品質管理スライドとは、特殊な蛍光パターンの埋め込まれたスライドガラスによって構成されており、通称「アルゴスライド」とも呼ばれています。

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ARGOLIGHT×品質管理スライド
ARGOLIGHT(アルゴライト)社は、フランス、ボルドーに拠点を置く蛍光顕微鏡用品質管理スライドの製造メーカーです。
ARGOLIGHT社は、蛍光システムの精度・品質を管理し、継続的にモニタリング方法として「品質管理スライド」を提案しています。
ARGOシリーズの製品には、ガラス質内に独自の特許技術「蛍光パターン」が組み込まれています。
スライドガラスに埋め込まれた「蛍光パターン」を蛍光顕微鏡で撮影、同社のソフトウェア(Daybook3)によって解析することで、システムのキャリブレーションをモニタリングし、バイアスを定量化、把握することができます。
ARGOLIGHT社の品質管理スライドは、その性質・安定性・性能が評価され、大手蛍光顕微鏡メーカー様でも導入されています。
ARGOLIGHT社の詳細はこちら
→蛍光顕微鏡の校正基準(ISO)策定メンバー、アルゴライト(Argolight)社とは?
いくつかの論文で発表されている通り「蛍光システムから再現性のある結果を獲得するのは難しい」という課題があります。
蛍光技術の品質保証の向上は「機器の特性評価」と「(現在のところほとんど手に入らない)蛍光測定の性能に関する国際的に認められた目的適合ガイドラインの開発」に大きく依存しています。
「機器の特性評価」は、それぞれの特定の蛍光技術の特別な要件を考慮に入れ、操作が簡単で信頼性のある蛍光標準の利用可能性に依存します。
例えば、分光器の場合、品質・精度を管理するための「校正基準」が定められていますが、蛍光顕微鏡は「校正基準」がなく、顕微鏡の品質管理を行うための有効なツールがありませんでした。
ARGOLIGHT社は、こうした課題に対するソリューションとして、再現性のある蛍光観察を実現するための「品質管理ツール」を提供しています。
「蛍光パターン」の埋め込まれたスライドガラス。蛍光パターンは、顕微鏡光源からの蛍光によって励起する。
ARGOLIGHT社の提供するソフトウェア。ソフトウェアでは、撮影した蛍光パターンの結果の閲覧や、データの管理が可能。
蛍光共焦点顕微鏡に関する新しいISO規格が2019年12月に公開されました。
→蛍光共焦点顕微鏡の性能を確認するための新しいISO基準の内容
品質管理スライドのスライドガラス内には、蛍光励起する「蛍光パターン」が埋め込まれています。
蛍光パターンは、一つのガラス内に複数存在します。
例えば「Argo-HM」のスライドガラス内には、次のようなパターンがあります。
「Argo-HM」のスライドガラス内に埋め込まれた蛍光パターン概要
このように、ガラス内には、蛍光励起する「蛍光パターン」が複数埋め込まれています。
ユーザは品質管理スライドを、ステージに設置し、スライドガラス内の励起された蛍光パターンを撮影することで、蛍光顕微鏡の品質管理を行います。
蛍光顕微鏡ユーザは、品質管理スライドを用いて「蛍光顕微鏡が仕様通りに動作しているか」をチェックすることができます。
使用手順はシンプルです。
品質管理スライドを試料台の上に設置します。
接眼レンズをのぞきながら焦点を合わせ、対物レンズを選択。
スライドを設置する
スライドガラス内には、複数の蛍光パターンが配置されています。この中から、目的の蛍光パターンを観察するために、スライドを動かしてください。
蛍光パターンが適切な位置に配置されたら、画像を取得して、保存します。
スライドガラス内の蛍光パターン
撮影、保存した画像を、専用ソフトウェアで解析することで、結果を確認することができます。
先ほど例に挙げた蛍光パターンがこちらです。
「Argo-HM」スライドガラス内に埋め込まれた蛍光パターンB「リングの2Dマトリックス」に該当します。
【パターンB - リングの2Dマトリックス】
このパターンでは、600×600μm2の範囲に、15μmずつに区切られた「39×39リングのマトリックス」が配置されています。リングのフィールドは8つのランドマークに囲まれており、中央に長さ7.5μmの十字があります。
ガラス内の「パターンB - リングの2Dマトリックス」は蛍光励起されます。
これをスライドガラスを動かして撮影、ソフトウェアで解析することで、蛍光顕微鏡の精度を確かめることができます。
蛍光パターンの撮影後、専用ソフトウェアで撮影画像を分析します。
「Daybook3」は品質管理スライドの画像分析を自動化し、蛍光顕微鏡の品質情報をモニタリングするソフトウェアです。
「Daybook3」にてPSF分析が追加されたほか、有償版では自動バッヂ解析機能や、顕微鏡パフォーマンスのモニタリングなども使用する事が出来ます。
今回はソフトウェアによる分析の一例をご紹介いたします。
「視野の歪み」とは、ピクセルサイズの値が、視野内の位置によって異なることを指します。
通常の蛍光顕微鏡では、画像の隅の視野は変形しています。しかし、顕微鏡対物レンズの歪み率(DR)は、メーカーから提供されていません。
そのため、ご使用の機器の「視野の歪み」を、ソフトウェアで継続的に評価・管理していくことで、蛍光顕微鏡での正しいデータ測定が実現できます。
