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光源の寿命 原因と種類を解説

どの様なものにも寿命があります。
当然、光源も例外ではなく寿命を迎えますが、光源の寿命の迎え方には、大きく以下の2種類があります。

  1. まったく動作しなくなる
  2. 経年劣化で十分な性能を出せなくなる
spectral-analysis.jpg

光源の寿命は、光源の種類やメーカーによって異なるため、仕様に記載されている値だけをみて選択すすると間違った判断をしてしまう可能性があります。

本記事では、光源の仕様書に書かれている”寿命”が何を指しているのかを深掘りして解説していきます。

光源の劣化

物体が劣化する原因には熱によるもの、光(主に紫外線)によるもの、空気や水(水蒸気を含む)との反応によるものなどがあります。光源の場合は種類にもよりますが、発熱を伴う光源が多く熱による劣化が中心です。

ここからは実際の光源を例に、より具体的な劣化の要因を見ていきます。

光源の寿命に影響する劣化箇所

1. フィラメントの劣化

白熱電球やハロゲンランプのフィラメントであるタングステンは発生した熱により蒸発することで細くなり、それによる出力値の変動が起こります。
また、細くなったタングステンが切れてしまい(焼断してしまい)全く動作しなくなるという観点で寿命を迎えることもあります。

ただし、この点はハロゲンランプで克服されています。
ハロゲンランプと白熱電球の構造は同じですが、ハロゲン電球はガラス管内にヨウ素、臭素、塩素などのハロゲン化物を微量に封入することで、蒸発したタングステンをフィラメントに戻す「ハロゲンサイクル」を利用しているからです。

図:ハロゲンサイクルのモデル

halogen-cycle.jpg

2. 電極の劣化

電極の劣化は、蛍光灯を例に解説します。

蛍光灯は、以下の原理で発光します。

  1. エミッタを塗布した電極から発せられた「電子」が蛍光管の反対側の電極へと移動する。
  2. 「電子」が水銀原子と衝突し、励起される。
  3. 「電子」が逆励起し、紫外線を発する。
  4. 紫外線がガラス管に塗布された蛍光物質と反応して可視光線を出す

この工程において、エミッタは点灯中に飛散または蒸発していくため、電極のエミッタが消耗すると点灯しなくなります。

3. 素子の劣化

素子の劣化は、LEDの様に素子が発光する場合に起こります。

LED光源では、発光部のLED素子の内部量子効率の低下や活性層の結晶欠陥による劣化による光束減退が発生します。

4. ガラスの劣化

白熱電球はフィラメントであるタングステンが、熱により蒸発し、ガラスに付着して黒化させるので光束が低下し、明るさが初期状態よりも下がってしまうという現象が起きます。

こちらもハロゲンランプでは、ハロゲンサイクルである程度克服されていますが、完全に防げるわけではありません。

また、蛍光灯においても白熱電球と同様に黒化も発生します。
中でも「アノードスポット」と呼ばれるエミッタから飛散した物質の付着による黒化現象が起こることによって発生し、寿命に影響します。

図:アノードスポット

anode-spot.jpg

その他の黒化現象には「エンドバンド」「EC黒化」そして「水銀付着」などもあります。
どれも、光束の低下に影響を及ぼし、条件によっては寿命に影響します。

ちなみに、ガラスに関しては、振動や衝撃が加わる環境では、機械的な破損により寿命を迎えることもあります。

光源の寿命の種類

光源の定格寿命とは

ここまでで、「破損」だけが光源が使用できなくなる要因ではないということが、わかっていただけたかと思います。

「物理的に破損して使えなくなる」というのは寿命としてわかりやすいですが、多くの場合は「黒化」などにより、少しずつ出力が落ちて期待した性能が出ない事により寿命を迎えるので、ユーザーが光源の劣化を予測して交換時期を見定めるのは大変難しいという問題があります。

そこで、光源の寿命に関しては「フィラメントが切れて動作しなくなる時間」以外にも、
「どのように出力が下がっていくかというグラフ」を開示し、「このような状態になったら寿命」
という「定義」を決めています。これを「定格寿命」と呼びます。

