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「スペクトル解析」は、分光スペクトルや音声スペクトルなどの大量のデータ(スペクトルデータ)から、データに含まれる情報を分析・抽出し、「成分の解析」や「状態の検査」などを行うの解析手法です。
本記事では、「スペクトル解析」の種類をご紹介した上で、主に分光スペクトル解析でわかることや実例などを解説します。
スペクトル解析の解析対象である「スペクトル」は、光や信号などの波を成分に分解し、成分毎の強度を見やすく配列したものです。
スペクトルには、光を波長毎に分解した「分光スペクトル」や、信号の波形を周波数成分に分解した「周波数スペクトル」などがあります。
スペクトルについて詳しく知りたい方におすすめの記事はこちらです。
→ スペクトルとは
スペクトル解析は、冒頭でも紹介したように「大量のデータ(スペクトルデータ)から、データに含まれる情報を分析・抽出して、”成分の解析”や”状態の検査”などを行う解析手法」です。
スペクトル解析の種類には、「分光スペクトル解析」と「周波数スペクトル解析」があり、それぞれで解析方法が異なります。
分光分析におけるスペクトル解析です。解析対象に光を当て、対象を透過した光、または対象から反射した光のスペクトルを測定・解析することで、対象の「材料の判別」や「含まれる成分の量」などを知ることができます。
分光スペクトル解析で使用するのは、主に主成分分析(PCA)やPLS回帰などの多変量解析です。多変量解析は、複数の変数が存在するデータから関連性を統計的に分析する手法で、複数の波長の光強度という大量の情報をもつ分光スペクトルデータと算出したい定量値の間の関係を紐解くことができます。
周波数分析におけるスペクトル解析です。例えば、音の信号の強さを測定し、それを周波数毎の強度に変更することで、通常状態とは異なる周波数帯の音の存在などの機器の異常を検知します。
使用する解析方法は、主にフーリエ変換です。フーリエ変換は、波の波形を複数の規則的な波(特定の周波数の波)に分解する手法で、音声データはフーリエ変換すると、各周波数の音の強度を得ることができます。
以降は、主に分光スペクトル解析に関して、スペクトル解析で分かることや、スペクトル解析の実例などを紹介します。
分光スペクトル解析でわかることは、主に「①物質の成分」と「②物質の含有率」の2つで、それぞれ別の解析手法を使用します。
分光スペクトル解析を行うことで、「吸収された光の波長から試料にどのような物質が含まれているか」を知ることができます。
これは、光が物質を通過・反射する際に、物質を構成する原子の振動・回転運動等のエネルギーと合致する光のエネルギーをもつ波長で光エネルギーが吸収されるためです。
原理的には、吸収された光の波長から物質の組成を同定することが可能ですが、同じ波長で光の吸収が起こる物質が複数存在するため、同定・分類したい物質のスペクトルをあらかじめ測定・解析し、物質の同定や分類を実現するのが一般的です。
この際に使用されるスペクトル解析は、多変量解析や機械学習の「分類」と呼ばれる手法です。
※原子・分子の吸収スペクトルは、データベースで調べることが可能です。(詳しくはこちら)
分光スペクトル解析を行うことで、「吸収された特定波長の光の量から成分の濃度」を知ることができます。
例えば、水(H2O)の場合には、O-Hの伸縮振動と変角振動による吸収帯である1940nm、H-O-Hの伸縮振動による吸収帯である2900nmやその半分の波長である1450nmに大きな光の吸収を持ちます。よって、それらの波長の光の吸収量から水分量を推定することができます。
こちらのスペクトル解析でも、あらかじめ各水分量のサンプルのスペクトルを測定し、解析することで光の吸収量と水分量の関係性を明らかにしておく手法が一般的です。
この際に使用さえるスペクトル解析は、多変量解析や機械学習の「回帰」と呼ばれる手法です。
スペクトル解析の回帰を用いることで”経年劣化の度合い”や、”濃度”なども定量値を求めることができます。
分光スペクトル解析は、最先端の研究から身近な場面まで様々な所で使用されています。 今回、分光スペクトル解析のイメージを持っていただくために、いくつか事例をご紹介します。
2021年に小惑星リュウグウから地球に戻ってきた「はやぶさ2」ですが、はやぶさ2に搭載されていた分光器の測定スペクトルや、はやぶさ2が持ち帰った試料の分光スペクトル解析により、以下のようなことがわかりました。
分光スペクトル解析が、地球の起源を解明するのに役立っていることがわかります。
1998年(平成10年)8月に発生した「和歌山カレー毒物混入事件」では、カレーの中に含まれていたヒ素と、容疑者宅で押収されたヒ素が(含まれている不純物まで含めて)同一のものかどうかという点が証拠の観点で重要になりました。
この解析には、大型放射線光施設の「Spring-8」にあるICP-AES(ICP発光分析)という特殊なスペクトル解析が用いられました。
解析の結果、100μm 径のヒ素の粒子 に含まれるBa,Sn,Sb,Bi,Mo などの微量不純物元素がppmレベルで同等であることがわかり,「組成上の特徴が同じヒ素」であると結論付けられました。
スーパーなどに並んでるトマトやリンゴのダンボールに”光センサー選別”という文字が書いてあるのを見かけたことはないでしょうか?
