ハイパースペクトルカメラ HySpex Classic用途例
撥水性塗料の判別
橋梁やビルといった鋼構造物は、風雨や塩分など、常に厳しい自然環境にさらされています。これらの外的要因は、構造物の鋼材を腐食させ、強度低下を引き起こすため、インフラの長寿命化には強固な防食対策が不可欠です。
そこで重要な役割を期待されているのが、水分を弾くことで腐食の進行を防ぐ「撥水性塗料」です。鋼構造物に撥水性塗料を塗ることで、鋼材表面の腐食の原因となる水分の浸透を防ぐことができるため、撥水性塗料が正確に塗布されているか、塗りムラがないかといった品質管理はインフラ維持管理に極めて重要です。
しかし、撥水性塗料は無色透明であるため、目視での検査やRGBカメラでの検査が難しく、塗布の有無を適切に管理することが求められています。
ハイパースペクトルカメラ HySpex Classic製品詳細
ハイパースペクトルカメラによる無色透明の撥水塗料の測定
ハイパースペクトルカメラは、物体に当たった光の反射や吸収の波長情報を詳細に捉えることができるカメラです。目視や一般的なRGBカメラでは捉えられない近赤外の領域において、撥水性塗料の成分が持つ特有の光の吸収・反射特性を捉えることで、人間の目では無色透明にしか見えなくても、撥水性塗料に含まれる成分とそうでない部分の成分の違いを識別することが可能になります。
ハイパースペクトルカメラ HySpex Classic SWIR-640 を用いた測定事例
当ページでは、鋼構造物の撥水性塗料の判別についてハイパースペクトルカメラHySpex Classicを用いた測定事例をご紹介します。
概要
測定サンプル |
塗装済みの鋼構造物。 塗装の上に撥水性塗料を塗った部分と塗料のない部分がある。 |
測定機器 |
ハイパースペクトルカメラ HySpex Classic SWIR-640 |
今回の測定では、塗装済みの鋼構造物を測定サンプルとして用意しました(写真1)。鋼構造物の塗装の上に撥水性塗料が塗られた範囲と塗られていない範囲があるものです。
測定機器には近赤外領域(960~2,500 nm)の測定が可能なNEO社製ハイパースペクトルカメラ「HySpex Classic SWIR-640」を用いてサンプルを撮影し、スペクトル画像を取得しました。
測定サンプル
写真1: 測定サンプル。塗装済みの鋼構造物
写真1の測定サンプルには、撥水性塗料を塗布した部分と塗布されていない部分がありますが、どこに塗料が塗られているのか目視で判断することは極めて困難です。
測定機器
ハイパースペクトルカメラHySpex SWIR-640と、広帯域ハロゲン照明を用いて鋼構造物のサンプルをスキャンしました。
HySpex Classic SWIR-640
波長範囲 |
960-2,500 nm |
空間画素数 |
640 |
スペクトルバンド数 |
360 |
スペクトル分解能 |
4.38 nm |
仕様詳細はこちら
HySpex SWIR-640は960~2,500nmのSWIRの波長域をカバーし、波長分解能は4.38nmの仕様を持つラインスキャンタイプのハイパースぺクトルカメラです。「低バックグラウンドノイズ」、「高ダイナミックレンジ」、「優れたS/N比」を特徴とするハイパースペクトルカメラは、塗装の有無の判別や評価に必要な性能を有しており、高品質の画像データを提供することが可能です。
測定結果
図1:測定結果
- 左上:RGB画像
- 左下:スペクトル画像(疑似カラー画像)
- 右:スペクトルデータ
- 赤:撥水性塗料あり
- 青:撥水性塗料無し
- 緑:白色板(リファレンス)
図1のグラフは、HySpex Classic SWIR-640で取得した鋼構造物の反射スペクトルデータです。近赤外領域(960-2,500 nm)において、撥水性塗料ありと無しで反射スペクトルの違いが捉えられていることが分かります。
HySpex Classic SWIR-640で撮影したサンプルの波長情報から得られたスペクトル画像では、撥水性塗料が塗布された範囲(赤色)と塗布されていない範囲(青色)が明確に分けられていることが示されています。(緑色は基準用に設置した白色板です。)これは、撥水性塗料に含まれる特定の成分が、近赤外領域の特定の波長の光を吸収・反射する性質を利用したものです。ハイパースペクトルカメラがその詳細なスペクトルの違いを捉えることができたため、目視での判別が困難だった「塗料の有無」をスペクトル画像により明確に可視化することができました。
まとめ
今回の測定により、近赤外ハイパースペクトルカメラを活用することで、無色透明な撥水性塗料の有無を、非破壊・非接触で判別できることが確認できました。
- 撥水性塗料の有無の可視化:
- 撥水性塗料は近赤外領域(960~2,500nm)で特有の反射・吸収特性を示します。ハイパースペクトルカメラでこのスペクトル特性を捉えることで、目視で困難だった塗料の有無を「スペクトル画像」として明確に可視化しました。
- 非破壊・非接触での検査:
- 近赤外領域において「低ノイズ」、「高S/N比」の優れた性能を持つイパースペクトルカメラHySpex Classic SWIR-640は、測定対象物を非破壊、非接触で測定することが可能です。
ハイパースペクトルカメラは、橋梁やビルなどの鋼構造物の腐食を防ぎ、インフラの維持・長寿命化に重要な役割を担う撥水性塗料の有無や塗りムラなどの分析が必要な場面で、その性能と活用の可能性が期待されます。
弊社では、ハイパースペクトルカメラの導入を検討されているお客様向けにデモサービスも行っております。
ご興味がございましたら、ぜひ弊社までお問い合わせください。
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