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KLV大学 レーザーコース

レーザーの冷却方法とその重要性とは?わかりやすく解説

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レーザーは光を増幅して放射する技術で、金属の精密加工や測定、医療といった様々な分野で使われています

レーザーは光の力を利用した技術であり、私たちの生活に様々な形で役立っています。今回はレーザーを冷却する方法について解説します。

また、弊社KLVで取り扱っているレーザードライバは、すべてレーザーの冷却素子であるTECを内蔵しております。
そのため、レーザーの利用における温度管理の課題を解決したい方は、以下のリンクからレーザードライバのラインナップをご覧ください。

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このページを見ている方の中には、レーザーの冷却方法や温度管理の重要性について知りたい方や、レーザーの導入を検討中で周辺知識を深めたいと考えている方もいるでしょう。

具体的には、以下の内容に焦点を当てて説明します。

  • レーザーを冷却する方法とその重要性
  • TECコントローラーを使用したレーザーの温度管理

この記事が、レーザーの冷却方法を理解し、比較検討する際の参考になれば幸いです。

安定したレーザー出力を得るために必要なレーザーの冷却

微細加工や通信など、レーザーが使われる場合の多くは精密かつ安定したレーザーの発振・出力の制御が求められます。

しかし、レーザー発振器が稼働することにより温度が上昇すると、レーザーの出力が減退して安定した加工ができなくなったり、最悪の場合、故障する可能性があります。

一般的なレーザーは温度20~25度で出力が安定するように作られており、その温度を保つためには冷却装置が必要なのです。

レーザーの温度上昇による影響

レーザー発信機の温度が上がるとレーザーの出力がどれくらい減衰するかについては、使用しているレーザーの種類や材質、設計によって異なります。

レーザーの性能は温度に敏感で、温度が上昇すると出力が低下する傾向があります。また、使用中の温度変化も出力や波長の安定を崩すことにつながります。

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・閾値電流の増加

半導体レーザーでは、レーザー動作を開始するのに必要な電流(閾値電流)が温度とともに増加します。 これは、高温になるとキャリアの再結合が増加し、効率的な光生成が難しくなるためです。

・出力効率の低下

温度が上昇すると、レーザーの出力効率も低下します。 これは、高温でキャリア密度が増加し、非放射再結合が増加するためです。

・波長の変動

特に半導体レーザーでは、温度が上昇するとレーザーの発振波長が長くなる(赤方偏移)傾向があります。これは、バンドギャップエネルギーが温度に依存して変化するためです。

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レーザーの温度上昇による影響の具体的な数値

具体的な数値に関しては、レーザーの種類や設計に大きく依存します。
例えば、一般的な半導体レーザーでは、温度が20°C から 40°Cに上昇すると、出力が数パーセントから10パーセント程度低下することがあります。

しかし、これはあくまで一例であり、実際にはレーザーの材質や構造、使用環境によって異なります。

レーザーを冷却する3つの方法

レーザーの温度依存性を改善するために、主に以下の3つの方法でレーザーを冷却します。

  • 冷却ファン
  • 水冷
  • TECコントローラー

これらの方法を用いてレーザーの温度を一定に保つことで、出力の安定性を高めることができます。

それぞれの冷却方法について詳しく解説していきます。

また、現在もっとも理想的な冷却方法と言われているのはTECコントローラーによる冷却となっております。
>> そちらを見たい方はこちらをクリック

冷却ファン(空冷)によるレーザー冷却

冷却ファンによる冷却は、空気を用いた強制的な冷却手法です。
外部から冷たい空気を吸い込み、内部の熱い空気を外に排出することで、レーザーの温度が適切な範囲内に保たれます。

