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蛍光顕微鏡の校正基準(ISO)策定メンバー、アルゴライト(Argolight)社とは?

蛍光顕微鏡には「校正基準」が存在しません。
そのため、蛍光顕微鏡を用いた実験では、再現性のある結果(データ)を得ることが難しいと言われています。

蛍光顕微鏡で再現性のあるデータ測定を行うためには「校正基準」の策定が欠かせないと言われています。
そのため、世界的な潮流として「蛍光顕微鏡の校正規格策定」の動きが活発化しており、年内(2019年現在)には、蛍光顕微鏡の校正基準(ISO)に関して、照明の均一性、視野の歪みといった「確認すべき項目」が、大まかに明示される見通しです。

校正基準の策定には、顕微鏡業界を牽引する製造メーカーが参加していますが、その中にArgolight(アルゴライト)も名前を連ねています。

Argolight社 Argolight社メーカーロゴ

 追加情報(2021年4月追加):

  →ソフトウェア「Daybook3」のPSF分析機能の追加( 蛍光ビーズ用の機能です。)

 追加コンテンツ(2020年2月追加):

  蛍光共焦点顕微鏡の性能を確認するための新しいISO基準の内容


アルゴライト社が参加している理由

大手蛍光顕微鏡メーカーのみならず、蛍光イメージングに携わる人々が「再現性のあるデータ測定」を目指して、ガイドライン、すなわち校正基準の策定へと乗り出しました。

校正基準の策定には、蛍光イメージングに携わる世界TOPメーカーが参加していますが、その中にArgolight(アルゴライト)社があります。
アルゴライト社は蛍光イメージング、中でも「蛍光顕微鏡の品質管理」において第一線で活躍するメーカーです。

アルゴライト社は蛍光顕微鏡の品質管理に有用な革新的なツール「品質管理スライド」を提供しており、蛍光顕微鏡の品質管理を変えたメーカーと言われています。
アルゴライト社が、世界の名立たるメーカーと並び立つのは、彼らが「蛍光顕微鏡の品質管理を変えた」からに他なりません。

品質管理スライド(左)とソフトウェア(右) 品質管理スライド(左)とソフトウェア(右)

「蛍光顕微鏡の品質管理を変えた」というのは、世界の蛍光顕微鏡ユーザが長年抱えていた問題の解消を指しますが、これは具体的にどのような問題なのでしょうか。

蛍光顕微鏡の品質管理における問題

「蛍光顕微鏡の品質管理における問題」とは、平たくいうと、蛍光顕微鏡を校正できないことにより「測定データに機器固有のバイアスが生じるという問題」です。

では「測定データに機器固有のバイアスが生じること」の何が問題なのでしょうか。

「測定データに機器固有のバイアスが生じること」で起こる問題

  • 【問題1】測定データの比較可能性が制限される
  • 【問題2】機器の同一性を保証できない

一つずつ、見ていきましょう。

問題1測定データの比較可能性が制限される

第一の問題として挙げられるのは「比較可能性の制限」です。
平たく言うと「校正基準が存在しない場合、機器間や研究室間等、別の機器で撮影されたデータの比較が困難になる」という問題です。

基準器が「ある」場合

例えば、分光器であれば、明確な基準器に従って機器が校正されます。
そのため理論上、同一の試料(あるいは条件の一致した別の試料)を測定する場合、分光器Aの測定データと分光器Bの測定データを比較する際、データに大きな誤差が生じることはないはずです。

機器が校正されているためデータの比較が可能

誤差があった場合は測定対象、すなわち「試料」に、その原因を求めることができます。

基準器が「ない」場合

上述の通り、複数機器で測定する場合は「機器それ自体が統一された基準で校正されている」という前提が必要です。

この前提があやふやな場合(基準器がない場合)、データに誤差が生じた時、試料のみならず「測定機器によって誤差が生じたケース」を考慮しなければならないでしょう。

機器が校正されていないためデータの比較可能性が制限される

つまり「複数機器での比較可能性の制限」とは、統一された基準器が存在しない点に起因する「機器間のバイアス」を調整できないことによって生じる問題と言えます。

蛍光顕微鏡の場合、統一された基準が存在しません。
そのため、機器間のバイアスを取り除くことができず、データの比較が困難になる、あるいは制限されているという状況です。

まとめ

複数の機器によってデータを比較する場合、前提として「機器それ自体が統一された基準で校正されている」必要がある。しかし蛍光顕微鏡のデータ測定においては基準器が存在しないため、個々の蛍光顕微鏡によるバイアスを除去できない。
よって、複数機器におけるデータの比較可能性が制限される。

問題2機器の同一性を保証できない

上記【問題1】は、前提として「複数機器が統一された基準で校正されていないこと」が問題でしたが、この問題は、そもそも蛍光顕微鏡に基準器が存在しないことが原因と言えます。

さて、基準器が存在しない場合、機器間の性能・仕様の同一性を保証できないため、【問題1】のように「複数機器でのデータの比較」のみならず、「同一機器」でも、その性能・仕様に生じた「ずれ」を認識し修正することができません。

