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Webセミナー QA集

近赤外分光を用いたプラスティック劣化診断の質問に答えます

2022年2月8日に実施した”Webセミナー「光でプラスティックの劣化診断・判別ができる」でいただいた質問の内容と、新澤先生の回答一覧です。

サンプル(測定対象)

Q1

プラスチック成型時の充填剤(ガラス繊維、木粉、炭酸カルシウム等)による影響等は有りますか。

ガラス繊維や炭酸カルシウムは近赤外光をほとんど吸収しませんので影響は少ないと考えられます。木粉については近赤外ピークを発生しますが、プラスチック由来のピークとは異なる波長領域に現れるので、量的に多くないのであればそこまで大きな影響はないかと思います。まずはデモ装置等をご活用いただき測定されてみると良いかと思います。
※デモ測定に関しては、ぜひ、KLV社にご相談ください(KLV)。

Q2

ポリプロピレン以外のプラスチックについても劣化試験を行ったことがありますか。

半結晶性ポリマーについては適用事例があります。

Q3

着色プラスチック等、不純物によるスペクトルの変化の影響は問題ないでしょうか。

近赤外光は透過しやすいというのは、言い換えれば、光吸収があまり起こらないということになります。着色剤は一般的に添加量が少なく、近赤外ピークをほとんど発生させません。このため影響は少ないと考えられます。

Q4

非晶性の材料でも同じ考え方で分析できますか。

非晶性ポリマーは劣化に伴い結晶と非晶の相対量が変わるかけではなく、酸化に伴うカルボニル生成物の増加や分子鎖が主として起こります。このような現象は近赤外スペクトルではと捉えることが難しいため赤外光で酸化生成物を検出する、質量分析で添加物量の変化を見るという方法がよいかと思います。

Q5

今回の例はポリエチレンですが、ナイロン等他の材質でもプラスチックであれば応用できますか。

ナイロン等の半結晶性ポリマーは近赤外スペクトル中に結晶ピークと非晶ピークを発生させますので、本手法は適用可能です。

Q6

ポリプロピレンは、熱劣化以外にも、酸化劣化や物理的な疲労による劣化もあるかと思いますが、それらの劣化に対しても近赤外分光法でも検出可能でしょうか。

光劣化、熱・光劣化でも結晶・非晶の構造変化は検出可能です。

Q7

非晶質プラスチックの劣化診断にも利用可能でしょうか。

非晶性ポリマーは劣化に伴い結晶と非晶の相対量が変わるかけではなく、酸化に伴うカルボニル生成物の増加や分子鎖が主として起こります。
このような現象は近赤外スペクトルではと捉えることが難しいため赤外光で酸化生成物を検出する、質量分析で添加物量の変化を見るという方法がよいかと思います。

Q8

今回なぜポリプロピレンを測定対象にしたのでしょうか。

ポリプロピレンはポリマー原料として最もよく用いられるものであり、ポリエチレン等に比べて劣化しやすいという特性を持つため、まず最初のモデル材料として選ばれました。

Q9

NIRでの劣化検査が難しいプラスチック材料はございますか。また今後測定したい材質がありましたらご教示ください。

近赤外光を透過しにくいカーボンブラックやCFRPが添加物として多量に含まれるものについては測定が難しくなります。本手法の適用対象として期待できるのは半結晶性ポリマーです。

Q10

回収粉砕されたプラスチック片は表面がガサガサしていたり、折れ曲がっていたりすると思いますが、透過・拡散反射測定に影響はないでしょうか。

近赤外光は透過性が高いので表面形状によって測定が出来なくなるということはないかと思います。
一方で、光が透過した部位の体積が異なるとスペクトル強度(吸光度)も変わってしまいます。
これについては実際の分別プロセスでは避けられないことですので、スペクトルをノーマライズするといったデータ処理によって対応する必要があります。

Q11

実施した 劣化処理は、加熱と太陽光スペクトル光照射でしょうか。

我々の行った劣化処理はギアオーブンによる加熱処理に該当します。ただし耐候試験機による熱+光+加湿を組み合わせた劣化処理でも同程度の分析精度は得られています。

Q12

ゴム材質の劣化度合の推定にも応用できますか。

本手法は結晶と非晶由来のピークの高さの変化を使って分析する方法ですので、ゴムに関しては全く同じ方法は適用できないと思われます。
またゴム中のカーボンブラックは近赤外光を強く散乱させるため測定が難しい可能性もあります。
一方でゴムの劣化は酸化物の生成や添加物の現象として観察されるのでポータブルな赤外分光器や質量分析で劣化を診断することは可能です。

Q13

複層構造の場合でも測定は可能でしょうか。

表面のフィルム層が数マイクロ以下の場合は近赤外吸収はほとんど発生しませんので、その下の層のスペクトルを測定して分析することは可能です。
その一方、フィルム層とポリマー部分との界面部分が存在することで光散乱が起こり、スペクトルに干渉縞がが発生する可能性があります。

