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KLV大学 光源コース

UV 樹脂硬化を使用する際に起こる「上手く固まらない」という硬化不足問題の多くは出力不足によるものと考えられがちです。ただし、実際には複数の要因が絡み合っていることが多く、”照射方法”も硬化不足の大きな原因の1つです。

照射方法に起因する硬化不足は、硬化対象が「複雑形状」の場合に発生しやすく、この場合、当て方の工夫で解決します。

本記事では、光の当て方という観点で、分岐を活用した照射に関して詳しく紹介していきます。

1. UV樹脂・接着剤の硬化不足の原因と照射方法

UV樹脂・接着剤が硬化しないケースでは、主に、環境、効果材料、照射強度波長といった3つの要因が絡み合って発生します。

この中で、”照射強度波長”に着目した場合、「照射強度」、「照射波長」、「照射方法」の3点がポイントになります。

①積算光量

UV硬化樹脂毎に必要な積算光量が決まっています。
積算光量は、”照射強度×時間”で計算できる値で、照射強度が弱いと硬化するまでの照射時間が長くなります。
UV照射器の出力不足や照射時間が不十分な場合、積算光量が不足してUV樹脂が固まらないという現象が起きます。

②照射波長

UV硬化樹脂には、光重合反応を発生させるための添加剤や光重合開始剤が添加されており、これらの添加剤が反応する特定波長の光が必要です。
よって、積算光量が計算上十分であってもその特定波長の光でなければ、UV樹脂が固まりません。
光源の波長毎の強度を光源スペクトルで確認することが重要です。

③照射方法

UV硬化樹脂に対して光が当たりにくいなど、照射ムラがある場合には、部分的にUV樹脂が固まらないという現象が起きます。
照射ムラをなくすには、対象の形状(平面な場合、厚みのある場合、複雑形状の場合 など)に合わせた照射方法の検討が必要です。
対象の形状毎に必要な考慮するべきポイントを以下にご紹介します。

対象が平面的な場合

ライトガイドからでた光は照射面にムラがあります。このムラは、レンズを通すことで均一化することができるので、レンズを使用して照射強度ムラを防ぐのが一般的です。
選択するレンズには、スポット型、ライン型、エリア型など様々な種類があるので、これらを対象物に合わせて適切に選ぶことで、効率的に硬化させることができます。

対象に厚みがある場合

複数波長を使用して表面だけではなく奥まで光が届くようにする必要があります。
波長が長いほどUV樹脂のより深くまで届くという性質があるので、複数波長をうまく活用することで、厚みのある対象をムラなく硬化することができます。

対象が複雑形状の場合

複雑な形状で一方向から当てた時に影ができるような場合には、複数の方向から光を照射し、光が届かない場所をなくす必要があります。
複数の方向から光を当てるには、ファイバを移動させたり、照射装置を複数台用意する必要がありますが、その場合、「時間」や「コスト」などの面でデメリットがあります。
そこでご紹介したいのが、「多分岐ファイバ」です。多分岐ファイバは、1 本の入射口から複数の出射口を持つファイバなので、1 台の照射器で4 方向から光を当てることが出来きます。

ここからは、複雑形状の場合にフォーカスして、「シングルファイバ」の課題と、なぜそれが「多分岐ファイバ」で解決するのかをご紹介していきます。

2. 複雑形状を硬化する際のシングルファイバの課題

シングルファイバとは

シングルファイバは、入射口と出射口が1:1のファイバです。
照射光のロスはが少なく強い光を照射することが可能なので、強い出力が必要な場合にはシングルファイバで硬化を行う方法が有効です。

液体ライトガイド

UV光を透過させるファイバとしては石英が材質として使用した石英ファイバが多いですが、液体ライトガイドという内部に特殊な液体を充填させた透過率の高いファイバも存在しています。

ライトガイドとは

シングルファイバの課題

一方で、複雑形状で複数の方向から光を照射する場合には以下のような問題が発生します。

1台の照射器で照射する場合

複数のポイントから照射するためには、ファイバーを動かす必要があります。

よって、硬化に必要な時間が、「照射時間+ファイバの移動時間」となり、スループットが悪くなる。ファイバが移動するため、ファイバの劣化が早くなる。などの問題が発生します。

複数の照射器で照射する場合

複数の照射器を用意すると簡単に複数のポイントから照射が可能になります。

しかし、照射器を複数用意するので、コストが高くなる。機器を並べるために必要なスペースが大きくなるなどの問題が発生します。

そこで活躍するのが「多分岐ファイバ」です。

3. 複雑形状を硬化する際に活躍する多分岐ファイバ

多分岐ファイバとは

多分岐ファイバは1つの入射口に対して複数の出射口を持つファイバです。
これにより、1台の照射器で様々な角度からUV光を照射することが可能になります。

石英であれば素線をうまく分割して束ねることで、液体ライトガイドでは物理的に複数のファイバを密着させる方法で作られます。

シングルファイバでは全体に光が十分に届かないような複雑な対象物に対して効率よくUV光を照射することが出来ますが、複数に分割する際に出力のロスも発生するためシングルファイバより出力が落ちる点に注意が必要です。