例えば、蛍光顕微鏡の照度が、従来の仕様の70%に落ちていたとしてもユーザは気づかないと言われています。
最新の蛍光顕微鏡は、多くの光学、機械および電気的部品で作られている複雑な機器です。機器のミスアライメント、誤動作または故障の可能性は、部品の数とともに増加します。

補足情報

レーザー走査型顕微鏡(共焦点、スピニングディスクなど)は、変化を受ける部品(ピエゾス テージ、ガルバノミラー、レーザー、光電子増倍管など)が多いという単純な理由で、広視野顕微鏡よりも性能・仕様が変動する傾向があります [1]

基準器がないということは、機器の性能・仕様を保つどころか、現状の認識すらできないため、時間の経過とともに機器の仕様にずれが生じた場合で、気づいて補正することができない状態と言えます。

となると【問題1】と同様に「機器の性能・仕様の同一性」が疑問視されます。

例えば、ある蛍光顕微鏡にて「X日に測定したデータ」と「Y日に測定したデータ」を比べるという場合も、機器それ自体が校正されていない以上、比較は難しいと言えます。

X日とY日における機器の同一性を保証できない

機器それ自体のバイアスが除去できない限り、複数機器での測定データの比較が難しいのはもちろんのこと、継時的データを比較する際も、データの正確性が疑問視されます。
よって「同一機器にて、時間をおいて測定されたデータ」ですら、比較が困難なのです。

校正基準の策定を目指して

機器固有のバイアスを除去できないことによって、

  • 【問題1】測定データの比較可能性が制限される
  • 【問題2】機器の同一性を保証できない

こうした問題が起こり、海外の蛍光顕微鏡ユーザたちの頭を悩ませてきました。

【問題1】複数の機器での比較可能性の制限については、複数の蛍光顕微鏡(それを保有する研究室、研究機関)間で共有される「共通の基準器」が存在しないことが原因です。
これに対し【問題2】機器の同一性を保証できないについては、蛍光顕微鏡の性能・仕様を継続的に管理・モニタリングしていく仕組みや方法が存在しないことに起因しています。

このため、海外の蛍光イメージングに関わる研究者たちは「蛍光顕微鏡の精度評価、品質管理をどのように行っていくか」、これを大きな課題としていました。

蛍光顕微鏡の性能評価と品質管理は、15年以上前に学術研究所や国家規制機関で取り上げられたトピックですが、2015年の第15回国際ELMI会議のコアファシリティサテライト会議のプログラムで触れられた通り、その件は現在に至るまで取り沙汰されています [2]

この件について「BAM/連邦材料研究および試験機関などの国立計量研究所」の論文 [3]では、蛍光イメージングにおけるデータの信頼性向上のため「機器の特性評価と典型的な蛍光測定の性能に関する国際的に認められたガイドラインの必要性」を強調しています。

  • 複数の蛍光顕微鏡を共通の基準器で校正することによるデータ比較時の機器バイアスの除去
  • 同一機器の精度評価・品質管理による継時的データの比較の実現

これらの課題を解消するため、世界は校正基準(ISO)の策定へと動き出しています。

これは、蛍光顕微鏡の性能・仕様の同一性を保証し、正確な蛍光イメージングを実現を目指す動きに他なりません。

今後、今年中(2019年)に、蛍光顕微鏡の品質管理について「確認すべき項目」が、明示される見通しです。

ガイドラインとして示されることが予想される「蛍光顕微鏡の品質管理に関わる項目」

  • 照明の均一性
  • 視野の歪み

こうした項目について蛍光顕微鏡を性能評価することで、蛍光顕微鏡のデータ測定の精度を上げ、各研究機関で比較できるように動き出しています。

こうした「確認すべき項目」のほとんどを、アルゴライト社の品質管理ツールで、カバーできるというのが、同社の見立てです。

では、具体的にアルゴライト社の「品質管理ツール」とはどのようなものなのでしょうか。

アルゴライトの革新的ツール

Argolight(アルゴライト)社は、蛍光顕微鏡における精度評価・品質管理の問題に対するソリューションを提供しています。(彼らがガイドラインの策定メンバーとして参加している理由も、蛍光イメージングにおける品質管理に貢献していることが一因と言えます。)

海外の蛍光顕微鏡ユーザにとっては、複数の機関・研究室と連携して蛍光データの比較するためには、機器それ自体の規格化が必要という認識がありました。

そこで、アルゴライトは「基準なき世界に基準を与える」という革新的なツールを提供しています。

それが「品質管理スライド」と「専用ソフトウェア」です。

品質管理スライド

品質管理スライドと蛍光パターン 品質管理スライドと蛍光パターン

品質管理スライドとは、特殊な「蛍光パターン」の埋め込まれたスライドガラスによって構成されています。

ガラス質内に埋め込まれた「蛍光パターン」は蛍光によって励起します。
蛍光励起した「蛍光パターン」を、蛍光顕微鏡で撮影します。

品質管理スライドを設置 スライドを設置する

撮影した蛍光パターンを専用ソフトウェアで分析します。

専用ソフトウェア

分析結果 専用ソフトウェアによる分析画像

撮影した蛍光パターンを専用ソフトウェアで分析します。
専用ソフトウェアの分析によって「照明強度の分布」や「スペクトルの応答性」などを定量化して評価することができます。
画像は「視野の歪み」についてソフトウェアで精度を分析している様子です。