品質管理スライドとDaybook3を使用することで、蛍光顕微鏡の「視野の歪み」を評価し、定量化された数値として割り出すことができます。
「視野の歪み」は、蛍光パターンの一つ「リングの2Dマトリックス」の撮影によって分析できます。
(画像の黄緑色のボックスで括られたパターンです。)
ソフトウェアでは歪み率は「DR(Distortion Rate)」として表現されます。
DRが画質に与える影響は数値によって判断できます。
実際のデータは下の項目でご紹介。
Argo-HM リングの2Dマトリックス
こちらが、Argo-HMの「パターンB – リングの2Dマトリックス」を、共焦点顕微鏡で撮影した画像です。
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(a)DAPI | (b)GFP | (c)Texas Red | (d)Cy5 |
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(a)DAPI、(b)GFP、(c)Texas Redおよび(d)Cy5のチャンネルについて、それぞれ「拡大倍率2」、「8回平均」で撮影。
レンズは「40×/1.3 プランアポクロマートオイル対物レンズ」を使用しました。
撮影画像を、ソフトウェアで分析すると次のような結果が出ます。
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(a)DAPI | (b)GFP | (c)Texas Red | (d)Cy5 |
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こちらは各チャンネルにおける視野の歪みを表す「歪みヒートマップ」です。
ヒートマップによって、ベクトルによる歪みの方向・大きさを決定することができます。
各ピクセル数の空間的距離(x, y)が均一な箇所は、黄色で表示されています。
「視野の歪み」が大きい、画像の隅は、赤色で示されています。
歪みヒートマップからは、多くのパラメーター(下記表を参照)を抽出することが可能です。
DAPI、GFP、Texas RedおよびCy5チャンネルの歪みに対する関連パラメーターの一部がこちら。
チャンネル | DAPI | GFP | Texas Red | Cy5 |
---|---|---|---|---|
ベクトルの大きさ(平均) [μm] | 0.13 | 0.13 | 0.13 | 0.14 |
ベクトルの大きさ(最小) [μm] | 0.01 | 0.01 | 0.01 | 0.01 |
ベクトルの大きさ(最大) [μm] | 0.48 | 0.48 | 0.48 | 0.56 |
X軸の歪み率 [%] | 0.11 | 0.11 | 0.06 | 0.17 |
Y軸の歪み率 [%] | 0.34 | 0.34 | 0.39 | 0.40 |
赤い数字が「歪み率(Distortion Rate)」を表しています。
「視野の歪み率(DR)が画質に与える影響」は下記の通りです。
赤文字で表された数値を確認すると、「Cy5以外の」すべてのチャンネルについて、歪み率がX軸に沿って0.2%未満であり、Y軸に沿って0.4%未満であることがわかります。
ただしチャンネル「Cy5」については、Y軸の歪み率が「0.40%」ですので、視野の歪み率が画質に与える影響は「小さくはないが、許容可能な範囲」となります。
(パラメーターの意味や計算に関する詳細な情報は、Daybook3の最新バージョンの文書に記載されています。詳細を知りたい方は、お問い合わせください。)
他にも、品質管理スライドとDaybook3を併用することで、様々な値を分析することができます。代表的なパラメータはこちらの9つです。
Daybook3では、それぞれのパラメータに対し、正規化された値を自動で算出します。
そのため、品質情報を「数値」として管理することができます。
※分析可能なパラメータ製品ごとに異なります。詳細はこちらでご確認ください。
ソフトウェア「Daybook3」では、
が可能です。
Daybook3では、蛍光パターンの撮影画像の分析はもちろんのこと、複数の顕微鏡の品質情報(画像の分析結果)をデータとして管理できます。
さらに自動バッヂ分析機能が搭載されたことで、より簡単に日々の性能の変化を記録し、過去にさかのぼっての原因追跡を行う等、蛍光顕微鏡の品質・性能の継続的なモニタリングが可能です。
また、分析結果はレポートとして出力できます。
ソフトウェアによる蛍光顕微鏡の品質管理には次のようなメリットがあります。
ソフトウェア「Daybook3」を用いることで、検査からデータの管理までをスムーズに行うことができます。
関連ページ:蛍光ビーズと品質管理スライドの違い
アルゴスライドのソフトウェアでは、顕微鏡の照明の均一性や視野の歪みなどを「数値」として管理することができます。
蛍光顕微鏡の精度・品質を数値で管理することで「再現性のある品質管理」が可能です。
長期間にわたる蛍光顕微鏡データの管理や記録は複雑になりがちです。
ソフトウェア「Daybook3」は、データを自動で記録し、選択した専用フォルダに保存します。
データの管理を自動化するため、蛍光顕微鏡の品質に関わる情報の記録・管理が容易になります。
また、データは共通のフォーマットで保存されるため、過去から現在に至るまでの数値の変化を見ることができます。