各光源の定格寿命の例

以下に代表的な光源の目安となる定格寿命の定義を紹介します。

表:光源の規定条件と定格寿命

光源の種類 規定条件 定格寿命(時間)
白熱電球 同一形式の連続点灯試験で、以下の短い時間の平均
  • 一定割合の光源のフィラメントが切れるまでの点灯時間
  • 光束維持率が規定割合を切るまでの点灯時間
1000~2000
蛍光灯 同一形式の連続繰り返し点灯試験で、以下の短い時間の平均
  • 一定割合の光源が点灯しなくなるまでの点灯時間
  • 光束維持率が規定割合を切るまでの点灯時間
3000~12000
ハロゲン電球 同一形式の連続点灯試験で、以下の平均
  • 一定割合の光源のフィラメントが切れるまでの点灯時間
200~30000
高輝度放電ランプ 同一形式の連続繰り返し点灯試験で、以下の平均
  • 一定割合の光源が点灯しなくなるまでの点灯時間
6000~12000
LED 同一形式の連続点灯試験で、以下の平均
  • 光束維持率が規定割合を切るまでの点灯時間
40000

光源の定格寿命の種類

表から、光源の定格寿命には、以下の2種類があることがわかります。

寿命の種類1 一定割合の光源が点灯しなくなる時間

寿命の種類2 光束維持率が一定割合を下回るまでの点灯時間

それぞれについて簡単に紹介します。

寿命の種類1 一定割合の光源が点灯しなくなる時間

黒化や素子の劣化による減衰で使えなくなる事よりもフィラメントが切れたなどの理由で点灯しなくなる場合が多い場合に採用されており、ハロゲンランプ・高輝度放電ランプなどの工業用のランプや蛍光灯・LEDなどの照明器具などで使われます。

メーカーからは、横軸に定格寿命までの時間の比率、縦軸に残存率を表記したグラフが提示され、ユーザーはこのグラフから、どれぐらいの時間から故障するランプ出てきて、どのような推移でランプが故障していくかの見込みかを知ることができます。

図はあるハロゲンランプの残存率を示したグラフです。
このグラフからは以下のようなことがわかります。

  • 残存ランプが50%となる時間を「寿命」と定められている
  • 実際には、寿命の半分の時間から故障するランプが出始め、寿命の80%の時間では約20%のランプが定命を迎える

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寿命の種類2 光束維持率が一定割合を下回るまでの点灯時間

黒化や素子の劣化による減衰で使えなくなることを想定した仕様で、UV硬化など常に一定以上の出力が必要とされている現場で使用される光源や白熱電球、蛍光灯、LEDなど照明器具で「寿命の種類1.多数の光源が点灯しなくなる時間」に加えて使用されます。

メーカーからは、横軸に時間、縦軸に光束維持率を表記したグラフが提示され、ユーザーはこのグラフから、時間による出力変化がどの程度発生するのかを知ることができます。

実際の現場では、ランプに定義されている定格寿命=ランプの交換時期とは限りません。 例えば、レジンを硬化させるUV光源では、硬化時間が光源の出力に比例するため、硬化時間を短く保つために光源の出力低下の許容値が厳しくなります。このような現場では、メーカーが出している点灯時間と設計光束維持率との関係を示したグラフを利用して期待する光束維持率が保たれる時間を「寿命」としています。

図はある光源の光束維持率を示したグラフです。
このグラフからは以下のようなことがわかります。

  • 12000時間経つと、出力が初めの70%になる

    (光束維持率が70%になった時を寿命と定義している場合、定格寿命が12000時間となる)

  • 実際には、使用し始めてからすぐに光束が減り始め、2000時間で90%、5000時間で80%となる。

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ここまでの内容から、光源の寿命は、「ランプ」や「現場」によって異なるということがわかるかと思います。
光源の寿命を比較・検討する場合は、メーカーによって、「定義の種類」、「定義に使用する割合の数字」が異なるといいうことを前提に、仕様にある「定格寿命」の数字だけをみて判断するのではなく、何が「定格寿命」として仕様に表記されているかというところまで確認することが大切になります。

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