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KLV大学 光源コース

水銀ランプの特徴・種類・アプリケーションを解説

紫外線を出力できる光源として様々なところで利用されている水銀ランプについて、その構造、種類、用途や今後について紹介していきます。

水銀ランプの構造

水銀ランプはアーク放電を利用した光源ですので、アーク灯の一種です。

水銀ランプの構造を見てみると、発光管部分については同じアーク灯であるキセノンランプとほぼ同様の構造をしているのがわかります。
アーク放電を行う電極(陽極と陰極)を数mm程度離して配置し、それを石英ガラス管に収め、水銀蒸気を封入します。
ここに端子から電流を流すと、陽極と陰極の間でアーク放電が発生し、水銀原子内の電子を励起、または電離させます。この励起した電子が基底状態に戻る際に線スペクトルを、そして電離した電子が再結合する際に連続スペクトルを出し、幅広い波長の光を放出します。

水銀ランプの構造

水銀ランプの波長特性

水銀蒸気を利用しているため紫外域から可視の短波長域にかけての輝線スペクトルが中心で、輝線の代表的な波長は、365nm、405nm、436nm、546nm、578nmです。

水銀ランプの波長特性

水銀ランプの色温度は4100〜5700K程度で、人間の目には、緑がかった青白色の光に見えます。

紫外線が多く放射されている事や、太陽光と比較すると赤色の成分が相対的に弱い事から、照明用として利用する際には、演色性を改善するために外管に蛍光物質を塗布して利用されます。

また、可視光域の少し長めの波長(546nm、578nm)に現れる輝線は、夜空を撮影した際に、光の緑成分が写真に映り込んでしまう”緑かぶり”という光害の原因となることがあります。

水銀ランプの種類

1.高圧水銀ランプ

高圧水銀ランプの場合、始動時には発光管(内管ともいいます)内にある主電極のすぐそばに取り付けられた補助電極との間でグロー放電を行い、その後に主電極間のアーク放電へと移行します。発光管内の温度が上がると封入されている水銀が完全に蒸発して安定しますが、それまでは数分の時間がかかります。この際、水銀の蒸気圧は100-1000kPaにもなります。
発光管は400°Cもの高温になるため外管で覆われていて、外管内には50-100kPaの窒素ガスが封入されています。

高圧水銀ランプの一種である高輝度放電ランプ(HIDランプ)は、発光効率が白熱電球よりも良いことから光量が必要な照明などの分野で利用されます。

2.低圧水銀ランプ

点灯中の水銀蒸気圧が1-10Paと低めになっているものを低圧水銀ランプと呼びます。
主に波長が184.9nm、253.7nmの紫外線を放出します。この低圧水銀ランプの発光管内面に蛍光物質を塗布したものが我々のよく目にする蛍光灯です。蛍光物質が紫外線を吸収し、可視光線領域の波長の光を放出するようになっています。

3.超高圧水銀ランプ

水銀蒸気の圧力を高めて1000kPa以上にしたランプです。
このランプは高圧水銀ランプと違い、演色性も改善され、瞬時点灯が可能な点で優れています。構造はキセノンランプに似た構造となっています。

水銀ランプの使用用途

水銀ランプは紫外線を発することから、殺菌・樹脂硬化などの用途から、蛍光物質により演色性を向上した上での照明用途まで、様々な用途で利用されています。

水銀ランプのアプリケーション

以下に代表的な用途をご紹介します。

①照明

照明には低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプの両方が利用されています。

低圧水銀ランプの代表的な用途は我々が目にする蛍光灯で、家庭用をはじめとする家屋や屋内用の照明として活用されています。

一方、高圧水銀ランプは街灯、ガソリンスタンド、体育館、ナイター施設など巨大な空間を照らす用途で利用されます。

高圧水銀ランプを照明として使用する際には、蛍光物質として、「紫外線を減らして赤色成分を補うもの(蛍光水銀灯Ra:40)」や「青緑色成分を補うもの(蛍光水銀灯Ra:50)」が利用されます。
また、演色性を補う方法として、水銀灯と白熱電球を組み合わせた「カクテル光線」などもあります。(カクテル光線は、甲子園球場などで演色性と照度とを兼ね備えたナイター用の照明として長く使われてきた歴史があります。)

