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ppbレベルでガスの測定・監視が可能な
量子カスケードレーザー式ガスセンサー

2022.08.22 | 量子カスケードレーザー

世界中で低濃度レベルのガスを測定・監視することが求められます。

地球温暖化対策として、世界中で脱炭素社会に向けてCO2の排出量の規制が厳しくなっています。脱炭素で先進的な欧州では2021年までにCO2の排出量を「95g/km」以下とする目標を設定し、規制をより強化しました。日本も2050年に二酸化炭素排出量「実質ゼロ」を目標としており、その施策として、製品・サービスの低炭素化や産業プロセスの脱酸素化が推進されています。

環境省 2050年80%削減に向けた機会と課題:
https://www.env.go.jp/press/y0618-21/mat01.pdf

地方公共団体における2050年に参加炭素排出実質ゼロ表明の状況:
https://www.env.go.jp/policy/zerocarbon.html

脱酸素化を進める上で、低濃度の二酸化炭素量を測定する装置は必要不可欠です。
世界的に二酸化炭素の排出量ゼロを目標としている今、より微量な二酸化炭素の検出が求められるでしょう。
しかしながら、従来のガス測定装置では大きく2つの課題があります。

①微量のガス測定

例えば半導体や赤外線分光を利用したガスセンサーで二酸化炭素を含む温室効果ガスの連続測定は可能ですが、検出可能な濃度がppm~%オーダーとなり、更に低濃度のガスを検出することは困難です。共存するガスを限定することで微量なガスを検出することは可能ですが、装置の前にフィルターなどの前処理を行うシステムを設置する必要がありコストやスペースなどの制約が加わるため、測定環境や条件によっては現実的ではありません。

②リアルタイムでの測定

ガスクロマトグラフィーなどの質量分析計を使うことで、ppt~ppbオーダーの微量なガスを検出することが可能です。また、二原子分子など分子極性のないガスも検出可能なため測定できるガス種は豊富です。しかしながら、測定を完了するまでに時間がかかりガスを連続測定することはできないため、時間による変化を捉えるガス濃度の監視には向いていません。

ガス測定の方式については以下の記事より確認できます。

『ガスセンサーの選び方【感度と速度とコストバランス】』
https://www.klv.co.jp/university/gas-sensor/column/how-to-select-gas-sensor.html

これら2点の課題を解消する測定方法がこちらになります。

量子カスケードレーザーを使った赤外線分光

先ほど微量のガス測定に課題があるとお伝えした赤外線分光ですが、それは検出器または分光器の波長分解能が不十分で対象ガスと共存ガスの赤外線吸収による干渉を切り分けられないことが原因です。この共存ガスとの干渉を解消する手段が「量子カスケードレーザー(Quantum Cascade Laser)」の使用になります。

量子カスケードレーザー(Quantum Cascade Laser)とは:
量子カスケードレーザーはサブバンド間遷移を利用し発振する半導体レーザーです。一般的な半導体レーザーはバンド間遷移を利用しているため、発振できる波長は使用される材料に依存しますが、量子カスケードレーザーは量子井戸の厚さを変えることで波長を選択することができます。

一般的な半導体レーザーと量子カスケードレーザーの原理比較

一般的な半導体レーザー

量子カスケードレーザー

量子カスケードレーザーのメリット

波長選択性が高い

量子カスケードレーザーは量子井戸の厚さを変えることで発振する波長を調整することができるので、従来の半導体では実現が困難であった、中赤外領域の波長を自由に選択できるようになりました。ガスの強い吸収スペクトルは中赤外3~20µmに多くみられるため、この領域において発振波長をチューニングできる点は他の光源には見られない強みです。

スペクトル幅が狭い

DFB-CW駆動の量子カスケードレーザーは半導体レーザーと同様に発振されるスペクトルの線幅が非常に狭いという特徴があります。そのため他の共存ガスの吸収を受けずにピンポイントの波長を対象ガスに照射し波長分解能が高い赤外線分光を行うことが可能です。

これは赤外線領域1~20µmにおける、各ガス種の吸収スペクトルを表したグラフになります。ご覧の通りガス種の強い吸収スペクトルは中赤外域に多く見られ、波長領域によっては他のガス種と干渉しています。

量子カスケードレーザーは中赤外領域の中で、他のガス種の干渉を受けずに対象ガスのみが反応する波長を提供できます。研究結果では原理上ppbレベルの微量ガスをリアルタイムで測定できることが報告されており、ガス測定の業界では注目を浴びています。

量子カスケードレーザーのデメリット

検出できないガス・分子がある

赤外線分光全般に共通していますが、N2やO2のような等核二原子分子は双極子モーメントの変化がなく赤外スペクトルを吸収しないため検出が困難です。これは量子カスケードレーザーを使った場合も同様です。これらのガスを測定する場合はO2センサーのような他の方式を使った測定器と併用頂く必要があります。

多種多数のガス・分子の検出には向いていない

量子カスケードレーザーは特定のスペクトルの光をピンポイントで照射できる強みがある一方、測定対象ガス1種につき1個用意する必要があります(DFB-CW駆動の波長掃引できる範囲で見分けられれば1個で済む場合もあります)。よって測定対象物が多くなれば量子カスケードレーザーの搭載数は増え価格が上昇し設置スペースが必要になります。多種多数のガス種を測定する用途であれば、中赤外領域にブロードな光源を使用したFT-IRが適していると言えます。

量子カスケードレーザーを使った赤外線分光法は、従来の測定方法では達成が困難であった、微量ガスの検出とリアルタイム測定を実現します。一方で検出できないガスや多種多様の計測には向いていない面もありますので、お客様の用途・目的・予算に応じた方式を選ぶ必要があります。

ケイエルブイではmirSense社(仏)の量子カスケードレーザーを取り扱っております。
mirSense社は世界初の10~17µmのスペクトルを発振することができる量子カスケードレーザーを開発・製造しています。お客様のご要求に応じたレーザーおよびソリューションを提案します。
量子カスケードレーザーの技術情報や価格に関する質問などありましたら是非お問い合わせください。

DFB-CW量子カスケードレーザー「uniMir」
https://www.klv.co.jp/product/qcl/uni-mir.html

FPパルス量子カスケードレーザー「PowerMir」
https://www.klv.co.jp/product/qcl/powermir.html

QCL搭載ガス分析向け検出モジュール「MultiSense」
https://www.klv.co.jp/product/series-multisense/

また、ケイエルブイでは量子カスケードレーザーだけではなく、他の方式のガスセンサーも取り扱っておりますのでお客様の目的にあったセンサーを紹介させて頂きます。
ご興味がありましたらあわせて確認頂けますと幸いです。

ガスセンサー一覧
https://www.klv.co.jp/product/gas-sensor/

『ガスセンサーの選び方【感度と速度とコストバランス】』
https://www.klv.co.jp/university/gas-sensor/column/how-to-select-gas-sensor.html

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