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バイオガス発電はSDGs達成の鍵!?

測定管理で活躍するバイオガス測定装置の種類と特徴

~測定管理とバイオガス測定装置のご紹介~

昨今、持続可能な開発目標(SDGs)が掲げられ、世界規模で環境に対する意識が高まってきました。SDGsは17の目標を掲げていますが、自然保護に関する目標が複数あり、またクリーンなエネルギーに移行していこうという目標も掲げられています。
環境省では2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわちカーボンニュートラル(何らかの人為的行動をした際に、排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素が同じ量)、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言しました。この目標に大きく貢献するであろう、「バイオマス発電」や「バイオガス発電」が注目されております。 これらの発電はカーボンニュートラルで環境に大変優しい発電である為近年注目が高まっております。

■従来の火力発電とバイオマス(ガス)発電の違いについて

従来の石油や石炭を用いた火力発電は二酸化炭素排出量が多く、日本の排出総量の約4割がこれらの発電(エネルギー転換部門)で占められています。2019年度で日本の二酸化炭素排出量は約11億トンですから、約4億トン以上は発電から排出されている事になります。
出典(温室効果ガスインベントリ| 温室効果ガスインベントリオフィス|国立環境研究所 (nies.go.jp)

ご存知の通り、二酸化炭素は地球温暖化の原因ですから、排出量削減及び比率を変えていくことは気候変動を抑え、私達の生活に直接影響を与える事になります。経産省も稼働中の石炭火力発電所140基のうち、約100基を2030年までに休廃止し、高効率型に切り替えると発表しています。ここからも火力発電の二酸化炭素排出量が多い事は明白でしょう。

一方ご紹介致しました「バイオマス発電」や「バイオガス発電」は通常はゴミとなってしまう自然資源などを利用して発電する方法となりますので、二酸化炭素排出量が火力発電よりも大変少ない発電方法となります。(プラント建設や材料運送まで含んだ場合の比較。バイオマス/バイオガス発電自体は二酸化排出量ゼロとなります)その為、二酸化炭素排出量を自然界における植物が吸収できるレベルに抑える事が可能です。植物は二酸化炭素を吸収して生長する事が出来る為、再度発電材料となるバイオマスを生産することになります。その為総合的にみれば大気中の二酸化炭素の量は増加しない事となります。

以降はバイオマス、バイオガス発電方式の詳しいご説明及びバイオガス成分測定管理の重要性と弊社からご提案可能な装置について述べたいと思います。

■バイオマス発電とバイオガス発電について

一見すると混同しがちですが、意味合いが異なります。

まず「バイオマス」とは生きている生物から得られる有機性資源となります。例えば余り木材や動物の糞尿、農産物の廃棄物(剪定枝やもみ殻、非食用部分)、生ごみ等の食品資源などです。

そして「バイオマス発電」とはこれらバイオマス資源を燃料にして発電する仕組みを指します。その仕組み自体は石油・石炭・天然ガスなどを利用する火力発電と同じで、その燃料がバイオマス資源に置き換わったと考えて下さい。(燃料を燃やし、発生した蒸気を使用してタービンを回し発電を行う)

一方「バイオガス」とは簡単に言えば「バイオマスから作られるガス」です。 動物の糞尿や植物などの有機物を微生物が分解する過程でバイオガスが発生します。 バイオガスはメタンや二酸化炭素を含むガスですが、このメタンを燃料として利用し発電を行うのが「バイオガス発電」となります。こちらも蒸気を利用しタービンを回す事で発電を行います。バイオガスが生成される過程で消化液が発生しますが、これは肥料として使う事が可能で再び作物を育てる事に利用出来ます。

つまりバイオマス発電もバイオガス発電も本来不要となる自然廃棄物を利用する発電で、また発電の際発生したものが植物を育てる等、自然に還元される為、まさしくSDGsで掲げている「持続可能な開発目標」に合致する発電方法なのです。

■バイオガスの測定手法とその違いについて

さて「バイオガス発電」ですが、どれくらいのバイオガス(バイオガスは主にメタン、二酸化炭素で構成)が発生しているのか、個々のガス成分がどのような割合なのか、管理や分析の測定を行う事は効率や安全面で大変重要なポイントとなってきます。現にメタンガスは可燃性ガスの為、多数の爆発事故事例があります。またより多くのバイオガスを発生させる条件を研究する事も発電量に関わる問題ですので、プラント運営にも大きく影響を与えます。その為バイオガスを測定する事は安全の観点からもまた運営や経営上大変重要なポイントとなります。

ここではバイオガスの主な測定手法(装置)とその原理/特徴をご紹介致します。

  1. ガスクロマトグラフ(GC)若しくはガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)
  2. 熱伝導式と電気化学セル式を組み合わせたもの
  3. 非分散型赤外(NDIR)方式センサー
精度金額扱い易さ耐久性
GC、GC/MS×
熱伝導式、電気化学セル式×
非分散型赤外(NDIR)方式センサー

