ケイエルブイは、ハイパースペクトルカメラ・光学部品・光源など世界中の光学機器を取り扱う専門商社です。

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KLV大学 ハイパースペクトルカメラコース

ハイパースペクトルカメラの選び方 2024年版

ハイパースペクトルカメラは、分光器とカメラの技術を組み合わせることで数百バンド以上の波長情報を得ることができるカメラで、これにより、通常のRGBカメラでは判別出来ないものの判別が可能です。

ハイパースペクトルカメラについて1から知りたい方はこちら

この記事では、世界中の特徴のある12社のハイパー/マルチスペクトルカメラを取り扱っているケイエルブイが2024年の最新のトレンドを踏まえて、選び方を解説します。

この記事が、皆様のニーズに応える機能を兼ね備えたハイパースペクトルカメラとの出会いの場となりますように。

まず押さえたい、ハイパースペクトルカメラの3つの種類

分光器とカメラの技術を組み合わせるためには、レンズとカメラのセンサーの間に分光のための機構を設ける必要があります。この方式によって、①ラインタイプ、②スナップショットタイプ、③ビデオタイプの3つに別れます。

それぞれの原理と特徴を解説します。

①スペクトルカメラの王道:ラインタイプ

原理

ラインタイプは、レンズを通った光をスリットで1ラインにしぼり、その後、光をプリズムやグレーディング等によって分光する方式です。
センサーの1つの軸をライン方向の空間、もう一方の軸を分光した波長情報として取得します。そして、ラインの撮影を繰り返すことによってキューブデータを作成します。

特徴

取得する空間情報を1ラインに絞るので、空間分解能や波長分解能を高くできますが、ステージの移動またはカメラ側でスキャンが必要な点がデメリットになります。
この方式は、生産ラインなど検査対象がコンベア上にある場合と非常に相性がよいです。一方、ライン毎に画像を取得するため、各ラインで撮影の同時性がなく、物体自身が動く(ステージを除く)場合にはあまり向きません。

②写真のように取れる:スナップショットタイプ

原理

スナップショットタイプは、レンズとセンサーの間に透過波長を変更することが出来るフィルターを挿入して各波長の画像取得する方式です。センサーの軸は空間の縦と横で使用して、波長を変えながら撮影を繰り返すことでキューブデータを作成できます。

特徴

ライン型で必要な搬送ステージやベルトコンベアとの組合せは不要で、顕微鏡や肌測定などとの相性がよい方式です。
ただし、波長毎に撮像するので、1つの波長に対しての撮像データの同時性は確保できるが、波長間で撮影のタイミングが異なる点に注意が必要です。

③最先端で動画撮影が可能:ビデオタイプ

原理

ビデオタイプは、2次元の空間の各画素を特殊なフィルターで分光し、大型のCMOSセンサーで読み取る方式です。2次元の空間情報と波長情報を1度に取得してキューブデータを作成します。

特徴

1度に情報を取得するため、ラインタイプやスナップショットタイプと異なり、画像、波長の両方の同時性が確保され、更に最大で80fps(1秒間に80枚)の撮影速度でのデータ取得が可能です。
ただし、搭載するセンサーに "2次元の空間の画素数×波長数"が求められるため、空間分解能や波長分解能を高く出来ない、高い画素数のセンサーが存在しない赤外領域に対して対応出来ていないなどの制限があります。

合わせてチェック!最新動向

  • ラインタイプ、スナップショットタイプに加えて、新たにビデオタイプが登場しました。
    

動画ハイパースペクトルカメラの価値
これまでハイパースペクトルカメラは「静止画」での撮影が主流でしたが、技術の進歩によって、ついに高解像度な「動画」の撮影が可能なりました。記事では、「動画ハイパースペクトルカメラの価値」にフォーカスし、「動画撮影ならではの強み」や「どんな用途に適合するか」などの情報をお伝えしています。



次に、先述した各測定方式の特徴を踏まえた上で、何をどこまで解析するかによって機種を検討する際に気をつけるポイントを述べていきます。

スペクトルカメラは"何を"見たいかで、必要な波長が変わる

ハイパースペクトルカメラは、波長帯によって解析できるものが異なる点に注意が必要です。 機種によって細かく変わりますが、搭載されているセンサーにより3種類に分かれます。

