UV照射器の選び方 5つのポイント
UV照射器には、いくつかの種類があり、機種毎の特色があります。
ここでは、UV照射器を選択する場合の5つのポイントを解説していきます。
様々な方の用途に適したUV照射器の選択の一助にしていただければ幸いです。
目次:UV照射器を選ぶ 5つのポイント
1.波長
UV硬化は、樹脂、塗料、接着剤など様々な場所で使用されていますが、いずれの場合も硬化剤/開始剤/添加剤の反応波長に合わせた「波長帯域」に合わせたUV照射器を選択する必要があります。
一般的には200~400nmで反応(硬化)するものが多く、中でも365nm領域に大きい吸収を持った材料が使われる傾向があります。
よって、光源にも365nmに対応しているUV照射器を選択することが多いですが、以下のような観点から複数のLEDを搭載しブロードな波長を出力できる機種が好まれます。
□波長観点
- 様々な材料に対応するために波長選択の自由度がほしい。
- 使用している材料が、どの波長に対して最も感度が高いかがわからない(実験したい)。
- 材料の透過波長を考慮する必要がある。
- より材料の表面から深くに到達する長波長の光も照射したい。
□出力観点
- UV硬化装置の総出力(光量)は波長帯が広くなればなるほど大きくなる。
補足:実際の出力スペクトルの例
LED光源に関しては、”365nm,405nm"などスペック上の中心波長の値が同じであっても、製品によって波長の広がり(半値幅)や波長の異なるLED間での出力の割合が異なります。
よって、製品を比較する際には、出力の波長特性を見て使用するUV硬化樹脂に対して有効な波長範囲がどのようにカバーされているのかも確認することが望ましいです。
まとめ:波長
ブロードな波長を出力できる複数LED搭載のものが、波長の自由度や出力の面で有利です。特に評価用途であれば、様々な試行が可能になります。
単一波長を選択する場合には、UV硬化樹脂が硬化する波長から選択することになりますが、材料の透過波長の考慮や、波長帯域によって硬化の深度がかわることへの考慮も必要です。
2.出力(光量)
出力(光量)は、処理時間に関わる重要なパラメータです。ただし、UV照射器毎に出力の前提条件が異なるため、仕様表上の値をそのまま比較した場合、購入した後に「出力が低くて使えない」ということになりかねません。
そこで、ここでは出力について比較方法などを詳しく紹介します。
UV硬化に必要な光量は、積算光量というエネルギーで表され、単位は[J/cm²]となります。
1[J]=1[w*s]であるため、積算光量の単位は1[J/cm²]=1[(W*s)/cm²]=1[W/cm²*s]と変換できます。
ここから、積算光量は”単位面積あたりの光量×時間”であることがわかります。
積算光量(硬化に必要なエネルギー) = 単位面積あたりの光量[W/cm²] × 時間[s]
この式からも、“単位面積当たりの光量”が強くなれば、それに反比例する形で“時間”を削減できることがわかります。
また、“必要な積算光量”と“期待するラインでの照射時間”がわかっていれば、必要な“時間を単位面積当たりの光量“を求めることも可能となります。
このような前提の元、UV照射器の「出力」を比較する必要がありますが、照射器毎にスペックの前提条件となる照射面積に違いがあるため比較には工夫が必要です。
補足:照射面積と出力の関係
例えば同じUV照射器でも、1cm²の領域に照射したときの“単位面積当たりの光量”と10cm²の領域に照射したときの“単位面積あたりの光量”は1/10になるという点に注意する必要があります。
UV照射器出力の比較方法
UV照射器の出力を比較するには、2つの方法があります。
[1]UV照射器の総出力で比較
出力には、単位面積当たりで計算された照度(単位”W/cm²”)と純粋なUV照射器からの出力の総和(単位:”W”)があります。
そして、出力の総和同士であれば、直接『値』を比較することでUV照射器の出力の差が確認できます。
ただし、この出力の総和は表記していないUV照射器が多く比較できない場合があります。また、同様に”W”の単位となる消費電力と混同しないようご注意ください。
タイプ | UV照射器A | UV照射器B |
---|---|---|
出力 | 最大15W | 最大30W |
[2]同じ照射面積で比較
表示されている”W/cm²”の前提条件を確認した上で、同一条件で比較を行う方法です。
例えば以下のような場合において、カタログの照度値のみを比較して、UV照射器Dの出力が高いと判断するのは早計です。
特に各メーカは出力を大きく見せるため、カタログには狭領域に照射した場合の照度値を記載している場合があるからです。