その他にも、液晶プロジェクタのバックライトなどの照明にも水銀ランプが利用されることがあります。

②殺菌、オゾン発生(滅菌など)

殺菌用途には184.9nm、253.7nmの紫外線を放出する低圧水銀ランプが使われます。
特に波長が253.7nmの紫外線は、細菌内のDNA(デオキシリボ核酸)が吸収する特徴を持っていることから殺菌効果が高く、「殺菌線」とも呼ばれて重宝されています。この紫外線を使い、食品などの殺菌を行います。

また、184.9nmの紫外線は酸素分子を酸素原子に分解します。そしてそれぞれの酸素原子(一般的には活性酸素とも言われます)は別の酸素分子と反応してオゾンとなります。化学反応式は次の通りです。

  • O2+hν(184.9nm) → O + O
  • O + O2 → O3

これと同様の反応はオゾン層でも起こっていますが、紫外線を当てて人工的に造られたオゾンは活性酸素を放出し、滅菌等に使われます。

③樹脂硬化

近紫外線領域の光は、UV硬化樹脂を硬化させるポリマー重合を促したり、レジストを硬化させる働きがあるのでこれらの用途で水銀ランプが利用されます。

樹脂硬化は、接着などの用途で、レジストは、プリント基板や半導体の加工の用途で幅広く利用されているため、水銀ランプも産業界において幅広く活躍してきました。

ただし、昨今は出力の高いLED光源が出てきたことで、寿命が長く、制御が容易で環境に優しいLED光源への置き換えが進んでいます。

④蛍光顕微鏡

蛍光顕微鏡用の光源として、超高圧水銀ランプが利用されており、蛍光色素も水銀ランプの輝線の波長に合わせて作成されています。超高圧水銀ランプはアーク寸法が小さく点光源に近いことから、平行光などに効率よく変換できるのがメリットです。
同じ様な波長の光を出す光源として水銀メタルハライドランプがありますが、発光径を小さくすることが難しいために、超高圧水銀ランプの方が好まれてきました。

ただし、昨今は同じ波長帯のLED光源なども出てきており、顕微鏡の性能面やメンテナンス面からLED光源への置き換えが検討される事が多くなっています。

⑤分光器の校正

決まった波長に輝線を持つ水銀ランプは、分光器の校正に使用されます。
水銀ランプの輝線の波長は正確であるため、分光器で観測された水銀ランプの波長がズレている場合、その情報をもとに分光器側の設定を調整することやソフトウェアで波長のずれを吸収することができます。

水銀ランプの今後と代替光源

ここまで水銀ランプの用途を紹介してきましたが、水銀は1950~60年代に公害として問題なった水俣病など、環境汚染の原因となるため「水銀に関する水俣条約」によって2020年以降は製造・輸出入が禁止されており、水銀ランプは、代替光源に置き換えられ始めています。

既存のシステムのランプ交換や、一部の安価な水銀を使用した光源の需要は残っていますが、それらは、徐々に少なくなっていき最終的には水銀ランプはLEDなどの他の光源に完全に置き換えられると考えられます。

水銀ランプの代替光源(優れた光源)

長寿命で、出力調整やパルス照射などの制御も容易
LED光源

照明、露光、樹脂硬化、顕微鏡に使用されている光源はLEDへの置き換えが進んでいます。
LED光源は初期導入費用は水銀ランプに対して高めですが、高寿命であるため、ランニングコストで考えた場合は、それほど差はありません。
また、出力調整やパルス照射などの制御が容易であるため、水銀ランプと比較して安定した照射ができる点も魅力です。

UV-LED照射器 ALE/1

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UV樹脂硬化用途やi線(365nm)やg線(436nm)のUV露光機の光源の代替として活躍する超高出力のUV-LED光源です。
最大5種類のLEDを内蔵できるため、365nm〜の様々なピークを持つ複数のLEDを合わせて幅広い波長の光の出力も可能です。

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顕微鏡用LED光源 LUXYR-LED PICO

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365〜730nmまで11種類の中心波長のLEDから波長を選択できます。
Nikon、Olympus、Leica、Zeiss社の顕微鏡接続用のアダプタを用意していますので、容易にランプ光源からLEDへの置き換えが可能です。

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