分子レベルでも同じことが言えます。
水(H2O)もまた光を反射・吸収・透過しています。
分光器の用途を徹底解説!
成分分析と分光スペクトルデータ
2021.01.28 | アプリケーション, 分光器
今回は分光器の「用途」にスポットを当てて解説していきます。
分光器は光の電磁波スペクトルを測定します。測定データは「波長」と「強度」という形で表されます。
平たく言うと、分光器に「できること」は、分光して波長の強度を測定すること、なのですが、他方で用途は「食品分析」や「薬品の分析」など多種多様です。
分光器にできること
用途
分光器にできることは「分光と測定」であり、測定データは波長ごとの強度がわかる分光スペクトルデータです。
測定データがどのように「用途」につながるのか?
今回はこの点にフォーカスしてスペクトル分析についてお伝えいたします。
分光器の用途
まずは分光器の用途からみていきましょう。
分光器は、気体、固体、液体の成分分析ができます。(もちろん、測定対象の得意不得意はそれぞれの機器や測定波長、測定方法などによって異なります。)
気体の成分分析
例:ガスの二酸化炭素濃度
個体の成分分析
例:青果物の糖分分析
液体の成分分析
例:牛乳の脂肪分分析
分光器によって「成分分析」が可能ですので、ここから品質管理やモニタリングなど様々な用途に広がります。
分光器による成分分析を利用した個別の用途についてみていきましょう。
品質管理
品質管理の場面でも成分分析は有効です。
例えば、近赤外分光器を用いることで、医薬品における3つの主成分(API、乳糖、微結晶性セルロース)をリアルタイムでモニタリングできます。
これは医薬品という「個体の成分分析」に他なりません。
モニタリング
気体の成分分析が有効に機能する場面は「工場のモニタリング」です。
分光器を用いることで気体の成分分析も可能なため、工場のモニタリングに用いるセンサーとしても分光器は有効に機能します。
含量分析
ここまで成分分析については「何が入っているか」という点にフォーカスして解説してきましたが、実は「どのくらい入っているか」という「含量」も分析できます。
実際に分光器を用いることで「ミルクの脂肪含量」を測定できます。
非破壊測定
個体の成分分析からもう一つ「野菜の成分分析」の例をご紹介します。
分光器は、光を対象に照射してその反応から分析するため、対象を「非破壊」で測定できます。
分光器による非破壊での青果物の品質測定が注目を集めています。
青果物の品質を非破壊で測定する手段として,迅速な分析が可能である非破壊近赤外分光法が注目されている。その方法は,流通現場では,柑橘やリンゴ,メロン,モモなどの果樹や野菜の果菜類における糖度の測定に利用されておりそれらの果実の糖度を非破壊で計測してから市場に出荷することができるため,販売の際に果実の糖度を保証することができる。
参考:元木悟, 染谷美和, 樋口洋子, 森本進, 藤尾拓也, 池浦博美「可視・近赤外分光法によるミニトマトの糖度およびリコペン含量の非破壊計測」(最終閲覧日:2021年1月27日)
また論文では、可視・近赤外分光法によって大玉、中玉トマトの糖度とリコペン含量の非破壊測定が可能であることが報告されています。
トマトを始め、分光器では野菜や果物等の非破壊測定による成分分析が可能です。
判別
物質中に含まれる成分を分析したり、その含量を測定できるということは、同じ物と違う物を「判別」できるということを意味します。
分光器を用いた「液体の判別」用途としては、通常のオイルと劣化したオイルの判別が考えられます。
これまで紹介した用途の関連リンク
分光スペクトルデータから「成分」がわかる理由
例えば「分光器で水分量を測定したい」というシーン。
水は分子で表すと「H2O」ですので、測定対象に含まれるH2Oを分光器が測定するのかというと違います。
分光器が測定できるのはあくまで「光」であり、その電磁波スペクトルです。
つまり分光器はスペクトルの情報から水分量を割り出していることになりますが、一体どうして「光の測定」で「水分」がわかるのでしょうか?
物質特有の波長がある!
私たちの身の回りの物質は光を吸収したり反射したり、透過したりしています。
簡単な例で言うと「日焼け止めクリーム」です。私たちが紫外線という光を肌に「吸収」しないように、紫外線をカットする=「反射」するのが日焼け止めクリームです。
人間だけでなく、物質もまた、光を反射したり、吸収したり、透過したりしています。
実は物質が「吸収する波長」は、物質ごとに決まっています。
つまり水分子と二酸化炭素分子では、それぞれ「吸収する波長が違う」と言うことです。
例えば水分子の場合は1450nm、1940nm、2900nmの波長の光を特に吸収します。
これが「分光スペクトルデータ」から「成分」がわかるカラクリです。
物質ごとに吸収する光の波長が違う
水(H2O)の場合、1450nm、1940nm、2900nmの波長の光を吸収する
波長を見れば「成分」がわかる
1940nmの波長の強度が小さい=測定対象に水分が含まれているため光が吸収された
分光スペクトルデータの見方
例えば、水分の存在を知りたい場合、水(H2O)が吸収する1450nm、1940nm、2900nmの波長の強度を見ます。
分光器の測定データは、
- 横軸:波長
- 縦軸:強度
となっています。
水分が存在する場合、水分子(H2O)が「1450nm、1940nm、2900nmの波長」の波長の光を吸収しているため、データにはそれが現れます。
分光器は「波長の強度」を測定しているため、水分子に吸収された分、検出される波長の強度は弱くなっていると言うことです。
分光器の用途は広がり続ける
水分分析はほんの一例に過ぎません。
分光器で測定した「波長」と「強度」を見ることで、より多くの情報が分かります。
IoT製品への組み込みが想定された製品が開発されるなど、テクノロジーの発展に合わせた分光器も登場しています。
製品のご紹介
こちらの2製品は弊社取扱製品の中でも特に「アプリケーション(用途例)」が充実しております。
製品の用途を知りたい方もご確認ください。
超小型 近赤外分光センサモジュール
重さ15g、大きさ25×25×17mmの小型分光器です。
工業環境に完全対応しており、携帯機器として、また食品業界や農業、製薬、その他の市場の生産ラインの組み込み用として最適です。
有機半導体分光センサ
超小型・軽量のモノシリックセンサーチップです。400~1800nmの範囲の選択された波長の光を取り込むことができるため、 分光法で一般的に用いられているシリコンとInGaAsの波長範囲を単一のセンサーチップでカバーしています。
製品詳細中赤外分光システム IR Sphinx ATR:全反射測定タイプ
オイル分析に強みを持つ製品です。独自開発のソフトウェアにより分析・測定がスムーズに実現。電池式で可動部はなく、手軽に持ち運びできるよう設計されている可搬性の高さも。
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