①は複数成分混ざった対象物を個々の成分に分離し定量する手法です。

測定対象気体を加熱する事で成分が気化します。これらをキャリアガスでカラムと呼ばれる配管へ移動する過程で各成分に分離され,検出器で各化合物の量を測定することができます。

ppmレベルの高精度で測定出来る一方、測定装置ガスクロマトグラフィー自体が高価な装置であり、また研究室内など屋内での使用が基本となりますので、屋外のバイオガス発生箇所でのリアルタイム測定には不向きであり、価格面から複数箇所に設置する事は現実的ではありません。

1つの装置にメタンや二酸化炭素、酸素を測定する手法が複数搭載されているものがあり、それらの測定方式が②となります。熱伝導式はガス固有の熱伝導度の差による発熱体(白金線コイル)の温度変化を測定するもので、電気化学セル式はセンサーに貴金属の電極とイオン伝導体が使用されており、 検知対象ガスが触れると反応に依り電流が流れる為、その短絡電流を測定する事で濃度を測定するものです。

これらは安価で簡易的に測定出来る特長がある一方で熱伝導式については%以上の高濃度ガスの測定に限られる他、温度や湿度の影響を受ける為、定温環境で測定を行う必要があります。

電気化学セル式は経時変化で使用可能期間が通常6ヵ月から1年です。1年間で最大20%変化するとされています。更に、他のガスに対する測定時の干渉や誤指示の可能性もあります。また温度にも結果が左右されてしまいます。

③は広帯域な光(波長帯)を利用した分析方法で、光をガスに照射し、光学フィルターで分光、どの波長帯が吸収されたのか、吸収スペクトルを測定する手法となります。ガスにはそれぞれ特有の吸収波長領域を持っており、それを利用したガス濃度計測となります。光学測定方式にはいくつか方法が存在しますが、その中では非分散型赤外(NDIR)方式は比較的安価な手法となります。

この手法はppmレベルの高精度測定は難しく、また対象ガスに応じて固有の波長帯吸収がある事から1つのセンサーで測定出来るガス種は限定されてしまいます。(NDIR方式自体はガス選択性が非常に高い)
しかし、対象ガスによる高濃度・長時間暴露においても感度変動は原理的になく、また価格は比較的安価に抑えられる事から測定ポイントを増やす事での台数増設はし易いと考えられます。

■弊社取り扱いのNDIR マルチガス赤外線センサーについて

弊社では上記でご説明致しました、③非分散型赤外(NDIR)方式センサーのモジュールを取り扱っております。バイオガス測定に特化したモデルとなっております。

NDIR マルチガス赤外線センサー - ケイエルブイ (klv.co.jp)

メーカーのAwite Bioenergie社はガス分析システムの開発設計、製造を行っているドイツのメーカーです。現在では3000を超えるガス分析システムと150を超える自動化システムの世界的な導入実績を誇っております。

経験も実績も誇る本メーカーの製品の品質及び性能は非常に高く、既述の非分散型赤外(NDIR)方式センサーの原理的安定性に加えて、モジュール内にサーモスタットを内蔵、外部環境温度変化の影響を受けず、測定対象外のガス相互干渉を内部補正する機能が備わっている為、正確にガス測定をする事が可能となっています。

また測定に必要な重要機能は全てモジュールに集約されておりますので、お客様は各パーツの調達や基板への接続、データ校正などを一から行う必要がございません。予めバイオガス(CO,CO2,CH4)の測定設定されているため校正が不要です。

モジュールは約160×100㎜の小さいサイズで、複数測定ポイントを設ける為の複数台数が検討可能な価格となっております。

バイオガスプラント、廃水処理プラントなどの施設にも検討可能ですが、既述の通り測定に必要な機能は全てモジュール内に集約されておりますので、お手元で測定する頻度の高い研究用途にも最適です。効率良くバイオガスを発生させる手法や条件はまだ研究段階のものも多く、実績としましては「熱分解※に依るバイオガス発生の効率化」のご研究で採用されたケースがございます。

 ※熱分解とは有機物を無酸素(低酸素)状態で加熱することにより、合成ガスと炭化物に分ける事です。分解されたガスも残った炭化物どちらも発電燃料として使用が可能です。


文頭でお伝え致しましたSDGsや環境省の目標達成に大きく貢献するバイオガスの研究や利用は今後ますます進んでいくことでしょう。同時に、バイオガスを生産するプラントもより増加していくことが考えられます。

ご紹介致しました弊社取り扱いNDIR マルチガス赤外線センサー - ケイエルブイ (klv.co.jp)はプラント管理にもご研究用途にも活用が期待出来る製品でございますので、間接的ではありますが本製品が世界目標SDGsに貢献出来れば幸いです。

NDIR マルチガス赤外線センサー - ケイエルブイ (klv.co.jp)