UV硬化の仕組み2
2022.08.22 | UV照射器
3.従来の光源とLED
従来から、紫外線照射装置によるUV硬化のための光源として、水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどが使われてきました。
近年、低消費電力・長寿命であるLEDが光源として登場し、その優位性から採用されるケースが非常に増えています。
LED光源の性質 | 従来(非LED)の光源 | |
---|---|---|
出力 | 低出力 | 高出力 |
消費電力 | 低 | 高 |
発熱 | 少ない | 発熱 |
波長域 | 狭い | 広い(ブロード) |
制御 | 細かな制御が可能なため、ミリ秒単位の停止・照射の切り替え制御可能 | 細かな制御がしにくいため、停止・照射の切り替えに時間がかかる |
寿命 | 寿命が長い(ランプの5~20倍)ため、交換頻度が低い 尚、出力が高ければ高いほど早く消耗する |
ランプ寿命が短いため、高頻度の交換が必要 尚、出力が高ければ高いほど、早く消耗する |
処理問題 | 水銀を含まないため処理しやすい | 水銀など有害物質を含むため処理しにくい |
4.UV硬化の速度
UV照射によって樹脂が硬化する際、数秒程度で硬化します。
ですが、硬化速度が遅い場合があります。
例えば環境による要因(大気中の水分)や、機器側の要因(照射波長、強度など)があります。
状況によっては硬化しないというケースもよくあります。
5.UV硬化を妨げる要因
そのようなメリットが多いUV-LED照射装置ですが、ときたま「固まらない」という声も聞きます。
紫外線LEDでUV硬化しないケースでは、主に、環境、効果材料、照射強度波長といった3つの要因が絡み合って発生していると考えられます。
固まらない理由1:酸素の影響
大気中の酸素の影響で反応が止まるケースがあります。
アクリレート系モノマーを利用する場合、顕著と言われています。
照射強度が弱いと、反応速度が塗膜内の酸素の拡散に負けてしまい硬化しないケースがあります。
固まらない理由2:高湿度
湿度70%以上の高湿下で、硬化速度が著しく損なわれる場合があります。
光カチオン重合系の開始剤で、対応する添加剤を用いない場合です。どうしても高湿度環境でのUV硬化が必要な場合は、添加剤により改善することがあります。
固まらない理由3:硬化材料の配合と照射光の関係
光重合開始剤・増感剤の配合が、照射するUVの波長域と適合していない。
先述のとおり、反応する波長域とずれている場合、硬化しません。
固まらない理由4:底まで光が届かない
膜が厚すぎる、影になり光が届かない。
表面が先に硬化し、奥まで光が届かない場合固まらない原因になる。非LEDでは、短い波長で表面を固め、長い波長で奥を固めるという方式が取れたが、波長域の狭いLEDでは難しく工夫が必要。
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固まらない理由5:照射強度
照射強度が弱い。
旧来の水銀・メタハラ等の光源と比べ、一般的にLEDは照射強度が弱い。
ワークとの距離がある場合も、強度が低下します。
そのように、UV硬化の成否は複合的な要因に基づきます。
旧来の非lED光源(水銀ランプなど)からLED光源の製品に切り替えようとした場合、それまでのノウハウでは活かせない(硬化しない)ケースもあります。
過去の事例を見ると、特に「出力不足」「波長域の違い」から起こるケースが多いように感じます。
従来の非LED光源では、UVランプといえどブロードに近い波長の光が放射されるものが多く、ピーク波長以外の周辺波長域の光が硬化に影響を及ぼすケースもあります。
硬化材料の配合に関しては、「いかに硬化させるか」だけでなく「硬化後に得られる最適な物性」の面も考える必要があり、硬化しないからといって容易には変更し難いケースも多いと考えられます。最終製品の品質に影響を及ぼすためです。
そのようなお困りの際には、弊社の扱うハイパワーUV-LED照射装置をご検討ください。
実機での検証も可能です。
製品の特徴
液体ライトガイド(超低損失・断線無し)
光源装置を高出力なものにする以外に、従来のライトガイド(石英等のバンドルファイバー)を、光伝送効率が抜群に良い液体ライトガイドに置き換えることで光出力を高める方法もあります。
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