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赤外線(IR)レーザーとは?特徴や用途の解説と製品一覧

赤外線レーザーとは、赤外領域の波長帯(780〜1,700nm)の光を発生させる、低コストかつ高出力のレーザーです。
加工、医療、通信、計測など多くの用途に使われています。

多くの用途に使われる赤外線レーザーだからこそ、その種類も多岐にわたるので疑問も多く生まれます。
今このページをご覧の方にも、

「赤外線レーザーの特徴や用途について詳しく知りたい」

「他のレーザーとの違いを知りたい」

「赤外線レーザーを導入する上で必要な情報が欲しい」

「自社の用途に合ったスペックの赤外線レーザーが知りたい」

という方も多いのではないでしょうか。

ここでは、

  • 赤外線レーザーの種類やそれぞれの特徴(波長など)
  • 赤外線レーザーの用途(アプリケーション)
  • 他のレーザーとの違いや原理
  • 赤外線レーザー光源およびモジュール製品

について、詳しく解説いたします。

また、赤外線レーザー製品を数多く取り揃えており、一般的なレーザー素子がパッケージされたタイプの製品から、購入後すぐにご利用いただけるタイプの製品まで、お客様のニーズに合った赤外線レーザーをご提案しております。

>>製品情報をご覧になりたい方はこちらから。

赤外線レーザーに関する疑問はすべて解決できるよう、情報をまとめております。
ぜひご一読ください。

赤外線(IR)レーザーとは

冒頭でお伝えしたように、赤外線レーザーは赤外領域の波長帯(780nm〜16µm)の光を発生させるレーザーです。

コストが抑えられる上に、高出力のレーザー放射が可能となっているため、
とても多くの用途に使われております。

「そもそもレーザーってどんなもの?」ということが気になる方は、こちらの記事もぜひ参考にしてください。

赤外領域の光(赤外光)は、人の目では見ることができない非可視スペクトル光です。
そのため、基本的には目への影響が少なく、よくイメージされるレーザーポインタ(赤い光をレーザー照射するもの)とは明確に区別されます。

それではなぜ、赤外領域の光は目で見ることができないのでしょうか。

赤外線レーザーが目に与える影響

01_IR.png

赤外光を肉眼で見ようとしても、その光は網膜に到達せず、角膜と水晶体によって大部分が吸収されます 。
そのため、赤外線レーザーは目で見ることができず、網膜に損傷を与えることがないとされています。

ただし、目に被害を及ぼす可能性はまったくのゼロというわけでもありません。

角膜と水晶体によって強く吸収される光の波長は1,400nmより長い波長の光です。
そのため、赤外線レーザーの中でも780〜1,400nmの波長の光(近赤外光)は網膜に損傷を与えるおそれがあります。

網膜の損傷は治癒することがなく、失明を引き起こす可能性があるため、取り扱いには充分注意が必要です。

また、1,400nmより長い波長の光は、網膜に損傷を及ぼすことはありませんが、角膜の外層に吸収されることにより角膜損傷を引き起こすおそれもあります。

網膜の損傷とは違って角膜の損傷は治癒しますが、強い痛みをともなうと言われているため、やはり赤外線レーザーを直接見ることがないよう注意が必要です。

赤外線(IR)レーザーを出力する光源

赤外光を射出するレーザーは赤外線レーザーと言われていますが、レーザー光源は光を増幅する媒質により以下の4つに分類されるのが一般的です。

  • 半導体レーザー
  • 固体レーザー
  • 気体レーザー
  • 液体レーザー

それぞれの分類の中でも、媒質に用いられる素材や構造によって様々な種類のレーザー光源タイプに分かれます。

それぞれのレーザーの特徴についてお話していきます。
また、それぞれのレーザーの用途(アプリケーション)については、次項にてまとめておりますのでそちらを参照してください。

半導体レーザーの特徴

半導体レーザーは文字どおり、レーザー発振に必要な光の増幅に半導体を用いたレーザーで、レーザーダイオードと呼ばれることもあります。

小型かつ低電圧・低電流でのレーザー発振が可能であることが特徴です。
また、半導体の組成を変えることで、さまざまな波長のレーザーをつくることができることから、非常に多くの用途で用いられるレーザーとなっています。

>>半導体レーザーの発振原理やより詳しい解説はこちら

固体レーザーの特徴

固体レーザーは、レーザー発振に必要な光の増幅に固体材料を用いたレーザーです。

前述の半導体レーザーも固体材料を使ったレーザーではありますが、レーザー分野においては半導体を使ったものは「半導体レーザー」、絶縁性固体材料(ルビー・イットリウム・アルミニウム・ガーネットなど)を使ったものを「固体レーザー」と呼称することが一般的です。