データは数値として確認し、継続的にモニタリングしていくことができます。

データマネージャー データマネージャーによって継続管理が可能

校正の代替として、蛍光顕微鏡の性能・精度の可視化を可能にするのが、アルゴライトのソリューションです。

校正は「試験対象の機器によって得られた測定値」を「既知の精度の校正基準の値」と比較して行いますが、その際に、(一般的には)国家計量標準研究所の標準器または基準器を使用します。

標準器というツールを使って行われる校正。
これに対し、蛍光顕微鏡の品質管理はアルゴライトが提供する「品質管理スライド」と「専用ソフトウェア」を使って行うことができます。

校正基準が欠如している以上、蛍光顕微鏡の校正はできません。
しかし蛍光顕微鏡の性能を定量化した数値として割り出すことができれば「機器固有のバイアス」を可視化できます。

実際、海外の蛍光顕微鏡ユーザたちは、【問題1】や【問題2】への対応として、アルゴライトのソリューションを活用しています。

  • 【問題1】測定データの比較可能性が制限される
  • 【問題2】機器の同一性を保証できない

いわば、品質管理スライドと専用ソフトウェアが、標準器・基準器に代わるツールとして機能しているという状態です。

データの比較が可能に

測定データの比較が可能に

品質管理スライドが校正ツールの代替として機能するため、研究機関や研究室における複数機器を用いたデータの比較が可能です。

品質の継続的な管理が実現

品質の継続的なモニタリング

ソフトウェアによって、同一機器の精度・品質データを数値としてモニタリングできます。

【問題1】、【問題2】も「機器固有のバイアス」に起因しています。

「精度を評価し、品質を管理していくための、基準となるツールを使うこと」で研究機関の間(複数の蛍光顕微鏡間)における蛍光顕微鏡の測定データが統一されます。(【問題1】の解消)
さらに、アルゴライトの専用ソフトウェアを用いることで、蛍光顕微鏡の精度・品質を現すデータを継続的に管理していくことができます。
これによって、時間を置いて測定する場合も「蛍光顕微鏡の仕様に変化はない」とデータによって確認できるため、継時的データについても測定機器におけるバイアスを除去できます。(【問題2】の解消)

2019年、蛍光顕微鏡の校正基準(ISO)が定められる見通しです。

アルゴライト社のツールを用いることで、今年中に提示される「品質管理に関わる項目」のほとんどをカバーできると予想されます。

下記は、アルゴライト社のツールによってカバーできる検査項目です。

ソフトウェアで分析できる項目

照明強度の分布照明強度の分布
視野の歪み視野の歪み
共局在性共局在性
線広がり関数線広がり関数
分解能分解能
ステージ中心のずれステージ中心のずれ
Z軸のステージドリフトZ軸のステージドリフト
強度線形性強度線形性
スペクトル応答性スペクトル応答性

アルゴライト社のソフトウェアには独自のアルゴリズムが備わっており、これらの項目を定量化された数値によって示すことが可能です。

製品ページにて「視野の歪み」の性能評価について、具体的な測定例をご紹介しております。
興味がある方は、次のリンクよりご確認ください。

ソフトウェアを用いることで、今後ISOより提示される項目について、継続的に品質管理を行っていくことができます。

品質管理スライドとソフトウェアを用いることで、ISOによって提示される「確認すべき項目」を複数カバーできるため、アルゴスライドの有効性が今後さらに発揮されることでしょう。

品質管理スライド

品質管理スライド

製品情報

品質管理スライド(左)とソフトウェア(右)

アルゴライト社は蛍光顕微鏡の品質管理において革新的なツール「品質管理スライド」を提供しています。

  • 品質管理スライドに埋め込まれた「蛍光パターン」の詳細
  • ソフトウェアで分析可能なパラメータ

等、具体的な情報に関心がある方は「製品シリーズTOP」をご覧ください。(下記、ボタンより遷移できます。)

製品詳細はこちら

参考・引用

[1] A. Dixon, T. Heinlein and R. Wolleschensky, “Standardization and quality assurance in fluorescence measurements II(蛍光測定における標準化と品質保証 II),” Chapter 1, Springer- Verlag, Berlin Heidelberg (2008).

[2]Arnaud Royon, Noël Converset, “Quality Control of Fluorescence Imaging Systems(蛍光イメージングシステムの品質管理)”(最終閲覧日:2019年10月3日)

[3]Resch-Genger U, Hoffmann K, Nietfeld W, Engel A, Neukammer J, Nitschke R, Ebert B, Macdonald R, “How to improve quality assurance in fluorometry: fluorescence-inherent sources of error and suited fluorescence standards.(蛍光測定の品質保証を改善する方法:蛍光固有の誤差の原因と適切な蛍光標準)”(最終閲覧日:2019年10月3日)