メタンガスとは
メタンガス(CH4)は炭素原子と水素原子が結合してできた炭化水素化合物の一種です。
メタンガスは天然ガスの主成分で自然界にも多く存在しています。また、一酸化炭素と水
素原子の化学反応により生成されるため人工的に生産することができます。メタンガスは
主に都市ガスや化学品の原料として使用されています。
メタンガスがなぜ注目されているのか
メタンガスの利用は以下の背景から注目されています。
環境負荷の低減
地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする取り組みがされています。
二酸化炭素(CO2)は、石油や石炭などの化石燃料の利用での排出量が多く、特に化石燃料が利用される電力・産業分野での脱炭素化は課題となっています。
ひとつの有力な対策として、二酸化炭素と水素を化学反応させることでメタンを合成する「メタネーション」が注目されています。「メタネーション」の原料となる二酸化炭素は発電所や工場から排出されるため、それを回収し再利用することで二酸化炭素の排出量を実質ゼロにすることができます。合成されたメタンガスは天然ガスの代替燃料として使用する発電所・工場で使用できるので、二酸化炭素の回収 メタンガスの生成 メタンガス⇒ ⇒の利用というカーボンサイクルの実現が可能です。
循環型社会の形成
地球温暖化とあわせて、食品廃棄物のリサイクルも課題となっています。
食品廃棄物は動植物に由来する有機物でることから「バイオマス」に位置付けられており、バイオマスの活用方法としてバイオガス化(メタンガス化)とバイオガスを使った発電があります。
バイオガス化は、生ごみ、紙ごみ、家畜のふん尿などを発酵させてメタンガスと二酸化炭素を含む可燃性ガスを生成する技術です。ごみとして焼却されるはずだったものがバイオガスになり燃料や発電熱源として使用することができるので、バイオマスの有効活用と二酸化炭素排出量の低減を可能とします。バイオガス発電によるエネルギーは施設で利用またはFIT 制度で売電することができます。またバイオガス化で発生した発酵残渣は再生利用し肥料として利用することができますので循環型社会の形成に貢献します。
メタンガスの測定の重要性
メタンガスは燃料として有用性がある一方で可燃性ガスのため爆発事故などの危険性もあります。そのため、メタンガスを貯蔵するタンクやパイプから漏れがないかガスを測定する必要があります。その他にも、メタンガスは二酸化炭素に次いで温室効果のあるガス種なので、メタンガスの生産現場から大気へのメタン放出がないことを確認することも大切です。
また、メタンガスの製造工程では、メタンガスやそれに含まれるガスの濃度を連続測定しそのデータから工程や装置を改良することで、メタンガスの生産効率を最適化することが可能です。
メタンの測定方法
メタンの測定方法は大きく分けて3 つあります。
1. ガスクロマトグラフまたはガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)
ガスサンプルをイオン化し、そのイオンを分離した上で検出することで特定の分子と質量を測定する方法です。ガス種や検出器の種類によっては超低濃度のガスを検出することができます。メタン測定では水素炎イオン化検出器(FID)が使用されます。
高精度なガス測定ができるため研究・開発目的のために使用されます。その一方で、システムが大型で高額になり前処理が必要になるため、現場への多数設置や連続測定には適していません。
2. 熱伝導式・電気化学セル式
素子の温度変化やガスの接触により抵抗値が変化する現象を利用し、抵抗値の変化量
からガス濃度を算出する方法です。小型で安価のため、特定の箇所に設置また現場作
業者が携帯するガス検知器として使用されることが多いガスセンサーです。
高濃度のメタンガス検出には適していますが、低濃度の検出は難しく測定環境の温度
変化により測定のバラつきが発生してしまう可能性があります。
3. 赤外線吸収分光法
赤外線を使った、ガス固有の吸収スペクトル強度からガス濃度を検出する方法です。
ガスに赤外線を直接当ててガスを検知するため低濃度の測定も可能で、前処理の必要
はないため連続測定に適しています。一般的には非分散赤外吸収法(NDIR)が比較
的安価な手法で、ガスモニター装置として使用されています。
デメリットとして吸収スペクトルが見られないガス種の検出が困難な点が挙げられま
す。また、測定対象のガスに共存する他ガスが多い場合、互いに干渉してしまい測定
精度が下がってしまう場合があります。
NDIR式のメタンガス濃度センサー
AWITE Bioenergie 社(独)はバイオガスプラントや排水処理プラント向けのガス分析システムを販売しており、主にヨーロッパにある発酵槽やプラントへの導入実績があります。
導入事例はこちら
ケイエルブイ(株)では、ガス測定装置への組み込みに最適なNDIR 式の小型ガスセンサーモジュール「InfraFRED」を取り扱っています。
NDIR 小型ガスセンサーモジュール「InfraFRED」
このセンサーモジュールは、バイオガスおよびメタンガスに含まれるメタン(CH4)、二酸化炭素(CO2)、一酸化炭素(CO)の濃度を%オーダーで測定することができます。モジュールには圧力センサーとサーモスタットが内蔵されているため、安定して測定することが可能です。
大型のバイオガスモニターシステムを導入しますと設置までの時間とコストが大幅にかかりますが、センサーモジュールであれば小型のため筐体は自由に設計ができ導入コストを抑えることができます。
ご興味がありましたら、是非ケイエルブイまでお問い合わせください。
参考
環境省/メタンガス化に関する基本事項
http://www.env.go.jp/recycle/waste/biomass/foundation.html
経済産業省/ガスのカーボンニュートラル化を実現する「メタネーション」技術
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/methanation.html
農林水産省/食品廃棄物のメタン化に取り組んでみませんか?
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/ondanka/attach/pdf/methane-22.pdf