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エキシマレーザーとは?特徴や仕組みから用途までわかりやすく解説

エキシマレーザーとは気体レーザーの一種で、希ガスやハロゲンなどの混合ガスを用いて、強い紫外領域(193nm、248nm、308nm、353nm)の光を発生させるレーザーです。
熱が少ないという特徴を活かし、加工や医療の現場において活躍しています。

このページをご覧の方には、エキシマレーザーについて

「特徴や用途について詳しく知りたい」
「他のレーザーとの違いを知りたい」
「導入する上で必要な情報が欲しい」
「用途に合ったスペックのレーザーが知りたい」

という方も多いのではないかと存じます。

ここでは、

  • エキシマレーザーの波長や特徴
  • エキシマレーザーの用途(アプリケーション)
  • エキシマレーザーの仕組み

について、詳しく解説いたします。

エキシマレーザーに関する疑問はすべて解決できるよう、情報をまとめておりますので、
ぜひご一読ください。

また、「そもそもレーザーってどんなもの?」ということが気になる方は、ぜひ以下の記事も参考にしてみてください。

エキシマレーザーとは

冒頭でお伝えしたように、エキシマレーザーは強い紫外領域の波長帯の光を発生させるレーザーです。

レーザー発振に必要な光の増幅に、希ガスやハロゲンなどの混合ガスを用いており、気体レーザーに分類されます。

一般的に、希ガスはアルゴン・クリプトン・キセノンが利用され、ハロゲンはフッ素・塩素が利用されています。

レーザーの名前ともなっているエキシマとは、パルス放電によって励起された希ガス原子とハロゲン原子によって形成される分子です。
パルス放電によって形成されたエキシマからの放射光によりパルス発振します。

レーザー発振の仕組みとして、パルス放電が気体が元の状態に回復するのを待って次のパルス放電をかける構造上、連続的にはレーザー発振しません。

エキシマレーザーの波長

代表的なエキシマレーザーの発振波長は、以下の4つがあります。

  • ArF(アルゴン・フッ素) - 193 nm
  • KrF(クリプトン・フッ素) - 248 nm
  • XeCl(キセノン・塩素) - 308 nm
  • XeF (キセノン・フッ素)- 351 nm

これらの波長の光はすべて紫外領域となっております。

紫外領域の光は、約200nm〜380nmの波長であり、可視光領域(約380nm〜780nm)より短い波長となるため人間の目には見えません。

紫外領域の光は、その波長の長さによってさらに以下の3つに分類されます。

  • UV-A(380nm~315nm)
  • UV-B(315nm~280nm)
  • UV-C(280nm~200nm)

紫外線やUVという言葉を聞くと、日焼けなど肌への影響をイメージされる方も多いかと思いますが、
UV-AよりUV-Bの方が肌へ与える影響が強く、より波長が短いほど人体にとって危険な光と言われています。

なお、UV-Cに分類される強い紫外線は、太陽光から発せられてはいるものの、オゾン層によってカットされているため肌には届きません。

エキシマレーザーのメリットとデメリット

エキシマレーザーのメリットは、熱が少ないため、加工の分野においては熱を発するCO2レーザーや赤外線レーザーよりも鋭利で微細な加工が可能なところです。
(エキシマレーザー詳しい用途・アプリケーションについては、後述させていただきます。)

エキシマレーザーのデメリットとしてはランニングコストの高さがあげられます。

YAGレーザーなどの固体レーザーは、媒質が固体であるため設定が比較的容易です。
しかし、エキシマレーザーをはじめとした気体レーザーはガスを常に高い密度に保っていないとレーザー発振されないため、ランニングコストが高くなってしまいます。

エキシマレーザーの用途(アプリケーション)

赤外線レーザーなど他のレーザーは、熱を利用して素材などを加工する用途に使われますが、エキシマレーザーは分子結合を直接切断し、大きな分子を小さな分子へ変えることができます。