内部に冷却素子を持たないマルチモードのLD、個体レーザーとの相性がよいです。

冷却ファン(空冷)によるレーザー冷却のメリット

・低コスト
冷却ファンは他の冷却方法(例えば水冷システムやペルチェ冷却装置)と比較して、コストが低く、導入が容易です。

・簡易性
設置が簡単で、特別な設備や専門知識が不要なため、多くの工業用レーザーシステムや商用レーザー装置で広く利用されています。

・メンテナンスの容易さ
冷却ファンは比較的メンテナンスが容易で、定期的な清掃やファンの交換だけで良好な冷却性能を維持できます。

・適用範囲の広さ
さまざまなタイプのレーザー装置に適用可能で、特に熱発生が比較的少ないシステムで効果的です。

冷却ファン(空冷)によるレーザー冷却の利用上の注意点

・冷却限界
冷却ファンは、非常に高温になるレーザー装置や連続的に高出力で運用するレーザーには適していない場合があります。
そのような状況では、水冷システムのようなより強力な冷却方法が必要になることがあります。

・環境への依存
冷却ファンの効果は周囲の環境温度に依存します。
高温環境では冷却性能が低下する可能性があります。

・ノイズ問題
ファンを使用する冷却システムはノイズを発生するため、騒音が問題となる環境では適切ではない場合があります。

冷却ファンを利用したレーザーの冷却は、これらの特徴を考慮して適切に選択・設計することで、レーザー装置の性能と寿命を効果的に保つことができます。

特に低から中程度の熱負荷を持つレーザーシステムにおいて、コスト効率とシンプルさを兼ね備えた解決策として非常に有用です。

水冷によるレーザー冷却

水冷によるレーザーの冷却は、特に高出力や高熱負荷のレーザーシステムに適用される冷却方法です。この冷却方式は、冷却ファンによる空冷と比較して、より効率的な熱の除去能力を持っています。

空冷ファンと同じく、内部に冷却素子を持たないマルチモードのLD、個体レーザーとの相性が良いです。

水冷によるレーザー冷却のメリット

・高い冷却効率
水は空気よりも熱伝導率が高く、より多くの熱を迅速に吸収し移動させることができます。これにより、高出力のレーザーでも効率的に冷却することが可能です。

・温度制御の精度
水冷システムは温度調節が細かく行え、レーザーの性能を最適な状態で保つことができます。特に、熱影響がクリティカルな精密加工には不可欠です。

・スケーラビリティ
水冷システムは規模の拡大が容易で、大規模なレーザー施設や連続運転が求められる環境でも適用可能です。

水冷によるレーザー冷却の利用上の注意点

・コストと設備
水冷システムは設置が複雑であり、初期コストやメンテナンスコストが高い傾向にあります。

・メンテナンスの手間
水冷システムは定期的な水質管理やチャネルの清掃が必要で、これが適切に行われない場合、腐食やスケールの蓄積が生じることがあります。

・漏水リスク
水漏れは重大な損害を引き起こす可能性があり、特に電子機器を多用する環境では注意が必要です。

水冷は、その優れた冷却性能と温度制御能力から、連続運転や高出力が要求される工業用レーザー、大型の科学研究施設などでよく採用されます。

また、医療用レーザーや科学的な実験では、レーザーの性能を一定に保つためにも水冷が選ばれることがあります。

TECコントローラーによるレーザーの温度制御

TEC(Thermoelectric Cooler)コントローラーとはペルチェ素子という半導体に電流を流すことで温度を管理できるコントローラーです。
素子に直流電流を流すと一方の面で吸熱、もう一方の面で放熱が起こります。

TECコントローラーでの冷却は、シングルモードのLDなどTECが内蔵されているレーザーとの相性がよいです。
また、マルチモードのLDもTECでの冷却が可能です。

TECコントローラーによるレーザーの温度制御のメリット

・温度精度
TECコントローラーはセンサー(通常は熱電対や半導体温度センサー)を使用して、実際の温度を監視し、設定温度に対して素子の冷却または加熱を調整します。これにより、レーザーの動作温度を極めて正確に保つことができます。

・逆転可能な冷却と加熱
電流の方向を切り替えることで、ペルチェ素子の冷却面と加熱面を逆転させることができます。これにより、同一のセットアップでレーザー装置を冷却または加熱することが可能です。