Q14

化学結合が異なれば分子間のエネルギーが異なるのは理解できるのですが、結晶性の違いによっても各種エネルギー(振動や回転)は変わるのでしょうか。

結晶を形成している官能基は結晶構造に必要な分子間相互作用(例:水素結合)を生じていますので、2原子間のばねの伸縮の際に少し外力が加わっている状態であるとみなせます。このため通常の2原子間のばねの伸縮が吸収するエネルギー(波長)は結晶構造に関与している官能基とそうでないものとでは異なります。

Q15

近赤外で黒の樹脂が測定できないメカニズムを教えてください。

カーボンブラックや炭素繊維といった無機物の粒子で黒くなっている樹脂では、照射した近赤外光が樹脂表面の無機粒子によって弾かれることになります。光がポリマー成分にあたるのを阻害しているわけですので光吸収を測定すること自体が難しくなるという仕組みです。

Q16

プラスチック混合物のそれぞれの含有率を予測する場合どの程度の割合であれば予測可能でしょうか。1%混入していてもわかるものでしょうか。

近赤外光は透過しやすいというのは、言い換えれば、光吸収があまり起こらないということになります。このため少量のサンプルでは明確な光吸収ピークを発生しないかもしれません。とは言って少量でも大きな吸収ピークを生じる官能基もありますので、測定対象によっては可能かもしれません。
まずはデモ装置等をご活用いただき測定されてみると良いかと思います。

Q17

今回ご検討に使用された近赤外の小型分析装置ですが、調味料の成分分析など工場の現場で実施した事例はありますでしょうか。

近赤外光を使ったセンシングは青果物の糖度をライン上で測るといった目的で広く用いられています。
同様のアプローチは調味料の分析に適用できるかもしれません。どのような場所でどのようにサンプルを測定するかのデザインが非常に重要です。

サンプル測定

Q1

プラスチックの多変量解析をする際には、解析対象のサンプルの数はどれくらいが妥当でしょうか。

Webセミナー内で回答済み(セミナー動画をご確認ください)

Q2

"近赤外透過スペクトルのデータ取得後、生の数値の標準化は、どのように行うべきですか。

A. 1サンプル内の、各波長の吸光度を使って、標準化する
B. 1波長について、各サンプルの吸光度を使って、標準化する
また、同一サンプルでも、サンプル厚によって、吸光度が変わってくると思うので、Aのような処理が必要かと思うのですが、教科書などは、Bから始まることが多いような気がします。

近赤外スペクトルの吸光度は試料濃度とサンプル厚みによって変化します。たとえ同じ組成のサンプルであっても厚みが変わると測定するたびに吸光度が増減してしまうので、圧にも変化を除外するために標準化(正規化、ノーマライズとも呼ばれます)する必要があります。
この方法としては主に以下の2つがあります。
1. すべてのスペクトルに関して、特定のピークのの高さが1になるように補正する
2. スペクトルの長さ(ノルム)が1になるように補正する
申し訳ありませんがA,Bの標準化というのが具体的にどのような処理のことに該当するのか少しイメージがつかみにくく齟齬が出るかもしれませんので、上記の説明でご回答させていただきました。

Q3

環境暴露に伴う劣化を再現できる加速度試験が不明の場合、劣化度合の高低サンプルを用意できません。このような系でも、劣化モデルを構築可能でしょうか。

物性値ごとにサンプルを分けて判別モデルを作成するという方法が適用できるかと思います。

Q4

サンプルの厚みやサイズなどの光学的な測定値に影響を与え得るファクターを揃える必要は無いのでしょうか。

プラスチックをライン上で測定し判別するという制約がある場合、サンプルの厚みやサイズ等の形状を統一することは難しいかと思います。この場合は数学的な処理で厚みやサイズの違いによるスペクトルの変化を除去する必要があります。
このような方法はノーマライズと呼ばれ、以下のような操作を行います。
1. すべてのスペクトルに関して、特定のピークのの高さが1になるように補正する
2. スペクトルの長さ(ノルム)が1になるように補正する
同じ組成であっても厚みやサイズが異なるサンプルではスペクトル中のピークの高さ、即ち吸光度が変化してしまいますが、上記の処理を行うことで同じ組成のサンプルであればたとえ厚みやサイズが違っても同じ形状のスペクトルに補正することができます。

Q5

"PPの温度によって劣化の推定値が変動したりしないのでしょうか。
また、分光器の温度によっても同様に変動したりしないでしょうか。変動する場合、どういった対応をしていますか。

我々の測定方式では光源部-サンプル-検出器との間には数センチ以上離れているために測定時の装置の熱によってサンプル温度が変化するということはありません。
サンプルに熱を伝えませんので分光器側の温度も結果には測定の結果には特に影響を与えるものではありません。

波長・スペクトル

Q1

結晶構造やアモルファス構造が吸収する波長は、どうやって知るのでしょうか。

サンプルを溶融(アモルファス化)させた状態で測定すれば、アモルファス由来のピークが分かります。
その後、固まったサンプルのスペクトルを測定しピークの違いを調べれば結晶由来のピークが特定できます。

