- 蛍光ビーズ:冷蔵保存が必要
- 品質管理スライド:冷蔵保存不要
蛍光ビーズは冷蔵保存が必要でしたが、品質管理スライドの場合は不要です。
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お問い合わせこれらは「蛍光顕微鏡の品質管理ツール」です。
蛍光ビーズ(左)と品質管理スライド(右)
当ページでは「蛍光顕微鏡の品質管理」における基本的な内容から、先に示した2つの品質管理ツール──蛍光ビーズと品質管理スライドの違いについて、解説いたします。
蛍光顕微鏡は、蛍光性をもった生体・非生体試料の「蛍光観察」を行う際に用いられます。
蛍光顕微鏡には、顕微鏡本体に光源装置を取り付けますが、この光源は試料へ「励起」を促すために必要なものです。
顕微鏡からの励起光によって電子にエネルギーが加えられ、電子が励起状態になる。
電子が励起状態から基底状態へ戻ろうとするとき、エネルギー差が光となって放射。
励起状態のエネルギーから基底状態のエネルギーを差し引いたものが光です。
蛍光性を持った試料は、励起光によってエネルギーを獲得し、光を放射します。
蛍光観察とは、端的にいうと、蛍光性を持つ試料が光を発する様子を観察することですが、この光を放つ分子を「蛍光プローブ」といいます。(「蛍光プローブ」は、蛍光観察の際に用いられる、指示薬などの「ツール」を指し示す場合もあります。)
蛍光顕微鏡では、蛍光プローブを観察し、イメージを取得します。
その際に問題となるのが「蛍光顕微鏡の品質管理」です。
蛍光顕微鏡の「品質管理」とは、蛍光顕微鏡が「仕様通りの性能を保っているかどうか」継続的に管理・モニタリングしていくことで、精度や品質を保つことを指します。
「蛍光顕微鏡が仕様通りの性能を保つ」というのは当たり前のこととして認識されています。
しかし、実際は、人間が認識できない(あるいは違和感として処理される程度の)ずれが生じているケースがあります。
例えば、蛍光顕微鏡の照度が従来の70%に落ちていたとしてもユーザは気づかないと言われています。もしも品質管理が適切に行われていれば、照度の差に気づき、対応することができるはずです。
当たり前のことですが、正確なデータを取得するためには、正確な測定が必要です。
そして「正確な測定」は、「測定機器が仕様通りの性能で動作している」という前提があります。
この前提を保証するために、一般的に行われている方法が「校正」です。
校正とは、試験対象の機器によって得られた測定値を既知の精度の校正基準の値と比較することです。
このことは、一般に国家計量標準研究所からの標準器または基準器の使用を意味します。校正された機器に利用することによって、計量学の意味での測定を実施することが可能になります。
例えば、ピアノの調律の際には、基準となる音の「周波数」を合わせることで、全体の音を調節します。
分光器の場合も、校正のための基準があります。
分光器は定期的に校正を行う必要があり、通常波長校正には低圧水銀ランプを使用します。
・モノクロメーター:435.7nmの代表波長で校正。
・多波長分光器:一般的に水銀の代表輝線3波長(435.7nm、546.1nm、577.0nm)を使用した高次多項式で校正を行う。
科学的測定を行うためには多くのデータが必要ですが、データは同等の基準のものである必要があります。
このように、一定の「基準」に従って、校正が行われることで正確な測定を行うことができます。
「校正」は正確な測定を行うために必須です。
しかし、蛍光顕微鏡には、分光器のように、明確な「校正の基準」がありません。
そのため現在、蛍光顕微鏡の品質管理、再現可能な測定は難しいというのが実情です。
蛍光技術の品質保証の向上は「機器の特性評価」と「(現在のところほとんど手に入らない)蛍光測定の性能に関する国際的に認められた目的適合ガイドラインの開発」に大きく依存しています。
「機器の特性評価」は、それぞれの特定の蛍光技術の特別な要件を考慮に入れ、操作が簡単で信頼性のある蛍光標準の利用可能性に依存します。
【参考】How to improve quality assurance in fluorometry: fluorescence-inherent sources of error and suited fluorescence standards.(最終閲覧日:2019年6月25日)