固体レーザーの特徴としては、半導体レーザーと同様に小型でも大きな出力が得られることが特徴といえるでしょう。
また、発振形態が豊富で、設計次第で高出力・高コヒーレント・超短パルスのレーザーを発振することが可能です。

気体レーザーの特徴

気体レーザーは、レーザー発振に必要な光の増幅に気体を用いたレーザーです。
他のレーザーと比べてレーザー媒質が均質となるため、損失が少ないのが特徴です。

また、共振器の構造を大きくすることができ、それにより大きなレーザー出力を得ることができます。

気体レーザーの種類は、原子ガス(HeNeレーザー、金属蒸気レーザー、希ガスイオンレーザー)、分子ガス(窒素レーザー、CO2レーザー) 、エキシマレーザー等があります。

液体レーザーの特徴

液体レーザーは、レーザー発振に必要な光の増幅に液体を用いたレーザーです。
他のレーザーと比べ安価で手に入ることが大きな特徴としてあげられます。

また、形状の制限がなく、循環可能のため冷却がしやすいレーザーです。
さらに、活性中心の濃度が比較的高いため、電子の反転分布が大きく、光を増幅する際の増幅率が大きいといった特徴もあります。

液体レーザーの種類は、色素レーザーやキレートレーザー、無機液体レーザー等があります。

赤外線(IR)レーザーの波長と用途・アプリケーション

赤外線レーザーは、主に以下のような用途(アプリケーション)にて利用されます。

  • レーザー距離測定
  • 医療
  • 分光分析
  • 通信
  • レーザー加工
  • レーザー励起光源

それぞれの用途について解説していきましょう。

レーザー距離測定

物体にレーザー光を照射し、その物体にあたって反射した光を受光することにより距離を検出します。

メジャーなどでは測定ができないような長い距離も測定できるため、電気工事や建築、工事の現場で多く使用されています。

計測方法は2種類あり、感覚測量を応用した三角測距方式や、測定対象で反射した光を受講するまでの時間を測定するタイムオブフライト方式があります。

このうち、自動運転技術に必要な車間距離測定に用いられる技術はLiDARと呼ばれています。

>>LiDARについて詳しく知りたい方はこちら

医療

医療分野においては、レーザー治療やOCT(光干渉断層撮影)に使われます。

レーザー治療の代表がガン治療です。

例えばレーザー内視鏡は、内視鏡を体内に入れ、モニターを見ながらレーザー照射によりガン細胞を破壊します。

また、血液の中にガン細胞だけに取り込まれる色素を入れ、そこにレーザー照射をすることによってガンを早期発見することも可能です。

また、レーザー治療といえば美容治療を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

レーザーは熱エネルギーであり、肌のシミの原因であるメラニンを破壊することが可能であることを利用し例えばレーザー内視鏡は、内視鏡を体内に入れ、モニターを見ながらレーザー照射によりシミやホクロの除去に用いられます。

同様に、メラニンを含有している毛根に熱ダメージを与えることで、毛の再生を困難にする医療脱毛にもレーザーが使われています。

さらにOCT(光干渉断層撮影)においては、光の干渉性を利用して身体の内部の構造を撮影することができます。

これは超音波による撮影より100倍以上優れていると言われており、人体内部の診断に大きく役立ちます。

分光分析

分光分析とは、物質が放射または吸収する光のスペクトルを、分光器を用いて調べることにより、対象物中の成分を定性・定量分析を行う手法です。

溶液の濃度測定や非接触での非破壊検査、薬品や食品の多成分同時測定に用いられ、多くの産業分野や研究機関で使用されています。

分析する対象物や観測する現象により、吸収分光法、蛍光分光法、ラマン分光法といった異なる種類の分光法がつかわれます。

>>分光法について詳しく知りたい方はこちら

通信

赤外線レーザーは通信分野にもよく用いられています。

通信分野で他に用いられるものには電波があります。
これと比較したとき、赤外線領域の光は、電波領域よりも周波数が高いです。

そのため、特に光無線通信の領域で広帯域・大容量の通信が可能で、指向性がよく通信の秘密保持が可能となります。

また、光ファイバ通信の領域においても赤外領域の光が活躍します。
赤外線領域の光は、光ファイバに導光したとき、損失が極めて低く、特に10~16μm帯の非常に広帯域な領域が使用できます。