  1. Siセンサー:330-1000nm(紫外-可視-近赤外)
  2. InGaAsセンサー:900-1700nm(近赤外)
  3. MCTセンサー:900-2500nm(近赤外)

これらの波長帯で取得できる情報をアプリケーション別にわけて表にしてみました。

ハイパーアプリケーション波長別

Siセンサーが取得できる可視光領域では細かい色の違いの判別が可能で、塗料の色や肌、蛍光観察などに向いています。
これに対して、InGaAsセンサーやMCTセンサーで取得出来る近赤外光領域では成分の違いの判別が可能で、プラスティック/樹脂、水分、薬剤の判別など成分の違いを確認する事ができます。
このように波長帯によって判別できる対象が異なるため、"何を"判別したいかを明確にしてどの波長帯で判別が可能かを確認する必要がります。

合わせてチェック!最新動向

  • ケイエルブイの取り扱っているハイパースペクトルカメラで、エリア型、ライン型ともに「可視域」と「近赤外域」の機種が出揃い選択の自由度が広がっています。
  • 紫外域(UV)に対応した機種もリリースされ、220nm~の機種が出てきています。
    

スペクトルデータベースを用いた吸収スペクトルの調べ方
見たいサンプルがどのな長で見ることができるのかデータベースの調べ方をまとめたページです。

    

ハイパースペクトルカメラ選定ガイド - 波長から探す
ハイパースペクトルカメラ製品を波長毎にまとめたページです。

スペクトルカメラで"どこまで細かく見たいかは空間と波長の分解能に注目

"どこまで"という観点では空間分解能、波長分解能という2つの要素を考慮する必要があります。

①空間分解能

カメラやディスプレイの画素と同じで、どれだけ細かい画像を撮影出来るかのスペックです。
空間分解能が高い機種のほうが小さいものも確認する事ができます。

ラインタイプの場合、空間の画素数が、ライン方向はカメラのスペックの空間画素数、スキャン方向はステージの移動速度をスペックの撮影速度(フレームレート)で割った値になる点に注意が必要です。

ハイパースペクトルカメラ空間分解能

撮影したい領域のサイズを空間画素数で割ると空間分解能(1pixelの距離)が求められるので、それを検出対象のサイズと比較することで、検出が可能かがわかります。検出したいものサイズが3pixelの距離より小さい場合には、検出はかなり厳しくなります。

合わせてチェック!最新動向

  • 高速な製造ラインへの導入時には撮影速度がネックでしたが、ライン型で「撮影速度1000fps」の機種がリリースされ、高速な製造ラインにも対応が可能になりました。
  • 可視域における高い空間分解能(3000pixels)を持つ機種が登場し、最小検出サイズが数umレベルまで向上しています。
    

高速・高性能のハイパースペクトルカメラHySpex Baldur製品ページ
HySpex Baldurの最大フレームレートは、スペクトルバンド数に反比例します。詳細は、製品ページのグラフをご確認ください。

②波長分解能

スペクトルをどこまで細かく測定するかで、波長分解能が高いほうが、特徴が類似しているスペクトルを見分けることが可能です。
どこまで細かく測定する必要があるかは、見分けたいもののスペクトルの類似性によるので、事前にデモなどで、判別したいもののスペクトルを確認するのが望ましいです。

ハイパースペクトルカメラ波長分解能

数値でわかるスペックだけじゃない。高性能スペクトルカメラはここが違う

スペクトルカメラの仕様において、空間分解能、波長分解能、フレームレート、重量、寸法などは比較しやすい項目ですが、実際にこれらだけで性能が決まるわけではありません。
スペクトルカメラで最も重要と言える精度は、スペックだけではわからない部分でも違いが発生します。

ここでは、精度に関わる重要な機能を3つ紹介します。

①スマイル効果の考慮

スマイル効果とは

スペクトルカメラのスマイル効果は、光学系の歪みにより、撮像されたスペクトルが空間に対して歪がむ現象です。
この現象により、異なる位置で波長の中心のズレが発生し、スペクトル解析の精度に影響を与えます。精密な測定や解析を行うためには、この効果を最小限に抑え、補正することが重要です。

スペクトルカメラのスマイル効果
スマイル効果の考慮とは

高性能なスペクトルカメラは、この効果を最小限に抑えることができるように光学系の設計がしっかりと行われています。
さらに、キャリブレーションの段階で、複数の狭帯域光源を使用して、空間の位置によるスペクトルを計測し、それをアルゴリズムにより補正する機能が備わっています。

②キーストーン効果の考慮

キーストーン効果とは

スペクトルカメラのキーストーン効果は、空間的に発生するズレの一種で、カメラの光学系の特性によって波長による画像の倍率変化が発生し、それにより、それによりセンサーに異なる波長の光が映る現象です。
この効果も、スマイル効果と同様にスペクトル画像の精度の低下を引き起こすため、的確に考慮する必要があります。

