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原子を冷却することで量子的ふるまいを引き出し、その性質を用いる様々な研究が行われています。 そのような研究ではレーザー光を高精度に変調させ、原子がその条件で反応するよう超微細準位やゼーマン副準位レベルでの精密な操作が求められます。
当記事ではその際のレーザー光の変調と周波数ロックについて解説します。その際、有用なデバイスである、AOM(音響光学変調器)やレーザーロックPIDコントローラーについてもご紹介します。
冷却原子は「量子センシング」「量子コンピューティング(冷却原子方式)」「量子シミュレーション」などの量子分野の研究から、「超低温分子」「基礎物理の探索」「応用・実用化」まで拡がっており、必要となるレーザー光の要件も様々です。
これら研究分野に多く共通することとして、磁気光学トラップ(MOT)、レーザー冷却、状態準備、操作、検出があり、これらはレーザー光の緻密な制御が必要です。
それには、変調と周波数ロックによる周波数安定化が欠かせません。
レーザーには多様な方式がありますが、中でも特定の波長の光を安定して出力する上で、半導体一体型で頑健であり、光学系の構成もシンプルになるDFB(分布帰還型)レーザーが用いられています。特に比較的振動に強く可搬型の量子センサーや組み込み・種光源に向いています。
520nm~1650nmまでの可視から近赤外の波長域のレーザーダイオードをラインナップ。 お好みのレーザーダイオード、電源、パッケージをそれぞれ組み合わせてご選択いただけます。
DFBレーザーは単一縦モードで狭線幅のレーザー光を発振でき、外部制御によって高い周波数安定化が可能です。ただし、冷却原子を使うレベルの研究では、ただ電源をオンにするだけでは求める光を生み出すことはできません。
冷却原子を操作する研究では、極めて精緻かつ細かい周波数コントロールが要求されます。 対象の原子の共鳴周波数にあわせる、それを基準として微細にシフトさせた特定周波数の光をつくる、時系列変化し続ける目標周波数に沿って滑らかに追従させるなどの操作をしたいニーズがあります。
それらには目的(条件)に応じた適切な機器構成をする必要があります。
広い変調帯域を持つ電気光学変調器(EOM)が用いられています。ただしEOMで変調を行う場合、元の周波数の光もシフトした周波数の光も同軸に重なり、一定間隔で並ぶ離散的な複数周波数の光になります。
目的とする光以外が邪魔な場合はフィルターで除去する等の処理が必要になり、光学系が複雑化し、出力の損失も生じることに注意が必要です。
一方でこの一定の間隔を持つ複数の周波数の光が生まれる性質もうまく活用されており、例えば周波数差が超微細準位の間隔に一致する2本がラマン遷移を起こす用途に用いられています。
例えば自由落下に伴うドップラー偏移により原子の共鳴周波数がシフトした際に滑らかに追従させるようなMHzオーダーでの周波数シフトには、音響光学変調器(AOM)が多く用いられます。
レーザービームの変調を行うための電子デバイス。高出力、低ノイズ、高安定で、高速パルスにも対応。フリースペースタイプでは17モデルをご用意。
AOMでは0次光と変調後の1次光が分離されるため、1次回折光を取り出すことで単一周波数の光が得られます。ただしAOMを通すと、回折光は入射光と異なる向きに曲がります。周波数をシフトすると曲がる角度も変わるため、そのままでは課題があります。
そこでAOMを往復(計2回)通過させるダブルパスAOM構成が良く用いられます。 目的は、周波数を掃引しても出射方向(光軸)が変わらないようにするためです。
原理としては、1回目の入射で生じた角度のずれをレンズとミラー(キャッツアイ)の構造で折り返し逆方向にAOMに通過させることで相殺します。その際の注意点としては、2回通す結果として周波数のシフト量が2倍になるということです。それを計算して求める周波数の光をつくります。
参考:「E.A.Donley et al.:Double-pass acousto-optic modulator system」(最終閲覧日:2026/6/30)
柔軟に変調させる場合は上記のとおりフリースペースAOMでダブルパスAOMが用いられますが、一方で、固定周波数で特定のオフセットで使用したい場合はファイバーカップルAOMでシングルパスという選択肢もあります。
ファイバーカップルAOMは内部で特定の回折角に固定されており、アライメント調整が不要です。ファイバーで光路が確定しているため、振動や温度変化に強く、可搬型の装置に向きます。
レーザービームの変調を行うための電子デバイス。高出力、低ノイズ、高安定で、高速パルスにも対応。7波長それぞれで、2つのモデルをご用意。
レーザーを駆動している際に、温度や電流の状況で周波数が変動しずれが生じます(周波数ドリフト)。
その対策として、基準となる周波数でロックし、そこから逸れないようにフィードバック型の機構で監視しながら瞬時に基準に戻す安定化の機構が必要です。そこでPID制御を行います。
例えば、夏に室温32度の中、エアコンを26度に設定したとします。 すると早く26度に達するように、エアコンが冷たい空気を強く出して頑張ってくれると思います。
そうすると目標の26度に近づいていきますが、最初の強さのままで26度を目指すと、勢いで26度を下回ってしまうことが考えられます。
ですが、現代のエアコンは26度に近づくにつれ冷気の吹き出しが弱まり、目標値に早期に・かつ滑らかに着地しそれを維持してくれます。
この操作がPID制御です。
P・・・Proportional(比例)
目標値と現在の差に比例して出力を調整する。
I・・・Integral(積分)
目標値との差がある状態を時間で積み上げた量に応じた補正を掛ける。
D・・・Derivative(微分)
差が変化する速さ(傾き)に応じた補正を掛ける。
それにより、周波数ドリフトに対し、目標とする特定周波数にロックします。
そのようなPID制御をする機器を、「PIDコントローラー」と呼びます。
ただし、レーザー光の周波数安定化については、D(微分)について注意が必要です。 微分動作は高周波ノイズを増幅する性質があるため、かえってロックを不安定化させるケースがあるためです。
そのため、弊社で取り扱うレーザーロック用のPIDコントローラーでは、「D(微分)」の部分を持たず、代わりに積分を二重に重ねたPII²構成を採用しています。
最大 30MHzの広いPID 制御帯域幅でノイズ レベルを最小に抑えるように設計されたレーザー ロック PID コントローラ。タッチスクリーンでの制御が可能。
冷却原子を用いた様々な研究において、必要な周波数のレーザー光をつくり出し、安定化させるために様々な工夫がされています。
弊社ではAOMやレーザーロックPIDコントローラー(PII²)のほか、DFBレーザー、低ノイズ電源等を取り扱っております。詳細スペックのご確認、御見積など、お気軽にお問い合わせください。
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