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電界発光(エレクトロルミネッセンス)とは
原理から応用製品までを徹底解説

電界発光は、電極の間に挟んだ化学物質が通電により発光する現象を利用した発光方法です。
代表的な電界発光にLEDや有機ELがあります。

本記事では、電界発光について原理から応用製品まで詳しく紹介していきます。

電界発光(エレクトロ ルミネッセンス)とは

電界発光は英語で”Electroluminescence”(エレクトロ ルミネッセンス)といい、ELと略されます。
ここから”electron”つまり電子が関係した発光であることがわかります。

電子は原子核の周りを回っています。そこにエネルギーが加わると、電子の軌道がより高いエネルギーが必要な軌道へと跳ね上がり励起状態になります。励起状態からエネルギーを放出して元の軌道=基底状態に戻る際に、エネルギーを光子として放出するため、発光現象が起こります。

電界発光 は、この発光現象に必要な電子の励起を、「化学物質(半導体)を電極で挟み、そこに電圧をかけて電気エネルギーを与える」ことで実現しています。

電界発光(エレクトロ ルミネッセンス)の種類

ここからは、電界発光の種類である「注入型EL」と「真性EL」について詳しく解説していきます。

(1)注入型電界発光(注入型EL)

注入型の電界発光(注入型EL)は、LEDや有機ELの発光で利用される発光です。
注入型ELの名前の由来は、電子と正孔(=ホール)を発光層に”注入”することから来ています。

注入型電界発光(注入型EL)の構造

注入型ELの構造は、電極の間に、電子注入層、電子輸送層、発光層、ホール輸送層とホール注入層の5つの層を形成した構造です。
この構造に対して、電子輸送層側には陰極(マイナス極)、ホール輸送層側には陽極(プラス極)を接続すると発光します。

※最近、素材の開発が進み、電子輸送層を持たない有機ELも開発されています。

注入型電界発光(注入型EL)の原理

電子輸送層には電子が大量にあり、ホール輸送層には電子が入ると安定する正孔(軌道上の電子が空席になっている状態)があります。
電子輸送層とホール輸送層はつながっているため、ホール輸送層の本来の軌道から電子が弾き出されて電子輸送層の軌道に集まり、励起状態になっていると見なすことができます。この時、励起状態の電子は正孔と引き合ってくっつき、基底状態に戻ろうとします。
この電気と電子の結合は、真ん中に挟まれた発光層で起こり、エネルギーの放出が起こります。

ただし、注入型ELでは、このエネルギーが光子として放出されて光って見えるわけではないという点に注意が必要です。
注入型ELは、放出されたエネルギーが、発光層の化学物質を励起させ、それが基底状態に戻る時に発光します。

つまり、注入型ELは、以下の2段構えで発光します。

  1. キャリアが励起し、次にキャリアが結合して基底状態に戻る際にエネルギーを放出
  2. 放出されたエネルギーで発光層の化学物質が励起する

キャリアの数が多ければ、それだけ結合する(=エネルギーを発する)割合が多くなり、明るく光ります。

(2)真性電界発光(真性EL)

もうひとつの電界発光が真性ELです。
注入型ELとの違いは、発光が2段構えではなく1段という点です。

真性電界発光(真性EL)の構造

真性ELでは発光層の中に電子と正孔が分かれて存在しており、電圧をかけるとキャリアを作ってエネルギーを放出し、発光層を光らせます。
よって、真性ELには電子輸送層とホール輸送層が不要です。

真性電界発光(真性EL)の原理

電気を使って発光させるという点では、放電発光と電界発光はよく似ていますが、放電発光は電極から放出される電子線が金属皮膜に衝突して、金属分子の励起状態が作られるのに対して、電界発光では電圧によって半導体の電子が動かされて発光層が光るので、仕組みはまったく別物です。

LEDや有機ELは光の三原色がそろっています。
発光する色の違いは電子と正孔の間のエネルギー差(エネルギーバンドギャップ)で決まり、その差が大きければ波長の短い光(つまり青色)、差が小さければ波長の長い光(つまり赤色)になります。

エネルギーバンドギャップが青い波長、緑の波長、赤い波長になる化学物質を選んで、それぞれの層を作ることが可能です。
赤色LEDはアルミニウムインジウムガリウムリン、緑色LEDにはインジウム窒化ガリウムやテルル化亜鉛、青色LEDには窒素ガリウムなどが使われます。また、同じ化学物質名でも配合を変えることで、別の色を発光させることができます。

電界発光は熱損失が小さく、白熱灯や蛍光灯のように無駄に熱として放出することが少ないので、効率よく電気エネルギーを明かりに変えることができます。また容易に小さく作ることができるため、照明やディスプレイを小型化・薄型化することにも貢献しています。

電界発光(エレクトロ ルミネッセンス)を使用した光源

LED

比較的早くから赤、緑、黄色に発光する半導体が見つかっていたため、スイッチのオンオフ表示などに使われてきましたが、十分な明るさで青色に発光する半導体が見つからず、光の三原色がそろわなかったため、利用範囲は限られていました。1995年ごろから青色半導体の商用化が始まり、色を自由に表現できるようになりました。現在は照明やフルカラーディスプレイなどさまざまな製品に活用されています。

LED-pic.jpg

LD(レーザーダイオード)

 同じ波長でそろった光をレーザー(レーザー光)と呼びます。LDが登場するまでは、ガスを封入した真空管の両端に半透過性のミラーを付け、ガスの放電発光をミラーで何度も往復させて波長をそろえていました(ガスレーザー)。
LDはLEDの発光を活性層という部分で反射、往復させて波長をそろえます。LDの登場で、ガスレーザーに比べてレーザー発振器は極めて小さくなり、ブルーレイディスクのようなコンパクトな光学記憶媒体を可能にしました。

電界発光(エレクトロ ルミネッセンス)を使用した製品

無機/有機ELディスプレイ

有機ELディスプレイを使ったスマートフォンやディスプレイが増えています。有機EL(発光方法が注入式でLEDと同じことから、Organic light emitting diodeを略してOLEDと呼ぶこともある)の“有機”は、使われている化学物質がプラスチックのような有機化合物で炭素を含むことによります。
無機ELと有機ELはどちらも面状なので、ディスプレイや広い範囲の照明に向いていますが、それぞれに異なる特性を持ちます。

Organic-EL.jpg

有機ELは輝度が高く鮮明なので、コンピューターのディスプレイなどにも使われます。
無機ELは輝度が低く、寿命も短い欠点があります。そのため、ディスプレイよりもポスターや電飾看板などの商業用の照明として利用するのに適しています。価格は有機ELよりもはるかに安く、その点でも広告用途に向いているといえます。

液晶パネル

液晶は電圧をかけると分子の向きが変わることを利用します。
分子の向きを調整することで、白黒の濃淡を表示できます。液晶は、いわば電気で動くシャッターなので、液晶自体に白黒以外の色はありません。そこで液晶パネルの下に三原色の光源を置き、どの色の光をどのくらいの濃淡で透過させるのかを、液晶で調整することでカラー化を実現しています。

liquid-crystal.jpg

このとき、光源として利用されるのがLEDです(LEDだけでは暗いため、正確にはさらにLEDの下に光源があり、LEDが出す色を下から照らす構造になっています)。

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