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蛍光発光(フォトルミネッセンス)とは
原理、製品、測定を徹底解説

蛍光発光は、紫外線などの光エネルギーによって励起状態となった電子が基底状態に戻る際にエネルギーを光として放出する現象(フォトルミネッセンス)です。

本記事では、蛍光発光について原理から応用製品まで詳しく紹介していきます。

蛍光発光(フォトルミネッセンス)とは

蛍光発光(フォトルミネッセンス)の原理

原子核の周りを飛び回る電子は、電子が持つエネルギーでどの軌道を飛ぶかが決まっています。
この、電子が決まった軌道にいる状態を基底状態と呼びます。

蛍光発光では、この電子に外から紫外線などの電磁波エネルギーが加えることで、電子が本来は入れない軌道に入り込み励起状態になります。

基底状態からエネルギーが加わったことで高い軌道に入り励起状態になった電子は、本来の軌道ではないため、長くその軌道に留まることはできません。
得たエネルギーは放出され基底状態へと戻ります。この時に放出されるエネルギーを光として観察することができます。

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蛍光発光のポイントは、電子が受け取るエネルギーには化学変化や熱、衝撃、音波などさまざまな種類がありますが、その中で光のエネルギーによって励起状態になり、発光するというところです。

蛍光発光(フォトルミネッセンス)を使用した光源

蛍光灯

蛍光発光を使った身近な製品に蛍光灯があります。

蛍光灯はガラス管の中にアルゴンガスと微量の水銀を封入し、そこに放電することで発光させていますが、このとき発光するのは紫外線なので目には見えません。放電では、ガラス管は明るく光らないのです。
なぜガラス管が光るかというと、ガラス管の内側に酸化物やハロゲン化物の蛍光剤が塗ってあり、紫外線を浴びた蛍光剤が可視光線を放つからです。

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蛍光剤分子が紫外線を吸収して励起したなら、基底状態に戻る際に元と同じ紫外線を放出しそうなものですが、放出するエネルギーの一部は熱になるため、エネルギーが低い=波長の長い光になります。波長の短い紫外線は波長の長い可視光線に変わるわけです。
また熱以外にも分子には振動緩和という性質があり、振動数の高い分子は低い振動数へと遷移するため、そこでもエネルギーが失われます。

吸収する波長と蛍光発光する波長は1対1で決まっているわけではなく、ある程度の幅があり、波長全体の中で一番強い、ピークとなる波長があります。技術的に利用するときは入出力の波長のピークを調べておき、それを基準として使用します。

蛍光発光(フォトルミネッセンス)を使用した製品

漂白剤、スタイリング剤への添加剤

紫外線を浴びると蛍光を放つという性質を利用して、漂白剤に蛍光剤を混ぜてより白く見せたり、髪の毛のスタイリング剤に蛍光剤を混ぜて紫外線を可視光線に変えて光の量を増やし、髪の毛のコントラストを強く出したりすることが行われています。

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お札の印刷(偽造防止)

日本のお札には、紫外線蛍光インクという蛍光発光する特殊なインクが使用されています。
これにより、UVライトで照らした時に、朱色の丸い印影が現れるかどうかで偽造紙幣を判別することができます。

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蛍光発光(フォトルミネッセンス)を使用した測定

前述したように生活の身近なところで使用されている蛍光発光ですが、産業においては、この発光を測定や観察に用います。ここからは、蛍光発光の産業利用について紹介していきます。

蛍光測定(フォトルミネッセンス測定)

物質によって、基底状態から励起状態になるときにどの軌道まで電子がジャンプするのかが決まっています。
蛍光発光の波長は、物質ごとに決まっているのです。そのため、蛍光に含まれている波長を分析すれば、光っている物質に不純物が混じっているかどうかが分かります。不純物は、光の波長が他の場所と違うためです。

また電子がエネルギーを与えられて軌道から飛び出すと、そこに穴(正孔と呼びます)が空きます。この穴に電子が戻ってくればいいのですが、試料の構造に欠陥があると電子と正孔のペアが崩れてしまい、光が放出されずにエネルギーが熱となって放出されます。こうした欠陥が蛍光の波長を変化させるため、蛍光を調べれば構造が欠損していることもわかります。

蛍光測定(フォトルミネッセンス測定)の原理

蛍光測定は対象物に紫外線やレーザーを照射し、放出する光を波長ごとに分けるスペクトル分析で調べる測定法です。
調べたい物体を壊すことなく、物質の構造を調べることができます。

蛍光測定がよく使われる例として半導体ウエハーの検査があります。
レーザー光を照射するスポット径を10〜100マイクロメートルまで絞り込むことで、ピンポイントで不純物の混入箇所や構造の欠陥などの不良を見つけ出すことができます。

半導体向けの純度99.9999999999パーセントのシリコンでは、範囲を絞って、1点1点に不純物がないかといいうことを調べます。
非常に時間がかかりますが、高精度に不良を見つけられる手法として有効です。

一方、太陽電池に使われるシリコンは99.99999パーセントと、半導体ほどの純度が要求されません。
太陽電池レベルの純度の薄膜系製品であれば、一気に全面にレーザーを照射して、ウエハーの蛍光発光を撮影し、不純物の有無を調べることも可能です。

他にもLEDなど発光デバイスの品質評価や次世代の化合半導体(シリコン以外の半導体でシリコンよりも電子移動速度が速い、低電圧で動作するなどのシリコンとは異なる特性を持つ)の評価などにも利用されています。
化合物半導体は結晶欠陥が多いために割れやすい、高品質化が難しいなどの課題があり、蛍光測定が大いに役立っています。

蛍光測定(フォトルミネッセンス測定)のメリット・デメリット

メリット
  • 非破壊で検査できる。  

    蛍光測定は試料に直接触れない非破壊検査なので、電極を設置したり表面を研磨したりする必要もありません。

  • 資料のサイズに制限がない  

    試料のサイズに制限がなく、非常に薄い(1マイクロメートル程度)試料でも測定できます。

  • 感度が高い  

    不純物に対する感度も高く、半導体評価法として広く使われています。

デメリット
  • 蛍光発光しない対象(不純物)を測定できない  

    蛍光によって分析するので、蛍光発光しない部分は検査できません。
    不純物によっては取りこぼしが出てしまう可能性があります。

蛍光発光(フォトルミネッセンス)を使用した検査装置

ここまでは、半導体ウエハーの検査装置を例に蛍光測定を紹介してきましたが、他にも応用されている機器があります。

分光蛍光光度計

蛍光測定を行うための装置で、出力部と入力部からなります。
出力部はレーザー発振装置(キセノン光源などレーザー以外の光源の場合もあり)と不要な波長を除去するフィルター、集光レンズで構成され、狙った波長の光を狙った直径で放射します。レーザー光が試料を蛍光発光させると、分光器で波長が選別され、測定対象の波長だけが電気信号に変換されて数値化されます。
照射するレーザー光のスキャニングを2次元ではなく3次元で行うことで、試料の立体像を得ることもできます。

蛍光顕微鏡

光学顕微鏡の一種ですが、対象物に可視光ではなく紫外線や赤外線を当て、蛍光発光させて観察するところが違います。

試料の中で検出したい部位を発光させることで、視野が暗くても強調した画像を得ることができます。また光の反射ではなく、試料自体が発する光を観察するので、対象の表面だけではなく内部も観察することができます。高感度撮影素子を使うことでごく弱い蛍光でも観察できるため、レーザーでは傷つけてしまう生きた細胞でもダメージを与えない光源を使うことで観察できます。

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