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ハイパースペクトルカメラ HySpex Baldur用途例

トマトの品質等級判定

トマトの品質等級判定

ハイパースペクトル技術でトマトの品質選別

ハイパースペクトルイメージング技術を活用することで、トマトの品質を非破壊で高精度に判定できます。一度に複数を分析できるため、工場ラインの大量処理にも適しています。

ハイパースペクトルカメラ HySpex Baldur製品詳細

品質選別システムの導入

現代の農業において、高品質なトマトを安定して提供することは顧客満足度や市場価値の向上に不可欠です。年間10,000トンを生産する中規模のトマト農園では、選別プロセスの精度と効率を向上させることを目指していました。目標は、梱包ラインでの高い処理能力を維持しながら、最高級で甘いトマトの品質のばらつきを減らすことでした。

既存の自動品質等級仕分け・選別システムは、個々のトマトを大量に処理することを前提として設計されています。しかし、この農園が扱う高級品の場合は、顧客の嗜好に合わせて、トマトを房に付いた状態のままで選別・包装する必要がありました。この要件により、選別工程は一層複雑化し、品質と効率の両立には革新的なアプローチが求められました。

そこでこの農園では、HySpexの産業用インライン型ハイパースペクトルイメージング(HSI)ソリューションを導入し、この課題に挑みました。本アプリケーションノートでは、直面した課題、導入されたソリューション、そしてこの技術革新によって得られた成果について詳しくご紹介します。

手作業選別による課題

ハイパースペクトルイメージングを導入する以前、手作業での選別には以下の課題がありました。

1.見た目と味の不一致

甘みの強いトマトは一般的に濃い赤色をしていますが、すべての赤いトマトが必ずしも甘いとは限りません。成長過程で茎や房に傷みが生じると、見た目は成熟していても、思ったほど甘くないトマトになることがあります。こうした場合、目視や手作業による検査では誤った等級判定が発生しやすくなっていました。

2.破壊検査の制約

甘さを判定するための従来の検査手法(実験室での分析や官能評価など)は、検査に時間がかかる上、トマト自体を破壊してしまうため、実際の出荷品には使えませんでした。そのため、1房ごとの甘さを手軽に測定することは難しいとされてきました。

3.手作業によるばらつき

担当者によって等級付けの精度に差が生じることがあり、それが最終製品の品質にばらつきをもたらしていました。熟練度や判断基準の個人差によって、同じ基準のはずのトマトでも評価が分かれてしまうことが課題となっていました。

4.デジタル化の遅れ

従来の手作業による選別では、客観的なデータの収集ができず、品質の傾向分析や業務改善のポイント発見、商品のばらつきを踏まえた戦略立案が難しいという課題がありました。

ハイパースペクトルイメージングの導入

手作業選別によるこれらの課題を解決するために、この農園ではHySpexの先進的なハイパースペクトルイメージング(HSI)ソリューションを導入しました。この技術は、トマトの糖度(Brix値)を測定するためにハイパースペクトルデータを取得するもので、房単位での非破壊・高速・高精度な品質判定を実現します。

トマトの品質選別

図1:この画像は、顧客先で実施された初期段階のデモ設置の様子を示しています。

表示されているのは、ハイパースペクトルカメラ、照明装置、そして品質判定の結果をリアルタイムに表示する統合画面が一体となった、コンパクトなHSIソリューションです。

HSIソリューションにより、次のようなことが可能になりました。

1.非破壊での甘さ測定

図1に示すように、本システムはコンベア上部に設置され、トマトに触れることなく、皮の上からリアルタイムに光学スキャンを行うことで、甘さ(糖度)を測定します。

2.自動品質分類

HSIソリューションは、各トマトの甘さを客観的に評価・記録することにより、手作業によるばらつきのない等級判定を実現します。

3.リアルタイムでのデータ表示

パッキングライン上の2〜4名の作業者に向けて、等級結果が色分けされた形で画面に表示されます。高速処理が求められる現場でも即座の判断を支援します。

4.処理能力の向上

本システムは1分間に最大40房のトマトを処理する設計となっており、2〜4人の熟練作業者によるカット・選別スピードに対応可能です。

導入による主な効果

インライン型HSI技術の導入により、以下のような大きな利点が得られました。

1.高級品質の一貫性向上

すべてのトマトに対して非接触でBrix値(糖度)を測定することにより、高級グレード製品の分類精度と信頼性が大幅に向上しました。

2.高品質品のロス削減

等級付けの精度向上により、本来は高品質であるにもかかわらず、誤って低ランクとして包装・出荷されていたトマトの数が大幅に減少しました。

3.データに基づく経営判断の強化

自動的かつ包括的なデータ収集と記録により、時間をかけた品質変動の傾向分析が可能となり、農園の運営最適化やマーケティング戦略・ビジネス方針の精緻化は実現しました。

4.拡張性と将来的な自動化への対応

このデジタル選別システムは、今後の生産ライン全体へのさらなる自動化・最適化を見据えた基盤としても活用でき、持続的な成長と改善を支える体制が整いました。

トマトの品質選別

図2:ハイパースペクトルカメラ「HySpex Baldur V-1024 N」で撮影された2つのトマト房の代表的なカラー可視化画像です。一部のトマトには予測された糖度(Brixスケール)が重ねて表示されています。一見すると右側の房も左側と同じくらい赤く甘そうに見えますが、実際には、成長中にトマトの茎が損傷を受けた影響で、糖度が低くなっています。

図2は、HSIソリューションが肉眼では見分けにくい糖度の違いを客観的に可視化できることを示しています。どちらのトマト房も同じように赤く見えますが、予測されたBrix値により、右側の房の方が実際には甘さが劣ることが明らかになっています。

このような差異は、植物の健康状態が果実の品質に与える影響を示しています。甘さの低下は、成長過程で茎に生じた損傷が原因とされています。HSIソリューションを導入する以前は、このようなダメージを受けたトマトが高級品として出荷されてしまうこともあり、顧客満足度の低下やブランドイメージの損失につながるリスクがありました。

結論

HySpexのハイパースペクトルイメージングソリューションを導入することで、この農園は手作業によるトマトの選別に伴う課題を解消しました。この革新的な取り組みにより、品質判定の精度・効率・一貫性が大きく向上し、現代農業における技術革新の最前線へと歩みを進めることとなりました。

リアルタイムかつ非破壊での品質評価を活用することで、同農園は高級品ラインの品質を向上させただけでなく、生産におけるばらつきの傾向についても貴重な知見を得ることができました。これにより、継続的な業務改善と市場拡大への道が切り拓かれました。

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