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蛍光測定・蛍光観察は、通常では目に見えないものを特定の波長の光を当てることで可視化する測定方法です。
現在、顕微鏡観察や分光蛍光計測、傷の探索などアカデミックな分野から産業分野までの様々な場面で蛍光が活用しています。 ただし、蛍光測定・蛍光観察はただ光っている物体を確認すればいいというわけではありません。測定条件や光源、蛍光体の選択など蛍光測定には気を付けるべきポイントがあります。
この記事では蛍光測定・蛍光観察のポイント、用途を幅広く紹介していきます。
そもそも、蛍光とはなんでしょうか。
蛍光とは、”広義には、ルミネセンスのうち、電子の励起源として、エネルギーの高い短波長の光(電磁波)を照射することにより生じる発光を指す(フォトルミネセンス)。”
Wikipediaより
つまり、光からエネルギーを得て、その物体自身が発光する現象のことです。
この蛍光の原理をわかりやすく図で説明します。
図:蛍光現象の仕組み
前述した「蛍光」を利用した観察の方法には、蛍光測定と蛍光観察があります。
※ハイパースペクトルカメラという2次元で分光情報を取得できるカメラを使用すると、蛍光観察を定量的に実施することも可能です。
→ハイパースペクトルカメラとは
言葉では違いがわかりにくいと思いますので、蛍光観察と蛍光測定のそれぞれを例を用いて紹介していきます。
蛍光特性を持つ物質は私たちの身近に存在します。
栄養ドリンクなどに含まれるビタミンB2(リボフラビン)は365nmの励起光を照射すると 530nmの蛍光を放出します。 栄養ドリンクにブラックライトを当てると光るのはこのためです。
この原理を利用すると対象物に含まれるビタミンB2の含有量を蛍光測定で計測する事が可能です。
グラフ:栄養ドリンク中のビタミンB2の蛍光スペクトル
植物の葉に含まれている光合成を行う物質で400nm付近の励起光を照射すると690, 740nm付近に蛍光を放出します。
クロロフィル濃度はNDVI(正規化植生指数)に関係があるためクロロフィルの蛍光を測定することで植物の生育度合いを蛍光測定で計測することが可能です。
グラフ:植物の葉のクロロフィルの蛍光スペクトル
細胞など生体観察を行う際に、特定の対象物に付着するように設計された蛍光体を使用します。そして、その蛍光体に励起光を照射した際にターゲットがどのように分布、挙動してゆくかを観察します。
通常の観察(明視野観察)と比較すると、3次元的な構造や微小な部位などより鮮明に対象物をとらえることが出来ます。
例えば、フルオレセイン(蛍光体)は細胞内タンパク質の第1級アミンと結合します。よってタンパク質に結合したフルオレセインに494nmのアルゴンレーザーを当てることで、細胞内のタンパク質の構造を521nmの蛍光で観察することが出来ます。
金属製品の傷を探す際に使用される技術です。 蛍光塗料を部品に塗布し、水で洗った後ブラックライトを当てると傷部分に入り込んで残った蛍光塗料が光るため視覚的に傷の有無を確認することが出来ます。
蛍光観察、蛍光測定で気をつけるべきポイントは以下の3点です。
まず、観察したい対象物がどのような励起波長をもっているかを確認する必要があります。 このような情報は、学術論文やインターネットに多く存在します。 また、蛍光体に関しては、各メーカーのHPが参考になります。
励起波長が複数存在する場合には、励起効率が最も高い波長を選択することで、より強い蛍光が得られ信頼性の高い蛍光測定に繋がります。
励起光には特定の波長のみを出力できるLEDやレーザー、水銀ランプが使用されます。 顕微鏡の場合はフィルターセットと組み合わせることで適切な励起波長の光だけ透過させて照射出来るためキセノンランプや白色LEDなどブロードな波長をもった光源も使用されます。
励起波長を当てた際にどの波長で蛍光するかを確認する必要があります。
自分が測定したい蛍光波長を測定波長範囲に含む分光器を選択します。 励起波長と蛍光波長が非常に近い場合は、分解能の高い分光器を選ぶことで励起波長と蛍光波長を切り分けて測定することが可能です。
顕微鏡において、蛍光試薬にあったフィルターセットを選択することで外乱光などのノイズをカットして蛍光波長のみの画像を得ることが可能です。
蛍光が弱い場合はノイズの影響を強く受けるため信頼性の高いデータが得られません。 信頼性の高いデータを得るためには、なるべく明るい蛍光を測定する必要があります。
明るい蛍光を得る方法としては、「①励起光を強くする」、「②蛍光効率の高い励起波長を選択する」が有効です。 それでも明るさが足りない場合は、「分光器の露光時間(測定時間)を上げる」、「S/Nの高い分光器選択する」などの工夫が必要になります。 ゲインを上げるとノイズも増幅するため有効な解決策にはなりません。
また、明るさを強くすることは、信頼性に対してメリットがありますが、サンプルへのダメージが増えたり、蛍光体などは劣化のスピードが早くなるなどのデメリットもあります。
ここまで蛍光の仕組みや実際に測定する際に必要なポイントについて説明いたしましたが、測定に関して、光源の選定や測定器(分光器)などの選定が重要になります。 ケイエルブイでは、蛍光測定に関連する製品を取り扱っていますので、ぜひお問い合わせください。
蛍光測定や蛍光観察を行うために必要な光源、分光器、ファイバー、アクセサリーのセットです。
光路長10mmの多目的キュベットホルダーに蛍光反応する液体をセットして分光分析(蛍光測定)ができるセットです。 多目的キュベットホルダーは、コリメートレンズで集光が可能なため、低照度の蛍光でも高精度で測定できます。
蛍光測定や蛍光観察では、励起波長にあわせた光源が必要なので、光源には”波長の選択性”が必要になります。また、安定した測定を行うためには、高い”安定性”が求められます。
温度制御機能により、高安定な光を実現するマルチチャネルLED光源です。中心波長が405、450、500、520、615、630nm、白色(6500K、4000K)のLEDを最大4個まで組み合わせることが可能であり、蛍光励起用光源としてご使用いただけます。
蛍光測定では、蛍光を定量的に測定するために、蛍光波長をカバーする分光器が必要です。
波長範囲:380nm~750nmと可視領域全体をカバーしており、携帯アプリでチェックが簡単な人気の小型分光器です。アタッチメントを複数準備しており、レーザーアタッチメントを使用すると「励起光の出力」と「蛍光の測定」の両方を1台で実現することも可能です。
蛍光観察をこなう場合には、蛍光顕微鏡を用います。このとき蛍光波長のみを取り出す方法としてフィルターを用いるのが一般的ですが、ハイパースペクトルカメラを使用すると、各画素に対して、各波長の強度を測定できるため、「蛍光画像の定量化」や「複数の特定波長を抜き出しての観察」など様々なメリットがあります。
顕微鏡にCマウントでそのまま接続できるタイプのハイパースペクトルカメラです。ケイエルブイでは、デモ機をご用意していますので、お問い合わせください。
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