【図解】レーザーダイオード(LD)と関連機器との構成や使い方
通信や測定やセンシング、光ディスクの読み取り・記録など実に多くの用途に使われるのがレーザーダイオード(LD・半導体レーザー)です。
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そんな幅広い用途に使われるレーザーダイオードだからこそ、
「何の用途で、どのように使いたいか」によって、関連デバイスとの構成や組み合わせ方が異なります。
目的に合わせた構成を理解するのは大変かもしれませんが、これらを理解しておくことで、ご自身の用途や目的に合わせてレーザーダイオードが使えます。
それだけでなく「こんなふうに構成を変えれば、こんな便利なこともできるんだ」といった発見もあるでしょう。
弊社のお客様の多くが、このようなレーザーダイオードの構成について困っておられましたが、
「ネットで調べられる情報ではなかなか解決することができない」という方が非常に多くいらっしゃいました。
そこで弊社では、このページにてレーザーダイオードと関連デバイスとの構成(組み合わせ)を、ケース別に図解でわかりやすくまとめました。
目的に合ったデバイス構成がわかるだけでなく、レーザーダイオードに関する根本的な理解が得られ、
今後の生産・研究活動がより効率的になると思いますので、ぜひご一読ください。
レーザーダイオードを使うにはドライバとパルスジェネレータが必要
一部不要な場合もありますが、基本的にレーザーダイオードを使うにはドライバとパルスジェネレータが必要です。
レーザーダイオードとは、半導体に電流を流してレーザー発振させる素子です。
そのため、それ単体では駆動するための電流は作れませんし、任意の波形をつくることも出来ません。
つまり、レーザー発振のための駆動電圧をつくるドライバーと、信号発生器であるパルスジェネレーターを利用する必要があるわけです。
>レーザーダイオードがレーザー発振するしくみについて知りたい方はこちら
まずはこのような基礎をおさえた上で、レーザーダイオードと関連デバイスとの構成(組み合わせ)を解説していきます。
【図解】ケース別レーザーダイオードと関連デバイスとの構成(組み合わせ)
レーザーダイオードの使い方として、ここでは以下の6つのケースに分けてそれぞれ解説します。
レーザーダイオードの使い方の6ケース
- CW駆動でレーザーを発振したいとき
- パルス駆動でレーザーを発信したいとき
- 外部トリガからレーザーをパルス駆動したいとき
- 受光側と同期をとりたいとき
- レーザーを変調したいとき
- レーザー増幅したいとき
ここではデバイスの構成がイメージしやすいよう、弊社が取り扱う製品(デバイス)を用いて図解します。
前述のように、本来はレーザーダイオード・ドライバ・パルスジェネレータの3点が組み込まれている必要があります。
しかし、弊社取扱のデバイスはLDドライバにパルスジェネレータが内蔵されているため、パルスジェネレータは構成に含まれていませんのでご注意ください。
※弊社取扱でない、パルスジェネレータ非搭載のドライバを利用する際は、別途パルスジェネレータをご用意いただくことで解決します。
ケース1:CW駆動でレーザーを発信したいとき
連続的にレーザーを駆動するようなケースでは、CW駆動でレーザーを発振します。
ガス分析などのモニタリング用途で使用されることがあり、
- 連続駆動時のノイズの少なさ
- 連続駆動時の安定性
といったものが求められます。
ケース2:パルス駆動でレーザーを発信したいとき
短時間のレーザー発振をしたいときは、パルス駆動によるレーザー発振を使います。
パルス幅が短くなることで、より高い出力が得られるため、加工や溶接、医療用途など様々な用途で使われています。
また、気象観測やLidarにも使用さており、ごくわずかな時間に起こるような物理現象の観察や距離計測などの用途にも適しています。
パルス駆動では、
- ピーク出力に至るまでの立ち上がり時間
- 出力できるパルス幅や繰り返し周波数
- 波形の歪みにつながるオーバーシュートの少なさ
といったものが求められます。
ケース3:外部トリガからレーザーをパルス駆動したいとき
LDドライバではなく外部の装置からレーザーの発信タイミングをコントロールしたい場合はこちらの構成になります。
Aerodiode社の各ドライバ(CCSやCCM、shaper、TDLASなど)は、TTL信号(0-5Vの電気信号)を用いてタイミングをコントロールすることが可能で、以下のような場合に有効です。
