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ハイパースペクトルカメラ HySpex Classic用途例

塗装の膜厚測定

塗装の膜厚測定

塗装は現代の生活において一般的で当たり前のものとなっており、アプリケーションは多岐に渡ります。そのため、塗装の品質や性能に対する要求は高くなっています。
例えば、耐摩耗性、耐腐食性、耐候性等の性能や、環境への適合性、さらに、外観も重要視されています。塗装された最終製品でこれらの特性を確保するためには、表面粗さ、塗装膜厚、均質性等のパラメータを適切に管理することが求められています。

ハイパースペクトルカメラ HySpex Classic製品詳細

ハイパースペクトルイメージングによる塗装の検査

ハイパースペクトルイメージングでは、塗装工程だけでなく、塗装後の検査や品質管理も含めこれらのパラメータを全て測定、監視することが可能です。ハイパースペクトルイメージングでは、塗装工程だけでなく、塗装後の検査や品質管理も含めこれらのパラメータを全て測定、監視することが可能です。

また、従来の技術ではエリアの部分的な測定に制限されてしまいますが、ハイパースペクトルイメージングでは、より広いエリアをスキャンして塗装膜の特性の全体像を把握することができます。

塗装の乾燥膜厚(DFT)の測定

この研究では、乾燥膜厚(DFT)が異なる8つの塗装パネルを用意して調査しました。

目的サンプルの膜厚予測

この研究目的は、塗装パネルの分光情報に対して教師ありの機械学習アルゴリズムを使用し、新しいサンプルの塗装膜厚を予測することです。

図1には塗装パネルが色分けされ、基準となる乾燥膜厚(DFT)の値がラベル付けされています。 これらの値は1ヶ所のみで測定されたものであり、サンプル内の厚みのばらつきや不均一性は考慮されていません。

塗装膜厚サンプル

図1: 乾燥膜厚(DFT)が異なる8つの塗装パネルの疑似カラーRGB画像

一見、どのパネルもほぼ同じに見えますが、各画像ピクセルには930~2,500nmの短波長赤外線(SWIR)領域における塗装膜のスペクトル情報が含まれており、これを用いることにより、厚さの違いを検出することができます。


すべてのサンプルにおいてDFTの基準測定が行われ、色分けできました。これにより、新しいサンプルの厚みを予測するための教師付き機械学習モデルの学習が可能になります。

ハイパースペクトルカメラによる塗装スペクトル測定

ハイパースペクトルカメラHySpex SWIR-384と、広帯域ハロゲン照明を用いて塗装パネルをスキャンしました。このハイパースペクトルカメラは930~2,500nmのSWIRの波長域をカバーし、波長分解能は5.45nm、空間分解能は250μmです。

「低バックグラウンドノイズ」、「高ダイナミックレンジ」、「優れたS/N比」を特徴とするこの最新鋭のハイパースペクトルカメラは、塗装の厚みや品質評価に必要な性能を有しており、高品質の画像データを提供することが可能です。

ハイパースペクトルカメラ HySpex SWIR-384

ハイパースペクトルカメラ
HySpex SWIR-384

測定を開始すると、パネル表面で反射した光がハイパースペクトルカメラ HySpex SWIR-384によって捉えられ、撮影画像内のピクセルごとに 930~2,500 nmの波長領域の完全なスペクトル情報が記録されます。

ここではモデルを学習させるために、各パネルの平均スペクトル特性のみに注目します(図2)。

目視ではパネル間の差はほとんど見えませんが、ハイパースペクトルカメラで取得したスペクトルを見ると、反射強度のシフトが明確に示されていることが分かります。

PLS回帰モデルの作成

この特徴的なスペクトル情報はPLS回帰モデルの学習に利用することができます。
1度モデルを作成すれば、新しい画像の各ピクセルのDFT値の予測に使用でき、サンプルの平均値を計算したり、各サンプル内の厚みのばらつきを検査したりすることができます。

塗装サンプル平均反射スペクトル

図2:8サンプルの平均反射スペクトル(図1と同じ色分け)。

乾燥膜厚(DFT)の変化により、塗装膜のスペクトル特性が変化していることがわかります。

回帰モデルを作成するにはデータセットが比較的小さいので、データのオーバーフィットを避けるためにLeave-One-Out Cross Validation (LOOCV) を適用しています。
LOOCVでは、8つのサンプルのうち7つのサンプルでモデルをトレーニング、残されたサンプルでテストを行い、すべての並べ換えに対してこの手順を繰り返します。

図3は、「予測値」対「基準値」をプロットしたものです。すべてのサンプルをモデルに含めた場合のR2回帰スコアは0.99以上であり、交差検証されたモデルの回帰スコアは0.86です。
小さなデータセットであるということと、点測定(ポイント測定)によるDFT基準値であることを考慮すると、これは非常に優れたモデル適合性であることを示しています。

塗装サンプル平均反射スペクトル

図3:PLS回帰モデルとLOOCV

完全なデータセットを用いて学習したPLS回帰モデル(青)と、Leave-One-Out Cross Validation(橙)によって予測されたDFT値を、測定された基準値に対してプロットしたもの。


塗装の乾燥膜厚(DFT)評価の効果的なツールへ

この分析から、HySpex‐Classic SWIR384を用いたハイパースペクトルイメージングは、塗装の乾燥膜厚(DFT)評価のための効果的で正確なツールとなる大きな可能性を持っていることがわかります。

高い空間分解能、スペクトル分解能を持つハイパースペクトルカメラHySpex SWIR-384は、DFT値の評価、局所的な膜厚の変化、ピンホール、その他の欠陥など、ピクセルレベル、さらにはサブピクセルレベルでより詳細な分析が必要なアプリケーションにその性能を発揮します。

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