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光通信技術の発展を支えるレーザーの役割と種類

2023.05.22 | 

遠く離れた外国のデータを瞬時に手に入れられるのは、光通信技術の発達によるものです。
本記事では、光ファイバーを用いた光通信技術に密接に関係する「レーザーの役割と種類」について解説します。

光通信とは

通信とは、情報・データを送ること、送られたデータ等を受け取ることを指します。
身近な通信手段としては郵便、電話、メール等色々あります。
例えば、電話は送信側が話した言葉(データ)を、電気信号として伝送路を介し、受信側で受け取る仕組みになっています。

この伝送路は、昔は金属のケーブル(メタルケーブル)でしたが、今は光ファイバーが用いられています。
このように伝送媒体として光ファイバーを利用した通信方式を一般的に「光通信」といいます。
ただし、広義では、「光の点滅で情報をやり取りしていれば光通信」と解釈され、光ファイバーを用いない「光無線LAN」も光通信の一種とされます。

光通信のしくみ

通信では、言葉をそのままではなく「デジタル変調」と呼ばれる電気の'0'、'1'信号、つまりon/off信号に変換して伝送します。

伝送路がメタルケーブルであればデータを電気信号のまま伝送できますが、光ファイバー通信では、光信号を伝送するため電気を光に変換する必要があります。

下図は、光ファイバー通信のしくみの概略図です。

光ファイバー通信のしくみ

送信機には光源があり、送信するデータである電気信号を光信号に変換(光変調)します。
わかりやすく説明すると、電気のon/off信号が光のhigh/low信号(点滅)に変換されるということです。

光信号は光ファイバーを伝送します。受信側で、受信機内の受光素子で光信号を受け取り、再び電気信号に変換されます。受光素子にはフォトダイオードが用いられています。

光通信におけるレーザーの役割

通信手段はできるだけ遠くまで、速く、たくさんの情報をやり取りできるように、長距離、高速、大容量通信を目標に進歩を続けています。

光通信の要となる光ファイバーにとって最適なレーザー

長距離の通信が可能となるには、光ファイバー内を伝送する光信号ができるだけ減衰しないことが求められます。レーザー光は位相が揃っておりコヒーレンスが高いため、光ファイバー通信にはレーザーが用いられます。

光ファイバー通信の光源には半導体レーザーが最適

先に述べたように、光ファイバー通信のしくみでは、送信機に光源が必須です。
光ファイバー内は光信号が伝送されますが、お手元のスマホもPCも見ての通り電気信号で動いています。つまり電気信号から光信号に変換することができる小型のデバイスが送信機内部に使用されているということです。
そこで、電流駆動する光源として「半導体レーザー」が選ばれます。
半導体レーザーに流す電流を変化させることで光を変調することもできます。しかし、高速信号になると直接変調させるのは難しいため、実際には、半導体レーザーからの出力を一定にして光変調器で光の強度を変化させている場合が多いです。

光信号の増幅にも半導体レーザー

メタルケーブルに比べ低損失な光ファイバーですが、長距離を伝送する間には光強度は減衰します。陸上の基幹系システムでは、その伝送損失の対策として約80km毎に中継器を設置して光信号を増幅していましたが、近年は光ファイバー伝送路に光ファイバー増幅器を設けることがほとんどです。
光ファイバー増幅器を用いることで、伝送されてきた光信号を電気信号に変換することなく増幅できます。この光ファイバー増幅器内においても半導体レーザーが使われています。

光通信に用いられるレーザーの種類

光通信用として空間伝搬方式に、気体レーザーが使われることもありますが、主要である光ファイバー通信では「半導体レーザー」が用いられています。
半導体レーザーにもいくつか種類がありますが、通信用途として主に用いられるのが、「FPレーザー」と「DFBレーザー」です。

>>【図解】レーザーダイオード(半導体レーザー)とは (特徴と選び方)

>>レーザーダイオードの製品

FPレーザー(Fabry-Perot Laser)

FPレーザーは、活性層をそれぞれ異なる物質からなるp型とn型の半導体で挟み込んだダブルヘテロ構造をしています。

  • 活性層の屈折率はそれを挟む半導体層よりも高く設計することで、活性層内に光を閉じ込めます。
  • 活性層の両端面をへき開面にして、光を反射させます。

このようにすることで、ファブリペロー共振器を形成したのがFPレーザーです。

FPレーザーに限りませんが半導体レーザーを考えるとき、活性層を「発光層」、その両側のキャリア供給層は光を閉じ込めることから「p型クラッド層」と「n型クラッド層」と呼ばれます。

最もシンプルといわれたFPレーザーも、今では活性層に量子井戸構造を応用した多重量子井戸(MQW:multi quantum well)構造にするなど、より効率よく微小な電流で発光が実現できるようになっています。