そのような特性を活かし、キシマレーザーは主に以下のような用途(アプリケーション)にて利用されます。

  • レーザー加工
  • 半導体や液晶パネルの製造工程におけるFBG
  • 皮膚科
  • 眼科
  • 血管

それぞれ詳しく解説をさせていただきます。

エキシマレーザーを用いたレーザー加工

エキシマレーザーは、材料加工用のレーザーの中では最短のレーザー波長となります。
これはすなわち、最高の光子エネルギーが得られるレーザー装置であるとも言えます。

さらに、レーザー加工において実現可能な光学分解能はレーザー波長から決まるため、エキシマレーザーは商業的に利用できる最も精密な光学的加工手段とも言えるのです。

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このような特性を活かし、レーザー加工の分野においては以下のような用途で使われます。

微細加工

微細な加工が可能であるエキシマレーザーの特性をそのまま利用したものです。
具体的には、樹脂やガラスへの微細加工のほか、インクジェット式プリンターの穴開け工程や、極小ラベリング等に使用されています。

微細加工には主にKrF、ArFが利用されます。

半導体製造におけるフォトリソグラフィ

私たちの身の回りの電化製品やIT機器の多くには半導体集積回路が内蔵されています。

これらは技術の発達により、どんどん高性能かつコンパクトな物となっていますが、これは心臓部の半導体集積回路がより微細なものになっているということです。

半導体集積回路を微細なものにするためには、より細い配線を半導体内部に作る必要があり、超極細の溝を刻む必要があります。

この超極細の溝を刻む技術がフォトリソグラフィと呼ばれる技術で、この技術に用いられるのが微細加工が可能であるエキシマレーザーというわけです。

薄膜生成

ポリマー表面に、エキシマレーザーを高密度で照射すると、材料を構成している分子・原子間の結合が瞬時に切れます。
その際に起こる分解・気化・蒸散を経て、材料表面が爆発的に除去される現象をアブレーションといいます。

材料のアブレーションにより発生した蒸発粒子を均一に堆積させることで、超伝導体、半導体、誘電体、有機物など様々な薄膜を生成することが可能です。

薄膜の生成には主にKrFが利用されます。

また、ここで解説させていただいたアブレーションですが、アブレーションは薄膜生成のほか、微細加工、超微粒子の創成、元素分析、短波長光発生、レーザ核融合など様々な用途に使われます。

アニーリング

アニーリングとは焼きなまし処理のことです。
金属を軟化させたり、結晶組織の調整のために、材料を一度加熱し、ゆっくり冷却する操作をいいます。
主にプラスチックなどを加熱して歪みを除去する処理として行われることが多くあります。

このような処理は液晶パネルの製造にも行われており、液晶パネル表面の分子組成改変を行います。

このようなことから、エキシマレーザーは多くの液晶メーカーで使用されています。
アニーリングに使用されるエキシマレーザーは主にXeCLです。

FBG(ファイバーブラッググレーティング)

FBGとはファイバーブラッググレーティングの略で、光ファイバのコアに作りこまれた数ミリメートル長の微細構造体のことをいいます。

FBGは、光ファイバのコア内で透過する光を選別する役割を担っており、位相マスクを使用して光ファイバのコアにエキシマレーザーを照射し、干渉パターンを生成することによってつくられます。

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これは、GeO2(ゲルマニア) が添加された光ファイバーのコアにのエキシマレーザーを照射すると、光誘起屈折率変化により屈折率が半永続的に変化するはたらきが利用されたもので、このとき光屈折率変化の大きさは、GeO2の添加量とエキシマレーザーの照射時間によって変化します。

このとき利用されるエキシマレーザーは主にKrFです。

皮膚科におけるエキシマレーザーの利用

エキシマレーザーは、皮膚科における紫外線療法に用いられます。

UV-Bの紫外線(315nm~280nm)は、一般的には皮膚に有害とされていますが、皮膚科での治療に用いられるエキシマレーザーは有害な波長がカットされていて、治りにくいとされている皮膚の病気を治療することができます。

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エキシマレーザーによって治療が期待できる症状としては、主に以下の3つがあげられます。

  • 円形脱毛症
  • 結節性痒疹
  • 難治性皮膚病(手足の皮膚剥離症、汗庖など)

エキシマレーザーを用いた治療の特徴としては、ピンポイントで照射ができるため健常部位への影響を防ぐことができること、比較的短時間での治療が可能であることがあげられます。

