ガスセンサーの種類について
2019.07.31 | ガスセンサー, 非分散型赤外線分光センサー
そもそもガスとは何でしょう?
一般的に「ガス」というと、私たちの生活を回している都市ガス、プロパンガス(LPガス)の類を想像される方も多いのではないでしょうか。
都市ガスはメタン、プロパンガス(LPガス)はプロパンやブタンを、それぞれ主成分としています。
では、これらの類がガスなのかというと、そうではなく、ガスは「気体全般」を指します。
気体(きたい、英:gas)とは、物質の状態のひとつであり、一定の形と体積を持たず、自由に流動し圧力の増減で体積が容易に変化する状態のこと。「ガス体」とも。
Wikipediaより引用
こうしたガス(気体)を測定するためのセンサーとして「ガスセンサー」があります。
今回は、ガスを測定するセンサーについて、わかりやすく解説いたします。
ガスセンサーは「気体」を測定している
ガスを測るからガスセンサー。
まったくもってその通りですが、ガスセンサーが測るガスにも種類があります。
─ ガスの種類
例えば、都市ガスの主成分である「メタン」。
これは「可燃性ガス」の一種です。
可燃性ガスは、名前の通り「空気、あるいは酸素中で燃焼する性質を持つ気体」を指します。
他にも、
- メタンを主成分とするガス状の化石燃料「天然ガス」
- 一酸化炭素など人間に害のある「毒性ガス」
- 地球温暖化の原因とされる「温室効果ガス」
- 半導体製造用の特殊ガス「半導体材料ガス」
- エアコンや他の空調機器で用いられる「冷媒ガス」
などがあります。
上述した都市ガスなどの家庭用ガスの他に、半導体製造現場を含めた、製造業の分野で使用されるガスは「産業ガス」と呼ばれています。
当記事で紹介するガスセンサーは、主に「産業ガス」の検知に役立っています。
─ 正確には「成分」を測定する
ガスセンサーは、ガスを測定しますが「可燃性ガス」を測定するというよりは、例えばメタンのような、ガスの「成分」を測定します。
より正確に言うならば、気体に混じっている「特定の分子」を測ります。
例えば、
- 酸素(O)
- 水素(H)
- メタン(CH4)
- プロパン(C3H8)
- 一酸化炭素(CO)
- アンモニア(NH3)
などです。
ガスセンサーを用いることで、これらの分子を検出したり、その濃度を測定することができます。
ガスセンサーについて詳しく解説!
ガスセンサーの種類と特徴を千葉大学 椎名先生が解説
ガスセンサーには、ガス吸引で測定する「半導体式、電気化学式・燃料電池式、接触燃焼式、赤外せん式(NDIR)」や遠隔で測定する「赤外線カメラ方式、光学式」などがあります。
そして、各方式にメリットデメリットがあるため、産業機器、自動車、家電などでガスを計測するにあたっては、各方式を理解した上で、目的に応じた最適なガスセンサーを選択する必要があります。
ケイエルブイでは、ガスセンサー選びに関する様々なコンテンツを提供しています。
ガスセンサーの種類
ガスセンサーには種類があります。
センサーの種類は、動作メカニズムによって、区別されます。
─ 接触燃焼式
「接触燃焼式」とはこんなもの
- 可燃性ガス専用のガスセンサーとして広く普及している。
- 可燃性ガスの「濃度」を測定できる。
- 抵抗値を測定し、ガス濃度として解釈する。
「抵抗値を測定し、ガス濃度として解釈する。」
こちらが、不明瞭だと思います。
ガスを測定するからガスセンサーにもかかわらず「抵抗値」を測定する、というのは一見すると不可解なことでしょう。
そもそも「濃度」を測定する、というのはなかなか難しいことです。
「気体の中に、分子がどれぐらい存在するのか」これを割り出すために、電気を使用します。
簡略化すると、次のような原理でガス濃度をします。
- 可燃性ガスにのみ反応する検知素子(コイル)にガスが接触する。
- 検知素子の温度が上昇。
- 検知素子内の「抵抗値」が変化する。
- 抵抗値とガス濃度が比例しているため、抵抗値から「ガス濃度」を求められる。
言ってしまえば、接触燃焼式ガスセンサーは、抵抗値を測定することによってガス濃度を割り出すセンサーです。
─ 電気化学式
「電気化学式」とはこんなもの
- 製油所、ガスタービン、化学プラントなどで用いられている。
- 電流を測定することで、ガス濃度を導く。
ガスとセンサーが接触することにより、分子が酸化または還元されます。
それによって、電子が生成もしくは消費されることによって、電流が流れます。
この電流はガス濃度に直線的に比例するため、この比例関係からガス濃度を計算することができます。
─ 光イオン化
「光イオン化」とはこんなもの
- 光イオン化検出器(PID)として知られています。
- 低濃度のガスも検出できるという強みがあります。
PIDは「Photoionization detector(光イオン化検出器)」の略称です。
揮発性有機化合物(VOC)や他の有毒ガスの測定で使用されます。
イオン化にはUV光(紫外線)が用いられるため、検出器にはUVランプなどが組み込まれています。
VOCや有毒ガスなどが検出器に入ると、紫外線を吸収する際に、イオン化されます。
イオンによって電流が発生し、これを検出することで測定しています。
─ 半導体レーザ吸収分光法(TDLAS)
「半導体レーザ吸収分光法」とはこんなもの
- 非接触で特定のガスを測定できる。
- 波長の吸収スペクトルから温度や濃度を割り出す。
半導体レーザ吸収分光法は「Tunable diode laser absorption spectroscopy」を省略し「TDLAS」とも言われます。
半導体レーザ(Tunable diode laser)と吸収分光法(absorption spectroscopy)を用いて、ガス中の水蒸気などを測定することができます。
成分、温度、濃度、圧力などを高速で測定することができるため、燃焼ガスの温度・濃度のモニタリングや、メタン検知器などに応用されています。
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QCL内蔵のガス分析計向け 検出モジュール。高感度・高選択性の、手のひらに乗る小型モジュール。
【MIRSENSE社】ガス分析計向け 検出モジュール
QCL(量子カスケードレーザー)と光音響分光を基盤とするガス分析計向けの検出モジュール。
NDIR式等の検出感度はPPM単位(100万分の1)ですが、量子カスケードレーザーを用いた当製品では、PPB(10億分の1)単位での計測が可能です。また、リアルタイムでのガス検知が可能なため、ガスのモニタリング用としてご使用頂けます。
─ NDIR式
「NDIR式」とはこんなもの
- 一酸化炭素(CO)や二酸化炭素(CO2)など、酸化炭素の測定に強みを持つ。
- 赤外線(光)を用いるため「分光センサー」とも言われる。
- ガスの選択性が非常に多い(複数の種類を測定できる)。
- 赤外線を測定し、含有量を割り出す。
「NDIR:Nondispersive Infrared」は「非分散型赤外線」と和訳できます。
名前の通り「赤外線」を用いて、ガスを検知したり濃度を測定したりします。
「赤外線を用いる」というと、なかなか突飛に思えるかもしれませんが、赤外線を測定することで、分子を検出できます。
これは「分子は特定の波長の光(赤外線)を吸収する」という性質を利用したものです。
分子に吸収される赤外線は「分子ごとに異なっている」ため、分子が吸収した光を割り出すことで、ガスを測定できます。
こちらの記事でNDIR式センサーの測定原理について、分子の性質から詳細に解説しています。
興味がある方はご覧ください。
当社では、こちらの「NDIR式センサー」を取り扱っています。
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装置への組み込みに最適化されたガスモジュールを提供しています。
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