そのため、赤外線レーザーを用いた光ファイバ通信では、大容量での通信が可能となるわけです。

これらの光通信は、メガビット毎秒からギガビット毎秒程度の通信速度を活かし、我々の日常生活のいたるところに役立てられています。

レーザー加工

赤外線レーザーは、高出力のレーザー光を照射することができるため、ガラスや金属などの彫刻、切断に利用することができます。

物理的な設備をつかった切削加工では、 超硬合金などの「難削材」や、セラミックなど「硬脆材」の微細加工は難しいとされてきましたが、レーザー加工ではピンポイントに高出力のレーザー光が照射できるため、そのような加工も可能になります。

さらに、切削と比較すると金型などの工具を使わずに済むため、工具の摩耗や交換の必要がないこともメリットのひとつと言えるでしょう。

このようなことから、赤外線レーザーは製造業のあらゆるシーンで利用されます。

レーザーの励起光源

赤外線レーザーは、そのまま用いるだけでなくレーザーの励起光源として利用される場合もあります。

近赤外領域の光は、主要な固体レーザーの励起波長であることが多くあります。
そのため、主に波長の種類が豊富で、比較的安価な半導体レーザーが励起用光源として使用されます。

代表的な例ですと、Nd:YAGは 808nm、Yb:YAGは940nmが励起光として利用されます。

赤外線(IR)レーザーの波長ごとの用途(アプリケーション)一覧

このように、異なった多くの用途に活用される赤外線レーザーですが、これらは波長によって使い分けられます。

808nm915nm976nm980nm1030nm
レーザー加工医療医療医療
(歯科診断、治療、下肢静脈瘤)
SEED
医療(OCT以外)レーザー距離測定LiDARLiDAR
Nd添加ファイバーやNd添加利得媒質の励起光源
モード同期Ndファイバーレーザーキットの励起光源
光学測定レーザー加工Yb:YAGのメイン出力波長
光線力学的治療法の照射光源材料加工微細加工高次波長がラマン、フローサイトメトリー、ホログラフィ、顕微鏡
LiDARなどセンシング用の光源Ybファイバ励起※1溶接切断材料加工
イメージ記録光学材料の研究ファイバ励起※2
光データ記録
分光分析
1064nm1310nm1390nm1550nm1650nm
★基本波
Nd:YAGの波長
半導体/液晶検査
レーザーピンセント
歯科医療、皮膚医療
光通信伝送Erファイバの出力波長光ファイバ通信
2次高調波
532nm(ラマン、ソフトマーキング、微細加工)
Prファイバレーザーの種光源LiDAR、3D計測アナログ信号伝送
3次高調波355(リペア、LCD加工)InPフォトニック結晶レーザーの励起光源半導体加工

※1:Ybファイバレーザーは915nm励起、3D金属プリンタで使用されるソディックは500WYbファイバレーザーを搭載しています。

※2:Ybは915,941,978nmの光が励起光ですが、978nm最高効率(95%)となっております。
Erは1.48μmと980nmの光が励起光ですが、980nmは正規効率が低めで、ErにYbを添加すると効率がアップします。

IR光源と赤外線(IR)レーザーとの比較

赤外線レーザーの波長ごとのアプリケーションについて触れてきましたが、赤外光を出力する光源には、レーザー光源だけでなく、フィラメントが発光するタイプの赤外光源(IR光源)もあります。

フィラメントが発光するタイプのIR光源は、ガス計測や厚み計測、水分量測定において多く利用されていますが、既存のIR光源をレーザー化したい、というお問い合わせをいただくことも増えておりますので、ここでIR光源とIRレーザーとの比較についても触れておきます。

まずはレーザー光とフィラメント光の根本的な比較から見てみましょう。

02_IR.png

図のように、自然放出のフィラメント光と比較してレーザー光は位相の揃った指向性の高い光となっております。

これらの性質を利用し、既存のIR光源をIRレーザーに置き換えた場合、以下のような効果が見込まれます。

  • ドリフトがほとんどなくなり長期安定性に優れる
  • 応答速度が早くなりガスなどの監視や制御に最適に
  • 消費電力が低くなる
  • 透過光量をアナログ出力可能になる
  • メンテナンスコストが下がる
  • 省スペース化
  • 遠隔ガス濃度測定なども可能に

このように、多くのケースでIR光源をIRレーザー化するメリットを感じられるでしょう。

弊社では、それぞれのアプリケーションに応じた赤外線レーザー光源を多数取り揃えております。

製品の案内をご覧になりたい方はこちらから。

製品の選定にサポートが必要な場合は、弊社で用途や利用環境について詳しくお聞かせいただいた上で最適なものをご提案させていただくことも可能ですので、こちらからお気軽にお問い合わせください。