スペクトルカメラのキーストーン効果
キーストーン効果の考慮とは

高性能なスペクトルカメラでは、キーストーン効果を考慮に入れた光学設計がなされた上で、光学系やセンサーの位置の微調整によりこの効果を最小限に抑えられています。さらに、波長毎にどのように空間ピクセル上の影響があるかを細かく測定し、それらをアルゴリズムにより補正しています。

③迷光の考慮

迷光とは

スペクトルカメラの迷光は、センサーに到達する空間・波長で決まった光とは異なる光です。
原因は、内部反射、散乱、装置の隙間からの光漏れなどで、空間方向、波長方向の両方で発生します。
迷光は、取得データに対しての誤差となるため高精度な測定を行うためには、できる限り迷光を少なくする必要があります。

迷光の考慮とは

高性能なスペクトルカメラでは、内部反射を抑えるためのコーティングや内部の遮光などが徹底的に行われています。また、キャリブレーションの工程において、迷光のデータを取得し、それらをアルゴリズムで補正することで影響を最低限に抑えています。


このように、高性能のスペクトルカメラは、様々な効果による誤差の影響を減らすための設計上の工夫や高精度のキャリブレーションが行われています。
ただ単に、見た目上のスペックや価格で選ぶのではなく、最も大切な精度に関しての確認が重要となります。

スペクトルカメラをどこでどう使うか、見逃せないポイント

使い方によって必要な確認ポイントが変わってきます。
ここでは、買ったあとに後悔しないように予め考慮しておきたい点に関して、いくつか紹介します。

①装置内搭載など場所に制限がある場合は、レンズ交換の可否に注目

レンズ交換が可能な機種とそうではない機種が存在します。
レンズが交換できない機種では、視野角(FOV)が決まっているため、撮影したいエリアの大きさを撮影するために、カメラと対象物の距離を変えて調整する必要があります。
一方、Cマウント等でレンズが交換できる機種では、視野角(FOV)の異なるレンズを搭載することができるため、対象物との距離を比較的自由に設定する事が可能です。

合わせてチェック!

  • C-マウントで顕微鏡への搭載も可能
    

imec社のハイパー/マルチスペクトルカメラシリーズ
imec社のハイパー/マルチスペクトルカメラはCマウントでのレンズ接続対応機種です。また、Cマウント顕微鏡へ接続してご使用いただくことも可能です。

②ドローンに搭載する場合には、重さに注目

ドローンに搭載して使用したいというお問い合わせが増えてきています。この際にチェックしておきたいのが重さです。
ドローンの機種によって、搭載可能な重量の限界値「ペイロード」が決められています。搭載するカメラが軽ければ軽いほど小型で安価なドローンで飛ばすことができるため、有利になります。
ここで注意しなければいけないのは、カメラだけではなくGPS、PC、ジンバルなども含めて飛ばさなければいけないということです。各社、ドローンに搭載する専用の機種などを用意しており、PCを搭載する場合や、通信器を搭載する場合などいろいろあるので、総重量で比較する必要があります。

合わせてチェック!最新動向

  • 重さわずか280gでドローン搭載に特化した機種がリリースされました。
    

ドローン用に設計された超軽量ハイパースペクトルカメラBlackBird製品ページ
非常に軽量なため、比較的小さい1m以下のドローン(DJIのMARTICE200シリーズ)にも搭載が可能な機種です。

用途に最適なドローン搭載可能スペクトルカメラが見つかる。

UAVハイパースペクトルカメラ特設サイトイメージ

ケイエルブイは、それぞれ特徴のある5種類のドローン搭載用スペクトルカメラを取り扱っています。

  • わずか350gの小型・軽量な機種
  • コストパフォーマンスに優れた機種
  • 性能の高い機種
  • 動画が撮影可能な機種

など

デモ機のご用意もありますのでお問い合わせください。

特設サイトドローン対応スペクトルカメラ >

ケイエルブイは、様々な方式、様々なスペックの機種をご用意しており、お客様に最適な1台をご提案できる自信があります。
選定に関しては、是非ケイエルブイにお問い合わせください。

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もっと選び方を詳しく知りたいという方には、ハイパースペクトルカメラの選び方や最新動向に関して、ウェブセミナーの動画も公開していますので、是非御覧ください。

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    CanonITソリューションズ社と共同で実施したWebセミナーでケイエルブイが発表した「ハイパースペクトルカメラの最新動向」を公開しています。

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また、ハイパースペクトルカメラの知識について、より詳しく知りたいという方は、"KLV大学 ハイパースペクトルカメラコース"でより詳細をご確認ください。

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