- レーザーを使ったシステムを構成したい場合
- 他の機器からの信号をトリガーにレーザー発信したい場合
ケース4:受光側と同期をとりたいとき
弊社取扱のドライバにはパルスジェネレータが内蔵されているため、基本的にはドライバ×レーザーダイオードの構成で充分になります。
しかし、
- いつレーザーが発振されたか同期によってログを取る
- ディレイをかけて同期のタイミングをコントロールする
このような複雑な運用が必要な場合は、別途パルスジェネレータも利用することで解決します。
①いつレーザーが発振されたか同期によってログを取る
Lidarなど距離計測の用途でレーザーダイオードを利用する場合、いつレーザーを発信したかのログを取ることはとても重要です。
Aerodiode社のLDドライバ(CCSやCCM、shaper、TDLASなど)は、同期用の出力信号を発信することが可能です。
そのため、ドライバ及び受光装置があれば同期を取ることができます。
②ディレイをかけて同期のタイミングをコントロールする
発信したレーザーをセンサやカメラで測定する用途に使う場合、
正確に測定するためには、レーザー発振のタイミングと測定タイミングを正確に合わせることがより重要です。
その際、ドライバから発信される同期信号はレーザーと同時に発信されますが、構築するシステムによってはディレイをかける必要があります。
このようにディレイをかける際には、パルスジェネレータを使用します。
パルスジェネレータは入力された信号に任意のディレイをかけることができるため、より精密に同期のタイミングをコントロールすることが可能です。
ケース5:レーザーを変調したいとき
「レーザーの出力を周囲的にコントロールしたい」
「レーザーの周波数をコントロールしたい」
「周波数を変えずに出力のみコントロールしたい」
このような場合は、レーザーを変調させる方法が3つあります。その方法とは、
- 直接変調
- 外部変調(AOM)
- 外部変調(SOA)
の3つです。それぞれ解説していきます。
直接変調
直接変調とは、変調したいレーザーのパルス形状に合わせた電力を、直接レーザーに供給することで変調を行う方法です。
最もシンプルな変調は電源のON/OFFですが、shaperでは、出力したいレーザーの波形を細かくデザインすることができます。
そのため、単なるレーザーの出力や周波数のコントロールだけでなく、通信領域における信号変換のテストや長距離通信における信号の劣化テストなどにも有効です。
直接変調は、レーザーを変調させる方法の中でも最も安価な方法ですが、10ns以下の短いパルスの場合は、ゲインスイッチピークが発生することがあります。
これが望ましくない場合は、ゲインスイッチ抑制機能があるshaperを使うことで、直接変調でも短いパルスを得ることが出来ます。
外部変調:AOM
外部変調とは、変調器といわれる装置に変調信号を与え、そこにレーザーを通すことで変調を行う方法です。
変調器は、
- AOM
- EOM
- SOA
の3つに分かれます。
そのうち、AOMのメリットは、他の方式と比較すると高い光出力にも対処可能なところです。
具体的には数Wクラス、場合によっては10Wを超える事もあります。
それに対しデメリットとしては、スイッチングスピードと挿入損失がトレードオフの関係になる点です。
AOMは、変調器に内蔵されている結晶を通して変調を行います。
その結晶に光を集約すればするほど、スイッチングスピードは速くなります。
スイッチングスピードが速くなると、出力ファイバに到達するまでの光損失が大きくなってしまうため、スイッチングスピードを上げつつ光損失を抑えることが困難であることが難点と言えます。
外部変調:SOA
SOAは、ダイナミックレンジがAOMやEOMよりも一般的に高くなります。
AOMやEOMの場合、ダイナミックレンジは30dBに制限され、かつ強い極性があります。
そのため、多くの場合はそれよりも低いレンジの信号しか発生させることができません。
つまり、それより大きなダイナミックレンジが必要な場合や、極性が強いことが好ましくない場合はSOAを用いた外部変調がおすすめです。
また、SOAには以下のような特徴もあります。
- AOMやEOMと異なり偏光の回転依存性がない
- 出力に偏光子(もしくは偏光特性のあるアイソレータ)が必要な場合がある
- 微弱なASE(自然放射増幅光)信号が発生する場合がある
ケース6:レーザー増幅したいとき