誤った比較方法:照射範囲が異なる
製品 | UV照射器C | UV照射器D |
---|---|---|
照度 | 100W/cm² | 200W/cm² |
照射範囲 | 10cm² | 2cm² |
そこで前提条件を同じにするために、各照度の値を同一の照射範囲[cm²]に照射した場合で比較することをおすすめします。
例えば、先程の例を5 [cm²]の領域に照射するという条件で統一した場合には、以下のように計算でき、UV照射器Cのほうが出力が高いということがわかります。
正しい比較方法:照射範囲を同じにする
製品 | UV照射器C | UV照射器D |
---|---|---|
照度 | 100mW/cm² ✕ (10/5) = 200mW/cm² |
200mW/cm² ✕ (2/5) = 80mW/cm² |
照射範囲 | 5cm² | 5cm² |
またUV照射器によっては、照射領域全体に対してその強度が得られるというわけではなく、最大の照射強度のみを記載している場合もあるので注意が必要です。
そのような場合には、照射強度のプロファイルを見ることが有効です。
UV照射器の出力に関しては、「構造」によって大きく変わります。
処理時間短縮の観点から、高出力のUV照射器をお探しの方はぜひ以下のリンクをご確認ください。
まとめ:出力
UV照射器の出力は照射面積に反比例するため、同一条件で比較する必要があります。
[1]総出力である"W"で比較 [2]同じ照射面積に換算して、照度"W/cm²"で比較 という2つの方法があります。
ただし、総出力は記載していない製品が多いので、同じ照射面積に換算する場合がほとんどです。
3.均一性
実際にUV照射器を生産ライン等で使用する場合には、照射範囲内での光量の均一性が重要な要素になります。
例えば、出力だけを考えると最大出力は高いほうが良いと思われますが、そのために出力が不均一になってしまうと、製品の出来上がりが不均一になったり、UV硬化樹脂が十分に硬化しないなどの問題が発生する可能性もあります。
そのような観点から、最大出力だけに注目するのでなく、硬化する領域全体を見たときに期待値以下になる領域がないかを確認する必要があります。
照射範囲内での均一性は照射強度プロファイルで確認することが可能ですが、レンズやワーキングディスタンスによっても変化するので、自身の使用環境に類似した条件かどうか注意が必要です。
補足:照射器のタイプについて
UV照射器には、用途毎に3つのタイプが存在します。
スポット型
ピンポイントで照射する
ライン型
横長の光を照射し縦に走査し全体に当てる
エリア型
ある程度の面積を持ち広く照射する
ライン型やエリア型のUV照射器はその照射に特化していますが、スポット型に関しては、照射口に取り付けるレンズを変えることで、ライン形状やエリア形状での照射も可能です。
スポット型の照射面積に関して、レンズとワーキングディスタンス(レンズから照射面までの距離)の選び方の詳細は以下をご確認ください。
まとめ:均一性
UV照射器の均一性は必要な硬化領域を決めた上で、レンズやワーキングディスタンスを明確にして照射強度プロファイルで確認する必要があります。
レンズは種類が多いため、検討の最終段階では問い合わせてメーカーに相談・確認するのも有効です。
4.光源の種類
UV照射器には、「水銀ランプ」と「LED」が存在するので、どちらかを選択することになります。
それぞれの特徴を以下に示します。
水銀ランプ | UV-LED照射器 | ||
---|---|---|---|
コスト | 機器価格 | ○ | ☓ |
寿命 | ☓ | ○ | |
トータルコスト | ☓ | ○ | |
パフォーマンス | 照度 | 高 | 低~高 |
均一性 | 低 | 高 | |
その他 | 出力低下 | 高 | 低 |
ウォームアップ | あり | なし | |
保守 | バルブ交換 反射板清掃 |
なし |
従来、水銀ランプに比べてLEDの出力は低いものでしたが、技術革新により高い出力を持ったLEDが製品化されています。
コストにおいても、装置単体の価格はLEDのほうが高いですが、LEDは寿命が長いためコストパフォーマンスで考えた場合にはLEDが有利となることが多くあります。
そのような状況の中、水銀ランプは「水銀に関する水俣条約」で2020年に製造、輸入が禁止され、今後は「LED」が主流になってくると考えられます。
