FluxTrainar Proは、ノーコードでさまざまなスペクトル解析を行うことができる解析ツールです。 膜厚マップ作成において「高精度」と「簡単」を両立している点が、FluxTrainar Proの大きな特長です。 本記事ではそのポイントをご紹介します。
特徴① 物理モデルで[高精度]に膜厚を算出
まずは、FluxTrainar Proが持つ2つの膜厚解析モードを紹介します。
(1) Peak-based 手法
Peak-based 手法は、分光スペクトル中に現れる干渉縞の周期性に着目し、膜厚を算出する手法です。
主に単層膜を対象としており、比較的厚い膜で干渉縞が明瞭に観測できる場合に有効です。
必要な材料情報は平均屈折率のみであり、計算速度が速く、解析手順も比較的簡単であることから、
迅速な膜厚マップ生成に適しています。
(2) Fit-based 手法
Fit-based 手法は、薄膜の光学モデルに基づいて理論スペクトルを計算し、測定スペクトルにフィットさせることで膜厚を算出する解析手法です。
単に干渉縞の周期を読み取るのではなく、各界面での反射・透過、膜内部での位相変化、多重反射を考慮した物理モデルを用いて最適な膜厚を求めます。
この手法において特に重要なのが、材料の波長依存屈折率 n(λ) および吸収係数 k(λ) を用いて計算を行う点です。
FluxTrainar ProにはSiやSiO₂をはじめとする一般的な材料の波長別n,kデータベースが備わっており、
屈折率一定の近似ではなく、実際の光学特性に基づいた解析が可能です。
これにより、波長によって屈折率が変化する材料や、吸収を伴う材料に対しても精度の高いフィッティングが行えるので、膜厚算出の精度向上につながります。
Fit-base手法は、単層膜だけでなく多層膜にも対応でき、薄膜から厚膜まで幅広い膜厚レンジを扱うことが可能です。
材料情報を適切に設定する必要があるため、モデル設計には一定の知識を要しますが、その分、適用範囲が広く、高い精度が期待できます。
(3) 両手法の特徴比較
最後に、両手法の特徴をまとめます。
| Peak-based | Fit-based | |
|---|---|---|
| 対象 | 単層膜 | 単層膜・多層膜 |
| 膜厚レンジ | 比較的厚い膜 | 薄膜〜厚膜 |
| 必要な材料情報 | 平均屈折率 | n, k(波長依存) |
| 計算速度 | 高速 | やや遅い |
| 精度 | やや悪い | 非常に高い |
FluxTrainar Proの特長は、単一の解析手法に依存するのではなく、測定対象や目的に応じて2つの手法から最適な手法を選択できる点です。
膜構成が単純で高速な面評価を行いたい場合には"Peak-based手法"を、
薄膜や多層膜など複雑な構造を高精度に評価したい場合には"Fit-based手法"を選択することで、
速度と精度を両立した膜厚マップ測定が可能になります。
このような柔軟な解析手法の提供により、スペクトルカメラで取得した2次元分光情報を、現場で実際に活用できる信頼性の高い膜厚マップへと引き出すことができます。
特徴② ノーコードで[簡単]に膜厚マップを作成
FluxTrainar Proは、複雑なプログラムや設定を行うことなく、ブロックをつなぐだけの直感的な操作で、高精度な膜厚計算を実現できます。
ここでは、Fit-based Thickness Filter を用いた膜厚マップ作成の流れをご紹介します。
Step 1:ツールを起動
FluxTrainar Proを起動すると、ノードベースの編集画面が表示されます。 解析はすべてブロック(ノード)で構成され、ドラッグ&ドロップで簡単にフローを作成できます。
Step 2:Fit-based Thickness Filterの処理を追加
Thin Filmカテゴリから Fit-based Thickness Filter(thinfilm_fitbased_node)を選択し、
ドラッグ&ドロップして入力ノードと接続するだけで、処理を追加できます。
このフィルターには、測定スペクトルに対して物理的な反射モデルをフィッティングし、膜厚を算出するプログラムが組み込まれています。
Step 3:パラメータ設定
追加したFit-based Thickness FilterのBOXをクリックすると、膜厚算出プログラムが使用するパラメータを設定できます。
① レイヤー構造設定
Fit-based Thickness Filterでは、試料の構造を積層モデルとして扱います。
カメラ側とサンプルの間は空気層を前提としており、1層以上の薄膜が積層され、最下層に基板が存在する構造を前提としています。
各膜層については、計算のために以下を個別に設定します。
- 膜材料(波長依存 n, k)
- 初期探索範囲(Minimum / Maximum Thickness)
たとえば、「SiO₂ / Si(単層膜)」や「SiN / SiO₂ / Si(2層膜)」といった構造に対応しています。
これらの構造を用いて、各界面での反射・透過、層内での位相変化、多重反射を考慮した物理モデル計算を行います。
そのため、単純な干渉周期解析では難しい多層膜構造でも、安定して膜厚推定が可能です。
※材料は波長依存の屈折率(n, k)データベースから選択可能です。
② Quality設定
Quality設定で、精度と処理速度のトレードオフを決定します。
- 1:高速・概算評価向け
- 2:バランス型(推奨)
- 3:高精度
- 4~5:非常に高精度(処理時間増加)
- Custom:特定用途向けカスタム設定
高精度を選択すると処理時間が伸びるため、膜厚範囲を狭くして計算を効率化するなどの工夫が有効です。
Step 4:スペクトルデータを入力
測定した2次元のハイパースペクトルデータ(HSIデータ)を、そのまま読み込むことが可能です。
Step 5:リファレンス設定
光源強度のばらつきやセンサ特性の影響を除去し、正確な膜厚計算を行うためには、適切なリファレンス設定が重要です。
Step 6:膜厚マップを確認
解析が完了すると、Image View上に膜厚マップを表示することが可能になります。
以下のような確認・解析が可能です。
- 膜厚マップ(面内分布)の可視化
- 表示レンジ(Minimum / Maximum)の調整
- ピクセルごとの数値確認
- ヒストグラム表示による分布解析
まとめ
本記事では、FluxTrainer Pro を用いた膜厚マップ作成の特長を紹介しました。
FluxTrainer Pro は、ハイパースペクトルデータから膜厚を算出する際に、物理モデルに基づいた高精度な解析が可能です。
スペクトルの干渉縞から高速に推定する「Peak-based 手法」と、理論スペクトルをフィッティングして算出する高精度な「Fit-based 手法」を用途に応じて使い分けられ、単層膜から多層膜まで対応します。
また、ノーコードの直感的な操作画面により、解析フローを簡単に構築できます。
データ読み込みから解析、膜厚マップの可視化までを一貫して行うことができ、分布表示などによって結果を視覚的に確認できます。
研究開発から現場での品質管理まで、効率的で実用的な膜厚解析を実現するツールです。
\導入イメージがわかる!/
膜厚マップ作成デモ事例
実際に半導体ウェハの膜厚分布を可視化
実際の測定データを用いて膜厚マッピングを行いました。
スペクトルカメラとFluxTrainer Proを活用し、SiO₂膜の分布ムラや局所的な膜厚変化を高精度に可視化。
解析結果、マップ表示の具体的な結果をご覧いただけます。