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蛍光測定・蛍光観察とは

蛍光測定・蛍光観察は、通常では目に見えないものを特定の波長の光を当てることで可視化する測定方法です。

現在、顕微鏡観察や分光蛍光計測、傷の探索などアカデミックな分野から産業分野までの様々な場面で蛍光が活用しています。
ただし、蛍光測定・蛍光観察はただ光っている物体を確認すればいいというわけではありません。測定条件や光源、蛍光体の選択など蛍光測定には気を付けるべきポイントがあります。

この記事では蛍光測定・蛍光観察のポイント、用途を幅広く紹介していきます。

蛍光について

そもそも、蛍光とはなんでしょうか。

蛍光とは、”広義には、ルミネセンスのうち、電子の励起源として、エネルギーの高い短波長の光(電磁波)を照射することにより生じる発光を指す(フォトルミネセンス)。” 

Wikipediaより

つまり、光からエネルギーを得て、その物体自身が発光する現象のことです。

この蛍光の原理をわかりやすく図で説明します。

  1. 蛍光特性を持つ物質(蛍光体といいます)に特定の波長の光(励起光)を当てると、蛍光体は励起状態となる。
  2. 励起状態は蛍光体が高いエネルギーを持ち不安定な状態なので、やがて蛍光体は元の状態に戻ろうとする。
  3. 励起状態から元の状態に戻る際に特定の波長の光(蛍光)を放出する。
蛍光とは

図:蛍光現象の仕組み

蛍光測定と蛍光観察

前述した「蛍光」を利用した観察の方法には、蛍光測定と蛍光観察があります。

  • 蛍光測定:分光器などを用いて蛍光している物体の発光量を定量的に測定する方法
  • 蛍光観察:顕微鏡などを用いて蛍光している物体を観察する方法

※ハイパースペクトルカメラという2次元で分光情報を取得できるカメラを使用すると、蛍光観察を定量的に実施することも可能です。

ハイパースペクトルカメラとは


言葉では違いがわかりにくいと思いますので、蛍光観察と蛍光測定のそれぞれを例を用いて紹介していきます。

蛍光測定の例

蛍光特性を持つ物質は私たちの身近に存在します。

ビタミンB2測定

栄養ドリンクなどに含まれるビタミンB2(リボフラビン)は365nmの励起光を照射すると 530nmの蛍光を放出します。
栄養ドリンクにブラックライトを当てると光るのはこのためです。

この原理を利用すると対象物に含まれるビタミンB2の含有量を蛍光測定で計測する事が可能です。

ビタミンB2組成

ビタミンB2蛍光スペクトル

グラフ:栄養ドリンク中のビタミンB2の蛍光スペクトル

クロロフィル測定

植物の葉に含まれている光合成を行う物質で400nm付近の励起光を照射すると690, 740nm付近に蛍光を放出します。

クロロフィル濃度はNDVI(正規化植生指数)に関係があるためクロロフィルの蛍光を測定することで植物の生育度合いを蛍光測定で計測することが可能です。

クロロフィル組成

ビタミン蛍光スペクトル

グラフ:植物の葉のクロロフィルの蛍光スペクトル

蛍光観察の例

蛍光顕微鏡

細胞など生体観察を行う際に、特定の対象物に付着するように設計された蛍光体を使用します。そして、その蛍光体に励起光を照射した際にターゲットがどのように分布、挙動してゆくかを観察します。

通常の観察(明視野観察)と比較すると、3次元的な構造や微小な部位などより鮮明に対象物をとらえることが出来ます。

蛍光観察イメージ

例えば、フルオレセイン(蛍光体)は細胞内タンパク質の第1級アミンと結合します。よってタンパク質に結合したフルオレセインに494nmのアルゴンレーザーを当てることで、細胞内のタンパク質の構造を521nmの蛍光で観察することが出来ます。

蛍光浸透探傷(傷検査)

金属製品の傷を探す際に使用される技術です。
蛍光塗料を部品に塗布し、水で洗った後ブラックライトを当てると傷部分に入り込んで残った蛍光塗料が光るため視覚的に傷の有無を確認することが出来ます。



蛍光観察、蛍光測定で気を付けるべきポイント

蛍光観察、蛍光測定で気をつけるべきポイントは以下の3点です。

ポイント1 励起波長

まず、観察したい対象物がどのような励起波長をもっているかを確認する必要があります。
このような情報は、学術論文やインターネットに多く存在します。
また、蛍光体に関しては、各メーカーのHPが参考になります。

励起波長が複数存在する場合には、励起効率が最も高い波長を選択することで、より強い蛍光が得られ信頼性の高い蛍光測定に繋がります。

励起光源について

励起光には特定の波長のみを出力できるLEDやレーザー、水銀ランプが使用されます。
顕微鏡の場合はフィルターセットと組み合わせることで適切な励起波長の光だけ透過させて照射出来るためキセノンランプや白色LEDなどブロードな波長をもった光源も使用されます。


ポイント2 蛍光波長(蛍光フィルタ)

励起波長を当てた際にどの波長で蛍光するかを確認する必要があります。

蛍光測定の場合

自分が測定したい蛍光波長を測定波長範囲に含む分光器を選択します。
励起波長と蛍光波長が非常に近い場合は、分解能の高い分光器を選ぶことで励起波長と蛍光波長を切り分けて測定することが可能です。

蛍光観察の場合

顕微鏡において、蛍光試薬にあったフィルターセットを選択することで外乱光などのノイズをカットして蛍光波長のみの画像を得ることが可能です。


ポイント3 明るさ

蛍光が弱い場合はノイズの影響を強く受けるため信頼性の高いデータが得られません。
信頼性の高いデータを得るためには、なるべく明るい蛍光を測定する必要があります。

明るい蛍光を得る方法としては、「①励起光を強くする」、「②蛍光効率の高い励起波長を選択する」が有効です。
それでも明るさが足りない場合は、「分光器の露光時間(測定時間)を上げる」、「S/Nの高い分光器選択する」などの工夫が必要になります。
ゲインを上げるとノイズも増幅するため有効な解決策にはなりません。

また、明るさを強くすることは、信頼性に対してメリットがありますが、サンプルへのダメージが増えたり、蛍光体などは劣化のスピードが早くなるなどのデメリットもあります。



最後に

ここまで蛍光の仕組みや実際に測定する際に必要なポイントについて説明いたしましたが、測定に関して、光源の選定や測定器(分光器)などの選定が重要になります。
ケイエルブイでは、蛍光測定に関連する製品を取り扱っていますので、ぜひお問い合わせください。

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