そうした現状においても信頼できる測定データを得るためには「機器が仕様通りの性能を保っているかどうかを管理する」必要があります。
そこで、蛍光顕微鏡ユーザは「蛍光ビーズ」や「品質管理スライド」を用いて、品質管理を行い、
等「目に見えないエラー」をチェックし、蛍光顕微鏡が仕様通りの性能を保っているかを管理しています。
蛍光ビーズ(左)と品質管理スライド(右)
蛍光顕微鏡を品質管理する際に用いられてきたツールには「蛍光ビーズ」と「品質管理スライド」があります。
ここからは「蛍光ビーズと品質管理スライドがどのように違うのか」に焦点を当てて見ていきます。
蛍光ビーズは「一度きり」しか使うことができません。
これに対し、品質管理スライドは、数年間にわたり、何度でも繰り返し使用することができます。
蛍光ビーズは冷蔵保存が必要でしたが、品質管理スライドの場合は不要です。
蛍光ビーズ、品質管理スライドの検査手順は、それぞれ次の通りです。
一見、蛍光ビーズでの検査はシンプルに見えますが、データの分析をソフトウェアが行う点が品質管理スライドの強みです。 例として、ケイエルブイ取り扱いの品質管理スライド「アルゴスライド」のソフトウェアを挙げます。
ソフトウェアDaybook2
アルゴスライドのソフトウェアを用いることで「フィールドの歪み」や「スペクトル応答」など様々な情報をチェックすることができます。 こちらは「照明の不均一性」のチェック画面です。
ソフトウェアを用いることで、検査そのものがスムーズになるのはもちろんのこと、データの管理が容易になるというメリットがあります。 例えば、アルゴスライドのソフトウェアDaybook2を用いることで、
が可能になります。
蛍光顕微鏡の品質管理に関しては、上述した通り、数値化された明確な「基準」がないという現状でした。
そのため、品質管理ツールが「基準」となる必要がありますが、品質管理スライドとソフトウェアを用いることで、再現可能な品質管理が実現します。
同一条件での品質管理。これが、蛍光ビーズと品質管理スライドの最大の違いです。
蛍光ビーズは、毎回、異なるビーズを用いて品質管理を行います。
これに対し、品質管理スライドは何度も使用するため、同じスライドを用いた品質管理が可能です。
さらに、ソフトウェアによって結果を診断することができるので、毎回、同じ条件で品質管理することができます。
蛍光ビーズ | 品質管理スライド | |
---|---|---|
使用できる回数 | 使い捨て(一度きり) | 数年間に渡り何度でも繰り返し使える |
冷凍保存か否か | 冷蔵保存 必要 | 冷蔵保存 不要 |
検査のスムーズさ | 検査はシンプルだが、検査できる項目が少ない。 | スライドガラスを蛍光顕微鏡にセットするだけで、品質管理が開始できる。 専用のソフトウェアで画像を分析できるため、分析に時間を奪われない。 (データの管理、記録作業の時間も短縮) |
再現性 | 品質管理の品質を安定させることが非常に難しいため、同一条件での品質管理を担保できない。 | 毎回同じ条件での品質管理を実現。再現可能。 |
ARGOLIGHT(アルゴライト)社は、フランスに拠点を置く、蛍光顕微鏡用品質管理スライド製造メーカーです。
こちらに、同社のCEOへのインタビューが掲載されています。
インタビューでは、アルゴスライドを製作したきっかけや、従来の蛍光ビーズとの違い等、様々な内容に言及しております。 さらに、インタビューページ最下部には「デモンストレーション動画」をご用意いたしました。
ARGOLIGHT社の生み出した「アルゴスライド」は、同一条件での品質管理を担保する強力な品質管理ツールです。
同社の製品は、データの保存時に蛍光強度、スペクトル形状、またはパターンの空間的寸法が変化しません。そのため、非常に安定性の高い品質管理が実現します。
またアルゴスライドは、仕様の異なる6つの製品をご用意。お客様のニーズに応じて、お選びいただけます。
製品シリーズページへ顕微鏡に対する課題や取り組み、「アルゴスライド」の実際の使用感等をお客様にインタビューした内容を「お客様の声」に掲載しております。