レーザーの出力を上げる場合や、レーザーの長距離伝送などにより低下した出力を復元する場合は、レーザーを増幅する必要があります。
そのような場合は、元となるレーザーをSOAに通過させることで、レーザーの出力をコントロールすることが可能になります。
それにより、レーザーの増幅だけでなく変調も可能になるため、高出力のパルス信号を発信することもできます。
このようなレーザー増幅方法は、レーザー共振器のように、レーザーを反射させて増幅する方式とは異なります。
これはつまり、一方向的な増幅方法となってしまうことから、増幅できるレーザー出力には限界があるということにもなります。
このような問題を解決するには、複数の増幅器を用意し、何段階かに分けてレーザー増幅することで、高出力のレーザー発振をすることが可能になります。
まとめと構成デバイスのご紹介
いかがでしたでしょうか。
ここでは、レーザーダイオードと関連デバイスとの構成を、使い方のケース別に図解させていただきました。
レーザーダイオードの用途に合わせた構成・使い方を理解することができれば、より具体的に作業環境やデバイスの導入に必要な予算をイメージすることができるでしょう。
また、ここの図解にてご紹介させていただいたレーザーダイオード関連デバイスを以下にまとめておきます。
より具体的な製品に関するご相談は、各製品ページの資料請求もしくは共通の問い合わせフォームよりお気軽にお寄せください。
お問い合わせレーザーダイオードドライバ
各レーザーダイオードドライバの違いに関しては以下のコンテンツも御覧ください。
CW変調レーザーダイオードドライバー [TEC制御+USB入力制御](CCS-CW)
TEC付きCW用レーザーダイオードドライバー
このレーザーダイオードドライバーはCWと変調発振が可能で、バタフライパッケージを始め様々なレーザーダイオードに対応しています。
LD用パルスジェネレーター搭載電源(高出力タイプ)CCM
最大150W高輝度レーザーダイオードの温度制御・電流制御モジュール
この製品は外部に接続されたレーザーダイオードを36V21Aで制御可能です。
複数のレーザーダイオードを一つのモジュールに連結して取り付け可能です。
ガス検知アプリケーション用レーザーダイオードドライバー TDLAS
ガス検知アプリケーション用に開発されたレーザーダイオードドライバー
TDLASはCCS-low Noiseをベースに、ガスセンサーに特化した機能を搭載したモデルです。
よって、CCS-low Noiseと同等の低ノイズ性能を持ちます。
NTT、Eagleyard、Nanoplus、Eblanaなどのバタフライレーザーダイオードに対応しています。
高精度パルス型レーザーダイオードドライバー CCS
コストパフォーマンスに優れたパルスジェネレータ搭載LD電源
種光源向けに設計されたLDドライバーです。
バタフライパッケージの半導体レーザ(LD)モジュールに対応。
パルス幅を最小500psからCW(連続波)までの範囲で制御できます。
ファンクションジェネレーター(多機能LD用電源)Shaper
特殊な波形を生成可能なパルスジェネレータ搭載LD用電源
レーザーダイオードドライバーは、パルス持続時間がナノ秒の任意のパルス形状を生成します。
この装置は、AWG(Arbitrary Waveform Generator)とTECコントローラー、および複数の信号同期用パルスディレイジェネレーターを統合した、多機能の装置です
パルスジェネレーター
ディレイ/パルスジェネレータ Tombak
D用多機能ディレイ/パルスジェネレータ Tombakは「パルスジェネレータ、ディレイジェネレータ、クロックシンクロナイザ、バーストジェネレータ、電圧レベルコンバータ、プリスケーラー」等を1台の小型デバイスに統合した、多機能かつ高性能な装置です。
詳細変調素子
ファイバーカップルAOM(音響光学素子)
AOMは、レーザービームの変調を行うための電子デバイスです。
AOMの内部にある結晶にRF(音響波)を入力することで、音響光学効果を発生させ、入力した光の周波数をシフトして出力することが可能です。
ナノ秒変調SOAパルスドライバー(半導体光増幅器用電源)
1ns~CWに対応したハイダイナミックレンジSOAパルスドライバー
本製品は、半導体光増幅器(SOA増幅器)をナノ秒で変調可能なパルスドライバーです。
750nmから1700nmの波長範囲で高いダイナミックレンジのファイバー変調が可能で、低損失、高消光比、高偏光を実現します