近年、農作物のブランド化に伴い、消費者の期待を裏切らないために「品質の担保」が重要となっています。 そこで活躍しているのが「光センサー選別」です。光センサー分別では、”分光スペクトル解析”によって非破壊で農作物の糖度などを計測・解析し、糖度などの厳しい規定を満たす農作物のみを出荷しています。
その他にも、オイルの劣化測定、色の判別、プラスティックの選別、などにも分光スペクトル解析が活躍しています。
分光スペクトル解析は、測定したスペクトルただ単に多変量解析するだけでなく、リファレンスの考慮や前処理など多変量解析が正しくできるようなスペクトルの加工も重要になります。 手順の詳細に関しては、「分光スペクトル解析の手順」にて、リファレンスの考慮や前処理を考慮した以下の4ステップについて詳しく紹介します。
分光スペクトル解析はこれまで大変専門性の高いものでしたが、計算機の性能向上、多変量解析ソフトウェアの改善、機械学習を用いたスペクトル解析ソフトの登場などにより、扱いやすいものになってきています。 また、分光スペクトル解析が検査の現場で使用されるケースが増えたため、現場のプログラムへの組み込みが容易になるモジュールの用意なども進んでいます。
分光器やハイパースペクトルカメラを多数取り扱うケイエルブイがお勧めするスペクトル解析ツールを2つご紹介します。
ご紹介する1つ目のソフトは、分光スペクトル解析に特化した多変量解析ソフトです。
データ入力から解析までが直感的なワークフローで実現可能な多変量解析ソフトです。
解析のスッテプ毎の機能がわかりやすくまとまっているので、ツール上のフローに従って作業を進めることで多変量解析が可能です。
また、PCA、PLS回帰は勿論のこと、以下のような様々な多変量解析に対応しています。
さらに、2023年8月頃には、VEKTOR DIRCTORに「ハイパースペクトル画像」の多変量解析に特化した機能が追加される予定です。
→多変量解析ツール VEKTOR DIREKTOR のスペクトル画像解析機能 紹介動画
次に紹介するのが、機械学習を用いて分光スペクトル解析を行うソフトウェアです。
自動運転や検査工程など「画像処理」の分野において実用化されている機械学習が、分光スペクトル画像解析の分野でも急速に発展しています。 そのような中でも、様々なスペクトルカメラベンダーと協力し、分光スペクトル解析の分野で多くの実績を残している「Perclass Mira」が代表的なツールです。
機械学習を用いた手法なので、分類したいものを色分けするだけで分類モデルを作成することが可能です。
14日間の無料体験版とサンプルデータもご用意していますので、お気軽にお問い合わせください。
→perClass Mira ハイパースペクトルデータ解析ソフトウェア(体験版)およびサンプルデータ集l
スペクトル解析は、取得・作成した分光スペクトルや音声スペクトルを解析し、データに含まれる情報から様々なことが解析できるという内容を紹介しました。
多変量解析を用いたペクトル解析を行うことで、「材料の判別」や「含まれる成分の量」を解析
フーリエ変換を用いたスペクトル解析を行うことで、「機器などの異常」を解析
ケイエルブイでは、分光スペクトル解析に必要な機器やソフトウェアを扱っており、分光に関する様々コンテンツをご提供しています。
スペクトル解析に関するお問い合わせは、以下からお願いします。
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