・コンパクトで静音性
TECコントローラーとペルチェ素子は非常にコンパクトで、騒音がほとんどありません。そのため、実験室や医療機器など、静穏性が求められる環境での使用に適しています。

といった特徴をもっており、ここまでご紹介した冷却ファンによる空冷や水冷と比較し、非常にメリットが大きく、どのようなケースにおいても活躍することができるため、温度管理の用途で幅広く使用されています。

ペルチェ素子とは

そのTECコントローラーに使用されているペルチェ素子とは何なのでしょうか?
ペルチェ素子とは、ペルチェ効果を用いた板状の半導体熱電素子の一種です。

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ペルチェ効果は1834年にフランスの物理学者ジャン・シャルル・ペルチェ(J.C.Peltier)によって発見された熱電効果の一種で、異なる2つの金属を直列に接合して電圧をかけて電流を流すと、2つの金属の接合部分で吸熱及び放熱が発生することを発見しました。

ペルチェ効果を使ったペルチェ素子は前述したようにある方向に直流電流を流すと、片面で吸熱(冷却)し、もう一方の面で発熱する性質を持っています。

ペルチェ素子の原理

ペルチェ素子の原理について解説していきます。
ペルチェ素子は、2種類の金属とn型およびp型半導体を使用して、電流を流すことで熱を移動させる装置です。

・n型半導体:金属から電子が移動するときにエネルギーを吸収し、温度を下げます。逆に、n型半導体から金属に電子が移動するとエネルギーを放出し、温度を上げます。

・p型半導体:金属から電子が移動するときに放熱し、p型半導体から金属に電子が移動すると吸熱します。

電流の向きを逆にすると、冷却面と発熱面が逆転します。Π型構造は効率とコストを考慮して採用されています。

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TECの使い方

最後にTECの使い方を解説します。
TECの設置には大きく分けて4つの手順があります。

1.冷却準備

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・ヒートシンクの表面に薄く均等にサーマルグリスを塗布し、その上にTECを設置します。
・サーマルグリスの厚さはできるだけ薄く均一にしてください。

2.レーザーダイオードの取り付け

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・TECの上面にサーマルグリスを塗布し、その上にレーザーダイオードを配置します。
・ダイオードとTECの間にサーマルブリッジが発生しないように注意してください。

3.熱電対の設置

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・熱電対をレーザーダイオードとTECに取り付けます。熱電対はレーザーダイオードとTECの両方に確実に接触するように設置し、接着剤や熱伝導性の接着剤を使用して固定します。

4.配線

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・TECの電源ケーブルを正しい極性に従って接続します。
・レーザーダイオードの電源ケーブルも同様に接続します。

これでTECの設置は完了です。

TECコントローラ内蔵のデバイスについて

レーザーを使用する以上、温度管理は極めて重要であると言えるでしょう。
その中でもペルチェ素子を用いたTECコントローラーでの温度管理は、他の冷却方法と比較してメリットが大きく、現在ではもっとも一般的な冷却方法となっております。

弊社のレーザードライバは、すべてTECコントローラーを内蔵しているので使いやすくなっております。
それだけでなく、 LD電源は、パルスの精密制御が可能な「パルスジェネレーター」、任意の波形を生成できる「ファンクションジェネレーター」等を搭載した多機能LD電源を揃えています。

>>LD電源の製品一覧はこちら

まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回はレーザーの冷却とその重要性について解説させていただきました。

3つの冷却方法のメリット・デメリットとその中でもTECコントローラーの特徴や原理などを知っていただくことでレーザー製品を選ぶ際のお役に立てれば幸いです。

また、弊社では全てのLD電源にTECコントローラーが標準装備されています。
LD電源についてご不明点等ありましたら、お気軽に当社にお問い合わせください。
利用環境や用途などをお伺いさせていただき、最適な製品をご提案させていただきます。