その他の波長のレーザーとの違い

ここまで、赤外線レーザーの特徴や用途について詳しくお話してきましたが、他の波長帯のレーザーとどのようなちがいがあるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。

製品についてのご案内の前に、他の波長帯のレーザーとのちがいや、そもそもレーザーとはどのような仕組みとなっているのか?といった部分についても簡潔にお話しておきます。

波長ごとの名称と特性

光とはそもそも電磁波の一種で、山と谷のあるによってできています。
その波には、波長という長さの基準があって、波長の長い方から、電波・赤外線・可視光線・紫外線・X線・ガンマ線に分類されます。

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人の目がとらえている光は上記の分類のうち可視光線と呼ばれる波長帯だけです。

物体に当たった光の波長のうち、物体に吸収されずに反射された波長を網膜が受け取ったものが、色として認識されます。

そして前項でお話したように、レーザー光とはその中でも、誘導放出を利用して取り出された位相の揃った指向性の高い光となっております。

レーザーの発振原理

自然放出と誘導放出という言葉が出てきましたが、自然放出は電子の再結合により引き起こされます。

誘導放出は、その再結合により発生した光が引き金となって、他の電子が次々と再結合することによって引き起こされる現象です。

レーザー光源には光を増幅させる媒質があり、媒質中での反射と誘導放出によって増幅された光がレーザー光です。

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以下の記事では、弊社で特に取り扱いの多い半導体レーザー(LD)の発振原理や構造についても詳しく解説してありますので、半導体レーザーについてより理解を深めたい方は参考にしてみてください。

>>【図解】レーザーダイオード(半導体レーザー)とは (特徴と選び方)

赤外線(IR)レーザー光源およびモジュール製品のご案内

さいごに、弊社で取り扱う赤外線(IR)レーザーおよびIR光源についてご案内させていただきます。

赤外線(IR)レーザー製品一覧

レーザーダイオード

レーザーダイオードシリーズ

波長域808nm~1550nmまでをラインナップ。お好みのレーザーダイオード、電源、パッケージをそれぞれ組み合わせてご選択いただけます。

レーザーダイオードシリーズ一覧
量子カスケードレーザー

量子カスケードレーザー(QCL):PowerMirシリーズ

中赤外の波長範囲を幅広くカバーしたQCLです。化学分析アプリケーションに適しています。

PowerMirシリーズ一覧
SLD光源

SLD光源シリーズ

光通信の波長帯域である1300〜1700nm付近の近赤外線の光を出力することができる、発光ダイオード(LED)と半導体レーザ(LD)の2つの特性を持った広帯域・高出力光源です。

SLD光源シリーズ一覧
LD電源

LD電源シリーズ

レーザー製品は、パルスジェネレータなどのLDドライバと組み合わせることで使用することが出来ますが、弊社が取り扱うLD電源シリーズは、レーザーとドライバが一体化されたモジュールとなっております。
そのため、買ってすぐ使えるタイプのレーザーが欲しい方にオススメとなります。

LD電源シリーズ一覧

IR光源

小型赤外線光源 連続点灯

小型赤外線光源 連続点灯タイプ

1〜20μmの広範囲の赤外光を放射する、長寿命・高発光効率の小型光源。FTIR等、赤外分光法での分光分析用光源としてもご使用頂けます。

小型赤外線光源 連続点灯タイプの製品一覧
小型赤外線光源

小型赤外線光源 パルス発光タイプ

長寿命・高発光効率の「高周波パルス点灯」赤外光源です。高変調率、高パルスレートが特徴。1〜20μmの広範囲の赤外光を放射します。

小型赤外線光源 パルス発光タイプの製品一覧
タングステン・カンタルIR光源

タングステン・カンタルIR光源

小型赤外線光源 -フィラメントタイプ-
高い安定性で、黒体輻射に近似した分光スペクトルを持つIR光源です。装置への組み込みに適しており、小型化や設計の簡略化に貢献します。

タングステン・カンタルIR光源の製品一覧

まとめ

いかがでしたでしょうか。
赤外線レーザーについて、特徴からアプリケーション、他レーザーとのちがいや製品のご案内をさせていただきました。

赤外線領域のレーザーは非常に多くの用途に使われるため、製品のラインナップや組み合わせが多く存在します。

自社の用途に合った最適な商品選定をするのもひと苦労する方が多いです。
少しでも迷ってしまわれた場合は、弊社問い合わせフォームから遠慮なくお問い合わせください。

弊社では半導体レーザーを中心に赤外線レーザー製品を数多く取り揃えており、お客様のニーズに合った赤外線レーザーをご提案しております。

お問い合わせはこちら

それではここまでお読みいただきありがとうございました。