短距離の通信や機器間の接続には光のモードが問題になることはないので、より安価なFPレーザーが好んで使われます。

光通信においては、縦マルチモードの光を伝送すると、ファイバーの波長分散特性(ファイバー内を進む速さが波長により異なる)のためにデータが劣化してしまいます。すなわち、伝送距離や伝送速度の制約が大きくなるので、長距離で大容量の光通信には向いていません。

DFBレーザー(Distributed Feedback Laser)

DFBレーザーは分布帰還型と呼ばれ、DSMレーザー(Dynamic Single Mode Laser)の1種類です。
FPレーザーのように活性層をp型とn型の半導体で挟み込んではいるのですが、活性層に周期的な凹凸(グレーティング)構造を形成しています。
この凹凸構造が回折格子として機能します。
屈折率も周期的に変化しているため、反射されてくる光の位相が合ったところの波長において、ブラッグ反射により反射率が高くなってレーザー発振します。その発振波長は回折格子の周期でほとんど決定されます。

このようにDFBレーザーから得られた光は、縦モードを制御し特定の波長のみが増幅された縦シングルモードです。またコヒーレンスの高い光になります。
したがって、DFBレーザーは、FPレーザーに比べるとスペクトル幅も小さく、損失が少なく、伝送速度が大きい光通信に向いています。

下表に、FPレーザーとDFBレーザーの特徴をまとめています。

FPレーザーとDFBレーザーの特徴

光通信ネットワークと半導体レーザ

以上説明してきた光通信のしくみは実際に光通信ネットワークとして使われています。ネットワークで用いられる半導体レーザーについて紹介します。

光通信ネットワーク

下図は全世界に渡る光通信ネットワークの一部です。図に示したように、日本における光通信ネットワークは、コアネットワーク(基幹系)とアクセスネットワーク、それらをつなぐメトロネットワークから成り立っています。国外のネットワークとは光海底ケーブルでつながれています。

光通信ネットワーク

最も身近である家庭やオフィス等のユーザと通信設備センタを結ぶネットワークは、アクセスネットワークと呼ばれます。アクセスネットワーク内は、短距離の通信です。家庭内に置かれているモデムでは、前述した光ファイバー通信のしくみが使われています。

メトロネットワークは、アクセスネットワークのセンタ同士を結ぶネットワークで、日本でいうとほぼ都道府県内のネットワークといったイメージになります。メトロネットワークでは、扱うデータ量もアクセスネットワークに比べて多くなり、データの伝送距離も長くなります。そのため、伝送中に光信号の増幅が必要になります。

コアネットワークに至っては、基幹系またはバックボーンと言われるように大容量データが伝送する規模の大きな通信ネットワークとなっています。

このように光通信ネットワークは階層に分かれていて、それぞれのネットワークに応じた光伝送システムが構築されています。

伝送距離に応じて選択される半導体レーザー

ここでは一例として、半導体レーザーの波長について取り上げます。

光通信における波長そのものは、伝送路である光ファイバーに依存して決まります。
現実的ですが、光ファイバー内での光損失が少なく、半導体レーザーやフォトダイオードが製造できる波長を用いるしかありません。具体的には、0.85μm帯、1.3μm帯、1.5um帯の3つです。

大容量かつ長距離伝送となる光海底ケーブルやコアネットワークでは、波長が安定していることが重要ですので、1.5um帯(1.5~1.65μm)の動的単一モードレーザー(DSMレーザー)を使います。また、構造としては発光領域を多数並べた半導体レーザー(レーザーアレイ)が使われています。

中距離伝送であるメトロネットワーク、アクセスネットワークでは、1.5um帯DSMレーザーも使われますが、1.3μm帯の単一波長レーザーも使用されています。中距離伝送では、光変調を考慮した半導体レーザーが選定されます。

機器間接続などの近距離伝送用に使われるのが、0.85μm帯FPレーザーです。接続しやすいものが好まれ、温度特性のよい面発光レーザーが使用されています。

今回の記事では、光ファイバー通信のしくみとそれに欠かせない光源である半導体レーザーに注目しました。また、長距離伝送時に必要となる光増幅器内にも半導体レーザーが用いられているように、光通信ネットワークの要所でも重宝されているのが半導体レーザーなのです。

<参考文献>

  • すべてが解る!光ファイバ通信 編著 久保園浩明 一般社団法人電気通信協会発行 株式会社オーム社
  • 入門光ファイバ通信工学 村上泰司 株式会社コロナ社
  • 光ファイバ通信入門 末松安榛 株式会社オーム社
  • 応用物理学シリーズ 半導体レーザ 伊賀健一 株式会社オーム社
  • よくわかる半導体レーザ 小沼稔 柴田光義 工学図書株式会社

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