン排出を想定し、メタン排出計測技術の向上を目指しています。国内外の計測機器メーカーとの連携を強化し、技術開発の場を提供することで、効果的なメタン排出対策を推進しています。
2023年2月には、JOGMECの支援でコニカミノルタ、全日本空輸、SeekOps、The Sniffers、Aeromonの5社を招待し、メタン計測技術の試験を実施しました。コニカミノルタは固定式メタン監視システム、全日本空輸は航空機を使ったメタン測定、SeekOpsとAeromonはドローンを使用した計測、The Sniffersは赤外線カメラを使用した計測を提供しています。
この試験を通じて、メタン計測技術の有用性や正確性の情報を収集し、環境保護活動の強化を目指しています。


メタン排出計測技術評価設備

引用:「日揮ホールディングス株式会社:日本初、メタン排出ゼロを目指す世界的なイニシアチブに参加」(最終閲覧日:2023/9/23)


水田メタン排出削減

水田

水田においては土壌中に存在する細菌が稲わらや肥料等の有機物を分解することでメタンが生成されます。この水田でのメタン排出を抑制する方法として、水田から水を抜き、土にヒビが入るまで乾かす「中干し」という方法があります。中干しを行うと土壌中に酸素が補給されるため、酸素が少ない条件でメタンを作る微生物の活動が抑えられ、メタンの生成が抑制されます。ある研究では、中干し期間を通常よりも7日間延長することにより、メタンの発生量を約30%削減できることが確認されています。

廃棄物管理の改善

3R

プラスチック資源循環促進法や廃棄物処理法に基づく廃棄物減量化目標の達成に向けた3R+Renewableを推進しています。この3R+Renewableとは、Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の3Rに、Renewable(リニューアブル)を追加した考え方です。こうした取り組みの背後には、直線型経済(リニアエコノミー)からの脱却と、サーキュラーエコノミーへの移行が目指されています。

3R+Renewableとは

Reduce:製造・加工・販売の段階でゴミを削減すること。
Reuse:まだ使えるものを再利用し、ゴミとして廃棄しないこと。
Recycle:再生資源として再利用すること。
Renewable:再生可能な資源へ転換すること。(例:プラスチック製のレジ袋をバイオマスプラスチック製に変更する。)

さらに、市町村の廃棄物処理方法の見直しや分別収集の強化、及び処理体制の改善により、生ごみなどの有機性廃棄物の埋立量を削減することで、メタン排出量も低減させる方針を取っています。
その一つの方法として、「準好気性埋立構造」という技術が注目されています。これは、廃棄物の最終処分場の構造の一種で、水分の排除と酸素の補給を行い、メタン生成の微生物の活動を抑制することが可能です。結果として、メタンの排出量を劇的に削減することが期待されています。

4.メタンガスの測定

メタンガスの測定は、地球温暖化対策における重要な要素です。メタンの排出源と排出量を正確に把握することで、より効果的な温室効果ガス削減策を立案することが可能になります。また、正確なメタン測定はメタン削減策の効果を評価し、その成果を可視化することにもつながります。
メタンの測定方法は大きく分けて3 つあります。それぞれの方法に特徴があるので、適切に使い分けることが重要です。

  1. ガスクロマトグラフまたはガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)
  2. 熱伝導式・電気化学セル式
  3. 赤外線吸収分光法
メタンの測定方法を詳しく知りたい方はこちらの記事がおすすめ!

5.まとめ

メタンガスは温室効果ガスの中でも特に高い温暖化係数を持ち、地球温暖化の主要な要因の一つとなっています。この記事を通じて、メタンガスの性質、その排出源、測定方法、そして削減の重要性についての理解を深めていただけたら嬉しいです。

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