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分光スペクトル解析は、スペクトルデータから「物質」や「成分の割合」を判別・特定するための解析手法であり、多変量解析や機械学習が主に使用されます。 本記事では、実際にスペクトル解析を行うことを想定して、スペクトルの測定から多変量解析までの全体の大まかな流れを解説します。
今回取り扱う「スペクトル解析」は、分光スペクトルなどの大量のデータ(スペクトルデータ)から、データに含まれる情報を分析・抽出し、「成分の解析」や「状態の検査」などを行うの解析手法です。
スペクトル解析の詳細に関しては、以下の記事をご参照ください。 →「スペクトル解析とは?」をわかりやすく解説
ここからは、本題である「分光スペクトル解析を行う手順」を以下の4つのステップに分けて紹介していきます。
まず初めに、分光器やハイパースペクトルカメラを用いてスペクトルを測定します。
本記事ではスペクトルの測定方法に関して詳しく紹介しませんが、スペクトル測定には、”透過法”、”拡散反射法”、”全反射測定法”などがあり、これらを測定対象に合わせて適切に使い分けることでより精度の高いスペクトル解析を実現することができます。
スペクトル測定の詳細は、以下の記事をご参照ください。 →分光分析におけるスペクトル測定のコツ
正確な分光スペクトル解析を実施するためには、適切な「解析対象のスペクトル」の準備が不可欠です。この過程で特に重要な要素は、「①リファレンススペクトルの考慮」、「②ダークノイズの考慮」、「③ピンクノイズの考慮」です。 これらの要素は、通常測定時に考慮され、スペクトルが得られることが一般的ですが、スペクトル解析手順として非常に重要なため、測定とは別に説明を行います。
一般的に、測定したスペクトルには、”光源のスペクトル”、”媒体が吸収したスペクトル”、”解析対象が吸収したスペクトル”の3つの要素が含まれています。
解析に用いるのはこのうち、”解析対象が吸収したスペクトル”なので、測定したスペクトルの”光源のスペクトル”と”媒体が吸収したスペクトル”の影響を除く必要があります。
その方法として一般的に使用されるのが吸光度(A)で、”光源のスペクトル”と”媒体が吸収したスペクトル”をあらかじめ”リファレンススペクトル”として取得し、「”測定スペクトル”と”リファレンススペクトル”の比」で求めます。
そして、リファレンススペクトルを取得する際に注意するべきなのが、測定対象に応じて、取得するべき”リファレンススペクトル”の内容が変わるという点です。 例えば、大気中で吸収スペクトルを測定する場合には、”解析対象をおく前の大気のスペクトル”がリファレンススペクトルに、水に溶けた溶剤の吸収スペクトルを測定する場合には、”溶剤を溶かす前の水のスペクトル”がリファレンススペクトルになります。
また、同じ光源を使用していても光源の個体差や劣化によりスペクトルが変わる場合があるので、リファレンススペクトルの取得はスペクトル測定の直前に行うのが望ましいです。
ダークノイズは、分光器のセンサーから発生するノイズなど、光の測定に直接関係しないところで発生するノイズです。このノイズにより、測定スペクトルの信号対ノイズ比(SN比)が低下してしまいます。
このノイズを考慮するためには、分光器への光を遮断した状態のダークスペクトルを測定し、これを測定スペクトルとリファレンススペクトルのぞれぞれから減算して使用する必要があります。
ダークスペクトルは、温度などの影響を受ける事や、積分時間などの条件によって変わることから、スペクトルを測定する条件に合わせて測定する必要があります。
ピンクノイズは、電子機器の電圧変動などによって発生する長周期で発生するノイズです。
このノイズを考慮するためには、測定時の測定時間(積分時間)を増やすほかに、複数回の測定結果の平均値を解析に使用する方法があります。
”解析対象のスペクトル”を取得したら、スペクトル波形を多変量解析などで解析しやすいように「前処理」します。
前処理は、データの分析を行う前に実行する処理すべてを指します。代表的な前処理には、平滑化、1次微分フィルタ、2次微分フィルタなどがあり、取得したスペクトルデータの内容によってこれらを選択・併用する必要があります。
以下に、スペクトル解析における平滑化、微分フィルタに関して紹介します。
平滑化の主な目的は、解析対象のスペクトルに含まれたノイズを取り除くことです。
スペクトル解析の平滑化の代表的な手法であるSavitzky-Golay平滑化は、指定した区間に多項式を当てはめて算出した値を採用する中央移動平均に類似した手法です。
指定区間を広く取る方が平滑化されますが、平滑化を実行しすぎると必要な情報まで消えてしまうため注意が必要です。 また、当てはめる多項式の次数は大きい方が元のデータに沿った波形になりますが、その分スムージングの効果は低くなります。 実際に平滑化を行う際には、結果を見ながらトレードオフを考慮した上で適切なパラメータを選択することが重要です。
微分は傾きを求める処理です。 1次微分フィルタは、スペクトルの変化(傾き)が大きい箇所を抽出します。 2次微分フィルタは、1次微分の傾きを求めるため、スペクトルの変化量の変化が大きい箇所を抽出することができます。
分光スペクトルは、複数の波長ピークが重なった波形として出てきます。1次微分や2次微分のようにスペクトルの変化を抽出すると、このような1つにまとまった波形から重なっている波長のピークを分離することができるという点がポイントです。
前処理を行ったスペクトル波形に対して、多変量解析を実施して、データから特徴を抽出します。
多変量解析は、人間が直接には扱うことができないような大量のデータから判別や予測を行うための情報を抽出できるため、複数の波長のデータを扱うスペクトル解析との相性がよく、スペクトル解析専用の多変量解析ツールも多数存在します。
スペクトル解析における多変量解析は、用途で大きく"物質の成分の同定・分類”、”物質の含有率の測定”に分かれ、それぞれ解析手法が異なります。
スペクトル解析で分類を行う際には、主に多変量解析における”判別”手法である主成分分析が用いられます。
スペクトル解析の主成分分析では、複数の波長の光強度という大量のデータを、より少ない主成分という変数に統合します。そして、新たに設定した変数で2次元・3次元プロットを作成し、そのグラフのどこにプロットされるかで分類などを行います。
スペクトル解析で定量値の測定を行う際には、主に多変量解析における”予測”手法である回帰解析が用いられます。
スペクトル解析のPLS回帰解析では、主成分分析と同様に複数の波長の光強度といいう大量のデータを主成分に統合し、主成分と目的変数を2次元プロットした回帰直線を導き出すことで、データから主成分の値を算出すれば、目的変数がわかるという環境を構築します。
ケイエルブイでは、分光器、ハイパースペクトルカメラなどの測定機器およびスペクトル解析ソフトウェアと取り扱っています。
データ入力から解析までが直感的なワークフローで実現可能な多変量解析ソフトです。
解析のスッテプ毎の機能がわかりやすくまとまっているので、ツール上のフローに従って作業を進めることで多変量解析が可能です。
また、PCA、PLS回帰は勿論のこと、以下のような様々な多変量解析に対応しています。
さらに、2023年8月頃には、VEKTOR DIRCTORに「ハイパースペクトル画像」の多変量解析に特化した機能が追加される予定です。
→多変量解析ツール VEKTOR DIREKTOR のスペクトル画像解析機能 紹介動画
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