シングルファイバと多分岐ファイバの違いを以下に示します。

シングルファイバ 多分岐ファイバ
複雑な構造物 ×
1分岐あたりの出力 ×
コスト

4. シングルファイバ、多分岐ファイバの出力・硬化時間比較

ここまでで、硬化対象の形状が複雑で複数の方向から光を当てる必要がある場合には、「多分岐ファイバが有利」という話をしてきました。
ここからは、実際にUV照射器(Primelite ALE3.1)とライトガイドを使用して、シングルファイバと多分岐ファイバの実際の「出力」を確認し、積算光量の観点から「硬化にかかる時間」を比較してみます。

シングルファイバと多分岐ファイバの出力比較

実際に弊社でPrimlite ALE3.1と液体ライトガイドを使用して「照度」を測定したデータをご紹介します。

装置 Primelite ALE3.1(365nm)
ライトガイド シングル 4分岐
レンズ 2PPO focus
総出力 8592mW 1129mW
(分岐当たり)
照射距離 20㎜
スポット径 8㎜
照度
(スポット径の面積で計算)
17101mW/㎠ 2247mW/㎠

シングルファイバと多分岐ファイバの硬化時間比較

今回の計算では、Φ8mm=0.5024㎝²の面積で4面に照射したいサンプルがあり、接着剤の必要積算光量がそれぞれの照射面で10,000mJ/cm^2の場合を考えます。

シングルファイバの場合

シングルファイバではスポット径当たりの照度が17,101mW/cm^2なので、積算光量10,000mJ/cm^2を稼ぐためには10,000/17,010 ≒ 0.58秒/面の照射時間が必要となります。

4面照射をファイバ1本で行うためには、硬化に必要な照射時間(約0.58秒×4面=2.32秒)に加えて、4面に光を当てるためにライトガイド(またはサンプル)を3回動かす時間が発生します。次の面に移るまでに時間を1秒とすると移動時間が3秒になるので、硬化全体にかかる時間は、5.32秒(2.32秒+3秒)となります。

多分岐ファイバ(4分岐)の場合

4分岐では、スポット径8mmの照度が2,247 mW/cm^2になったため、1面の硬化に必要な時間は10,000/2247≒4.45秒となります。
4分岐の場合は一度に4面照射できるので、全ての面の照射に掛かる時間も4.45秒です。

シンブルファイバと多分岐ファイバ(4分岐)の比較結果を表に示します。

シングル 4分岐
1秒当たりの照度【mW/cm^2】 17,101 2,247
1面当たりの硬化時間【秒】 0.58 4.45
4面の硬化時間合計【秒】 2.32
切り替え時間【秒】 3
合計時間【秒】 5.32 4.45

以上の結果から、今回のケースでは、シングルファイバが5.32秒、多分岐ファイバが4.45秒で「多分岐ファイバの方が有利」という計算結果になりました。
今回の計算はあくまで、概算例となりますので、お客様の環境に合わせて計算ください。

他社のUV LED照射器との比較

PrimeliteのALEシリーズは元の出力が非常に高いため、4分岐にしたとしても他社のUV-LED照射器と比較して高出力です。

他社との比較データに関しては、以下からダウンロードください。
ALE3 vs Panasonic UJ30 UV LED光源 出力比較データ

5. まとめ

対象物が複雑形状の場合には、積算光量、タクトタイム、コストなど状況に応じてシングル、多分岐ファイバ選択することが重要です。
Primelite社のUV-LED照射器は高出力の装置であり、4分岐したとしても1分岐当たりの光量が他社の照射器よりも高出力です。複雑形状に対する硬化に関して、PrimeliteのALEシリーズと多分岐ライトガイドをご検討ください。

UV-LED照射器ALE/3.1

UV-LED照射器ALE/3

  • UVランプより高い出力
    (UV-LEDとして業界最強水準の高出力)
  • UV硬化剤に合わせた波長スペクトルを選択可能
     (複数のLED搭載可)
     (LEDを選択可)
     (各LEDの出力を調整可)
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液体ライトガイド

液体ライトガイド(超低損失・断線無し)

  • 石英ファイバからの置き換えが可能
  • 超低損失
  • 多分岐ファイバも提供可能

紫外~可視~近赤外の透過波長に対応の液体ライトガイドは、屈曲した際の断線を気にせずに使用できます。
また、大きな開口角を持っているため、均一性、高出力の光伝送の用途に適します。

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