置き換えのお客様は、長年製造工程で用いてきたランプ光源とLEDとで完全に同等の出力波長特性が得られるわけではないため、置き換えに躊躇される方もおられますが、そのような場合には、「ランプ光源と同じ様に、高出力で搭載LEDが多くブロードな波長の出力が可能なUV照射器」を検討されることをおすすめしています。
まとめ:光源の種類
今後は低消費電力、長寿命による光源の交換頻度の削減、長期的なコスト削減、コントロールの容易さの観点からLEDが主流になると考えられます。
水銀ランプを使用する際には、規制などを十分理解した上で検討していく必要があります。
5.機能
UV照射器には、より高度で安定したUV硬化を行うための様々な付加機能があります。それぞれの機能の有無がUV硬化の質に影響するため、機能の内容を知った上で要・不要の判断をしていく必要があります。
ここでは、代表的な4つの機能について述べて行きます。
・複数LED搭載
単一波長だけではなく、複数の波長を搭載することができる機能です。
複数波長を搭載できることで、1節で述べたように波長、出力の観点で有利になるほか、次に説明する照射プログラム制御機能と組み合わせることでステップ照射が可能になるというメリットがあります。
単に「複数波長対応」というカタログ上に記載があったとしても、「複数の波長の中から1つの波長のLEDを選択できるだけの場合」、「複数のヘッドがあり、それぞれのヘッド毎に異なる波長のLEDを搭載できる場合」、「しっかりとフィルターなどを用いて波長を合波して1つのヘッドからブロードな波長を出力する場合」とレベルが分かれますので、どのレベルの機能が必要かを検討してUV照射器を選択する必要があります。
・照射プログラム制御(ステップ照射)
照射プログラム機能は、それぞれのLED出力を予め設定したプログラムに従い変更する機能です。
これによりユーザーは照射する光の波長、出力、時間を細かく設定することが可能となります。
波長によってUV硬化の深さが変わるため、この機能を使用してより表面から深い部分を硬化させることができる長波長の光から照射を行っていくことで、深度と表面の平坦性を両立するなどより高度なUV硬化の制御が可能となります。
・フィードバック機能
LEDの出力は温度変化や使用時間により多少変動するため、同一の電流値で出力を行っていた場合、出力の変動が発生します。そしてこの変動は、硬化不足の発生やそれを防止するための余計なマージンの確保に繋がる場合があります。
フィードバック機能はLEDの出力を常に監視して、電流値を適切に変更する事により出力を一定に保つ機能であり、前述のような問題を防止することができます。
・冷却
LEDは大出力であればあるほど発光時に素子の温度が高くなり、それによる出力の低下が発生します。
よって、大出力のUV照射器に関しては冷却がしっかりしているかという点が購入前のチェックポイントとなります。
冷却には、「ヒートシンクのように周辺のパーツの表面積を増やす」、「空冷(ファンなどで冷却)」、「水冷(冷却水を循環させて冷却)」などがあります。
一般的には水冷が最も冷却効果が高い方法になりますが、冷却水の管理が必要になるというデメリットもあります。
まとめ:機能
UV照射器には、より効果的かつ安定的にUV照射を行うための機能が存在しています。
機能の内容を理解し自身の用途での要・不要を正しく検討して購入することが、購入時の失敗を防ぐことにつながります。
最後に
UV照射器の選び方を最後までお読みいただきありがとうございます。
ケイエルブイでは水銀ランプと同等の出力を実現した、超高出力で多機能なLEDを搭載したUV照射器を取り扱っています。
デモ機のご用意がありますので、「UV硬化を試してみたい」「水銀ランプからの置き換えを考えている」という方は、ぜひ以下からデモ機の貸し出しを依頼いただければと思います。
また、ケイエルブイでは、UV硬化に関する特設ページを設けておりますので、こちらもご活用ください。
光源コース
光源技術基礎
- 蛍光発光とは
- 電界発光とは
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- 紫外光の用途と光源
- 光の「波長」とは
- 広帯域光源の発光原理と特長
- 白色光源の原理と製品
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光源の種類
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- 水銀ランプ
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UV硬化
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