関連技術①:加速試験
劣化評価は実際の製品を使用環境下で評価するのが最も確実な方法ですが、評価に長時間を要するため現実的ではありません。そこで加速試験により製品を過酷な条件下において劣化を加速させ短期間で評価します。加速試験では、試験環境と実際の使用条件は異なるので加速試験条件の設定を正確に行う必要があります。プロダクト解析センターでは、実際の使用環境との関係性を評価してきた実績があるので、最適な加速試験の条件を提案できることが強みです。
【再生樹脂の品質に困っている方 特に必見!】サーキュラーエコノミーのカギを握る!ハイパースペクトルカメラで樹脂や金属の劣化を読み解く新技術
2025.08.04 |

サーキュラーエコノミー(循環経済)とは、あらゆる段階で資源の効率的・循環的な利用を図りつつ、付加価値を最大化を図る経済です。
国連の予測によると、2050年には世界の人口が97億人に到達し、世界の資源利用量は現在の2倍に増加するといわれています。 従来の大量生産・大量消費・大量廃棄が一方通行で進んでいく経済システムをリニアエコノミー(線形経済)では、健全な物質循環を阻害する他、気候変動問題や天然資源の枯渇、大規模な資源採取による生物多様性の破壊などが起こる可能性があり、リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーのような環境負荷の少ない経済システムへのシフトが求められています。
日本国内では、循環型社会形成推進基本計画をもとに2030年に向けて、プラスチックの再生利用量や金属リサイクル原料を倍増させていくことを目標にしています。持続可能な社会の実現に貢献するため、再生樹脂(リサイクルプラスチック)利用の仕組みを構築しようとする企業の取り組みが増えています。
<再生樹脂利用のメリット>
・環境負荷低減:CO2排出量の削減、廃棄物の削減
・企業価値向上
<再生樹脂利用のデメリット>
・品質のばらつき
劣化原因とメカニズム
再生樹脂は原料の由来や使用履歴の違い、すなわち劣化状態の違いから生じる品質のばらつきが大きな課題です。 ここでは、金属を含めた劣化の主な原因となる要素をあげていきます。

1.熱劣化
樹脂は高温環境にさらされることで分子構造が変化し、強度劣化、変色、脆化、寸法変化などが生じます。空気中の酸素によって自動酸化反応が起こります。これは酸素と接する表面で劣化が徐々に進み、表面から分子切断による分子量の低下や架橋化が起こり、表面層が脆化したり、微細なクラックが発生します。

2.光
光によって劣化が進行します。太陽光の中でも特に紫外線が影響を与えています。紫外線の中でも、290nmより波長の短い光はオゾン層によって吸収されるため、光劣化は290~400nmの紫外線によって生じます。熱劣化と同じように自動酸化反応が起こります。

3.応力
物体が外部から力を受けることで、内部に応力が発生し劣化することがあります。
力を受け続けて少しずつ伸びる現象であるクリープと、外力によりクラックが入る現象であるストレスクラックがあります。

4.湿度・水分
水分によって分解することを加水分解といいます。ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどは高温水や高温蒸気中では加水分解による劣化が起きます。特にアルカリ性薬液の存在下では劣化が促進し、温度が高いほど短時間で加水分解する傾向にあります。

5.錆
錆(さび)とは、金属が空気中の酸素や水分と化学反応を起こしてできる酸化物や水酸化物のことです。特に鉄が錆びるときにできる赤茶色の物質(酸化鉄)がよく知られています。錆にも色によって赤錆、黒錆、白錆があります。

6.薬品
薬品が樹脂の内部に浸透・拡散することによって、膨潤や溶解により寸法が変化したり機械特性の低下が起こります。また、組み合わせにより、応力が生じた状態で薬品類が付着すると、通常の材料強度よりもはるかに小さな応力でクラックを生じるソルベントクラックと呼ばれる現象が起こります。
サービス

再生樹脂の品質のばらつきの課題に対して、全数検査や破壊試験により品質検査を行うことは現実的に不可能です。この課題の解決策として、パナソニック ホールディングス株式会社 プロダクト解析センターがサービスを提供している、光学スペクトルから品質(強度、色味をはじめとした特性)を評価する技術を紹介します。プロダクト解析センターでは、パナソニックグループ内の様々な製品の性能・品質・信頼性を化学的に評価し、原理・原則に基づきお客様に寄り添った品質評価のソリューションを提案しています。
■光学スペクトルから品質を評価する技術とは?
この技術は、光学スペクトルを取得すると非破壊で瞬時に品質が分かるというものです。
品質を評価するためには、予め光学スペクトルと劣化指標を紐づけた「劣化診断モデル」を作成する必要があります。劣化、すなわち色味の変化や化学結合の変化をスペクトルで評価することで、劣化を定量的に評価でき、さらには強度などの品質の評価も可能となる技術です。
光学スペクトル取得にはハイパースペクトルカメラを使用します。ハイパースペクトルカメラでは、光を波長ごとに分光することで、通常のRGBカメラ以上のデータを得られます。また面で計測できるため、工場のラインとの相性も良好です。
<本技術の導入によるお客様のメリット>
・再生樹脂の使用率UP、サーキュラーエコノミーの導入・推進
・非破壊検査による品質の保証
・現場でリアルタイムに測定することによる検査工程の人手不足の解消
さらにここでは寿命予測に関連した3つの技術を紹介させていただきます。

関連技術②:物性評価
物性評価とは、材料や素材が持つ特性を測定し評価する材料試験です。用途や目的に応じて引張試験やシャルピー衝撃試験などを実施します。プロダクト解析センターでは、パナソニックが扱う家電製品をはじめとしたさまざまな製品・材料の評価を行ってきた実績があります。家電製品の部材として使われる再生樹脂の試験実績も豊富にあります。試験規格外のオーダーメイドで試験にも対応可能です。

関連技術③:寿命予測技術
一般的な劣化現象を表すにはアレニウスモデルが使われます。アレニウスモデルは、温度と寿命の関係を示す式であり、寿命予測に使われます。プロダクト解析センターでは、使用環境に応じて疲労やクリープなどの影響度も考慮して、評価使用環境に合わせた寿命を評価させていただくことも可能です。

■プロダクト解析センターの強みは?
プロダクト解析センターでは、パナソニックグループ内の様々な製品の性能・品質・信頼性を科学的に評価し、原理・原則に基づきお客様に寄り添ったソリューションを提案しています。樹脂だけでなく製品に使われる接着剤やテープの寿命評価の実績もあり、製品の安全性と耐久性を科学的に裏付けてきました。ハイパースペクトルカメラで取得した光学スペクトルから寿命を予測する技術に関して社内外から多数のお問い合わせを頂いており、すでに4000回を超える測定を行った実績があります。
FAQ
依頼の流れと費用について教えてください。
A.
一例として下記の流れです。費用は①-③までで数十万円~になります。
①お問い合わせ
②打ち合わせ(導入の目的や使用イメージをヒアリングさせていただきます。)
③事前検証(本試験前に事前検証させていただきます。)
④本検証
⑤導入装置選定(検査工程に導入の場合、目的に合った装置を選定させていただきます。)
⑥導入
導入までどのくらいかかりますか?
A.
装置をご購入後すぐに検査工程に導入できるわけではなく、しっかりと検証を行う必要があります。導入ケースにもよりますが、おおよそ1年程度の期間をかけて、確実な立ち上げを目指します。
測定の制約はありますか?
A.
黒色のものは光をほとんど吸収してしまうので測定が困難なケースがあります。
お気軽にご相談ください。
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