眼科におけるエキシマレーザーの利用

エキシマレーザーは、眼科におけるレーシック治療にも用いられます。

レーシック治療とは視力を回復する目的で行われる治療のひとつで、目の角膜上皮を特殊なメス(マイクロケラトーム)でめくって、エキシマレーザーで角膜を切除する方法です。

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レーシックは、術後に角膜上皮をもとに戻すため、術後の早い段階でも痛みや見え方の悪さが少なく、翌日から普通の生活ができることがほとんどです。

よって同日に両眼の手術も可能であり、強度の近視や乱視、遠視および老眼の治療も可能です。

エキシマレーザー冠動脈形成術(ELCA)

エキシマレーザー冠動脈形成術(ELCA)とは、冠動脈にレーザーカテーテルを入れ、その先端からエキシマレーザーを照射することによって、閉塞した血管を開通させるという治療方法です。

前述のように、エキシマレーザーは分子結合を直接切断し、大きな分子を小さな分子へ変えることができます。

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この性質を利用したのがエキシマレーザー冠動脈形成術(ELCA)で、動脈硬化の起こった冠動脈にエキシマレーザー照射すると、生体組織に熱損傷を起こすことなく、病変組織を蒸散させることができます。

エキシマレーザーの仕組みと発振原理

商業・工業用レーザーとして代表的なYAGレーザーやCO2レーザー、半導体レーザー等では、強い紫外線レーザーを発振させることが困難でした。

これは少し専門的な話になってしまうのですが、上記のような代表的な代表的なレーザーの発信原理ではエネルギー上準位寿命が下準位の寿命よりも長い必要があります。

レーザー発振に必要なエネルギー準位についての解説は、以下の記事にて詳しく解説しています。

【図解】レーザーダイオード(半導体レーザー)とは (特徴と選び方)

このような、従来のレーザー発振原理では難しかった波長の短い紫外線領域レーザーの発振を可能したのがエキシマレーザーです。

励起状態で分子のような結合状態にあるエキシマ

私たちの身の回りにあるあらゆる物質は、すべて原子や分子で構成されています。
このような原子や分子は、それ自体は安定した状態であることが多いですが、自然界においてはすべての原子や分子が安定しているわけではありません。

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このように、安定した状態は持たないものの励起状態では分子のような結合状態にある分子の状態をエキシマといいます。

エキシマはエネルギー下順位に移動する際には別々の原子になってしまいます。
つまり下順位に対応するエキシマは存在せず常に反転分布の状態をつくることが可能です。

このようにしてエキシマレーザーは、YAGレーザーやCO2レーザー、半導体レーザーでは難しかった強い紫外線領域のレーザー発振を可能にしました。

代表的なエキシマレーザーの構造

図はエキシマレーザーをはじめとした、一般的な気体レーザーの構成図です。

エキシマレーザーは基本的に縦放電方式と横放電形式に分かれます。
縦放電方式は、連続発振に必要な安定放電のために低ガス圧で用いられることが多いです。

それに対し、横放電方式は媒質となる気体に高速で大量のエネルギーを送り込むことができ、さらに高ガス圧によって動作させることが可能になります。
そのため、高出力パルス動作が前提となるエキシマレーザーにおいては横放電方式が用いられます。

図で示される構成の気体レーザーは、全反射ミラーと出力ミラーがガラス管の両端に接着されている状態の共振器構成になっています。

このような共振器構成の他に、ガラス管にブリュースター窓を取り付け、ミラーをガラス管の外に配置する外部ミラー方式もあります。
こちらの外部ミラー方式を使うと、気体レーザーでも直線偏光のレーザービームを得ることができます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回は、エキシマレーザーについて特徴や用途、しくみについて解説させていただきました。

弊社ではエキシマレーザーは取り扱っておりませんが、フィラメントタイプのエキシマ光源であるエキシマランプから光を取り込み、どのような光を外に出したいか、その目的に沿って光を出すライトガイドを取り扱っています。

UVC波長域において安定した伝送率を持っているため、UV照射器や、ウエハ製造の現場での光源に用いることができます。

>>製品情報

他にも、弊社では半導体レーザーを中心とした各種レーザー製品を取り扱っており、用途に応じた様々な製品をご提案しております。

レーザー製品に関してご不明点やご要望などありましたら、お問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。

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