Q2

反射型の場合、劣化による透過率の減少による反射光の減少と透明なために深くまで浸透することで反射量が減少することはどのように識別できるのでしょうか。

透明で光が浸透しやすい試料については光照射面に対して反対側に反射板を設置することで深く浸透した光でも検出器側で捉えることが可能です。
また、劣化によって透過率が減少するのは主にポリマーの白化が原因であると思われます。白化とは透明なアモルファスが結晶ラメラを形成し光散乱することですので、近赤外スペクトルにおいてはアモルファスピークの減少とともに結晶ピークが相対的に増加することになります。
このような変化は透過率の減少によって一様にスペクトルの値が減少していくのとは異なるパターンとなります。

Q3

P18の二次微分スペクトル図において、劣化度合の見方についてご教示ください。Y軸方向正の値のピーク値が大きくなると劣化度高、負の値のピーク値が大きくなると劣化度低と判断すれば良いのでしょうか。

元のスペクトル中に吸収ピークがあると二次微分スペクトルでは下向きでかつマイナス値を持ったピークが発生します。
ご指摘の通り、元の吸収ピークの吸光度(高さ)が増加した場合、二次微分スペクトル中の下向きのピークは、より下方向、つまり大きなマイナス値を持つように変化していきます。
ポリプロピレンの熱劣化ではアモルファスが消費され結晶が生成されるという現象が起こっていますので、二次微分スペクトルではアモルファス由来のピークは上向きに、結晶由来のピークは下向きに変化しています。

Q4

近赤外線分光器でプラスチックを含む劣化が診断できるか調べています。近赤外領域では必ず特徴的な吸収波長があるとは限らないとの認識はあっておりますでしょうか。

また、アクリルやガラスの特徴的な吸収波長というものは既知なものでしょうか。あるいは測ってみないと知られていないものでしょうか。表面のフィルム処理がされている部材はその影響を受けると考えるものでしょうか。

近赤外領域では結晶や非晶部に含まれる官能基の吸収ピークが現れます。場合によっては劣化生成物の官能基の吸収ピークも発生しますので、劣化に伴うスペクトルの変化というのは何らかの形で観察可能かもしれません。
近赤外光による劣化診断の適用事例がないポリマーとなると、ピークの帰属や劣化に伴う生成ピークの確認といった基礎的な知見を集める過程がまず必要になります。
表面のフィルム層が数マイクロ以下の場合は近赤外吸収はほとんど発生しません。
その一方、フィルム層とポリマー部分との界面部分が存在することで光散乱が起こり、スペクトルに干渉縞がが発生する可能性があります。

Q5

推定に有効な波長範囲を教えて下さい。

PP以外のプラスチックの劣化診断も可能でしょうか。また、PPの吸光度スペクトルを二次微分したものを説明変数、破断試験の値を目的変数にしてPLS回帰で推定したのでしょうか。

Webセミナー内で回答済み(動画をご覧ください。)

Q6

ハイパースペクトイルカメラに関して2μm以上の波長で赤外輻射が影響しだすように思いますが、この影響はどのように扱われているのでしょうか。

赤外輻射によって見かけ上の赤外強度が一様に増加することで、スペクトルのベースラインが変化するかもしれません。
このようなベースライン変化はベース部分を差し引く、二次微分処理するといったスペクトルの前処理で除去し、赤外吸収ピークの値だけをうまく解析することが可能です。

Q7

近赤外領域の光も吸収されるが割合として非常に少ないため、透過しやすいという話がありましたが、これはほかの波長領域と比べて吸収が少ないという認識でよいのでしょうか。

ご指摘の通りです。2500nm以上の波長領域は赤外光となりますが、この波長領域では照射した光が物質のごく表面でほとんど吸収されてしまします。このため透過した光た反射した光を計測すること自体が難しくなります。

Q8

劣化したポリプロピレンに1704 nm、1734 nmの吸収があるのは、アモルファスに1704 nm、1734nmの周期構造があるからでしょうか。

ご指摘の通りです。

ソフトウェア

Q1

ハイパースペクトル画像の分析に主成分解析ソフトは必要ですか

ハイパースペクトル画像は異なる波長の吸光度イメージを複数測定した画像データの集まりです。ポリマー等の物質は各波長ごとに吸光度が変化し、このような変化の仕方は物質に依存します。このため波長イメージごとにどのようなパターンが現れているのかを詳しく調べることで非常に多くの情報が得られます。その一方でハイパースペクトルカメラは多くの波長を使って多数の波長イメージを出力しますので、実際に波長イメージ間の違いを一つ一つ見比べるといった分析作業は非常に煩雑になります。このため波長イメージ間の登頂の変化を抽出する解析ツール(主成分分析が行えるソフト)は非常に必要性の高いものと言えます。

Q2

2次微分を用いるのは、そのほうが判別精度が良いからでしょうか。また、2次微分となるとノイズ影響が難しいと思いますが、スムージングなどに工夫が必要でしょうか。

二次微分によってベースラインシフトの除去、重なり合ったピークの分離、スムージンという3つ効果が得られます。このため近赤外スペクトルの前処理とし広く一般的に用いられています。

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