ARGOLIGHT社の提供する「品質管理スライド」には、より完全な品質管理ツールとしてのArgo-LM、Argo-SIM、Argo-HMと、廉価版のArgo-Check(3種類)がございます。
また「完全版と廉価版があること」以外にも、大別して3つの違いがございます。
各製品のスライドガラス内に埋め込まれた蛍光パターンは、製品ごとに異ります。
例として「Argo-HM」と「Argo-SIM」の「蛍光パターンの概要」を挙げます。
「Argo-HM」の蛍光パターン概要
「Argo-SIM」の蛍光パターン概要
各製品に「蛍光パターン」について、詳細は各製品ページでご確認いただけます。
ガラス質内の蛍光パターンが製品ごとに違うのは、それぞれの評価対象が異なっているからです。
こちらが「違い2」の「評価対象とする蛍光顕微鏡」となります。
製品ごとに、対象とする蛍光顕微鏡が異なります。
上述の通り、各製品の蛍光パターンが異なるのは、評価対象に合わせてスライドが設計されているからです。
製品ごとの対応は次の通りです。
この他にも「Argo-Check Intensityは強度応答を測定するために設計されている」等、チェックしたい仕様による違いがございます。
詳細は各製品ページにて直接ご確認ください。
9つのパラメータのうち、製品ごとに分析できるパラメータは異なります。
下記の表をご参照ください。(●=分析可能)
製品名 | ARGO-HM | ARGO-SIM | ARGO-LM | ARGO-Check Homogeneity | ARGO-Check Resolution | ARGO-Check Intensity |
---|---|---|---|---|---|---|
製品画像 | ![]() |
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照明強度の分布 | ● | ● | ● | ● | ||
視野の歪み | ● | ● | ● | ● | ||
共局存性 | ● | ● | ● | ● | ||
線広がり関数 | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
分解能 | ● | ● | ● | |||
ステージ中心のずれ | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
Z軸のステージドリフト | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
強度線形性 | ● | ● | ● | ● | ||
スペクトル応答性 | ● | ● | ● | ● | ● | ● |
「Argo-POWER」は、上述の製品「Argo-HM」に光パワーメーターが付属した製品です。
パワーメーターに関する詳細な仕様は、製品ページよりご確認ください。
上記、品質管理スライドは「蛍光顕微鏡用」ですが、こちらの製品は「マイクロプレートリーダー用」の品質管理スライドです。
「Argo-WP」は、Argolight社のマイクロプレートリーダー(ウェルプレートリーダー)の向けソリューションです。
マイクロプレートリーダーの機器の性能評価、測定データの信頼性を担保するための品質管理にお使いいただけます。
上記のARGO-SIMをはじめとした6製品が「蛍光顕微鏡」の品質管理に対応していますが、Argo-WPは「マイクロプレートリーダー」に対応しています。
当製品を用いることで、マイクロプレートリーダーの精度評価・継続的な品質のモニタリングを実現します。
Argo-WPも上記6製品と同様にスライドガラス内に「蛍光パターン」が埋め込まれています。
そのため、ARGOスライドと同様、照明の均一性、強度応答性、Z軸のステージドリフトなど、複数の項目の一括測定が可能です。
当製品は「96穴(ウェル)細胞培養プレート」の
に対応しています。
Argo-POWERHMは、対物高倍率(HM)レンズを備えた蛍光ベースのイメージングシステム(広視野、共焦点、スピニングディスク、およびその他の種類の顕微鏡等)の性能評価およびトレーサビリティ用に特別に設計されたものです。 本製品は、校正済みの光パワーメーター、Argo-HMパターン付きガラスと、イメージ分析ソフトウェアDaybookで構成されます。 校正済み光パワーメーターは、顕微鏡セットアップ内の試料面で光源の光パワーを測定するために設計されています。 Argo-HMガラスは、中に様々...
製品詳細ARGO-LMスライドは、蛍光顕微鏡・蛍光イメージングシステムの評価や精度管理を行うための品質管理ツールです。 当製品は、低倍率の蛍光イメージングシステム用に特別に設計されており、最大20倍まで対応しています。 当製品を用いた蛍光顕微鏡の品質管理は、世界の研究者様に採用されている、一般的な手法です。 「蛍光顕微鏡の視野にずれが生じてるのではないか」「購入当初より精度が落ちているのではないか」そのような違和感も精度管理を行うことで、ご使用の蛍光顕微鏡が仕様通りに動作しているかモニタリングするこ...
製品詳細ARGO-HMスライドは、蛍光顕微鏡・蛍光イメージングシステムの評価や精度管理を行うための品質管理ツールです。 当製品による品質管理は「蛍光顕微鏡がおかしい」「壊れたのではないか」そのように感じた際に、有用です。日常的に、蛍光顕微鏡の精度管理を行うことで、蛍光顕微鏡の故障を予防することができます。 当製品は、20~100倍率の高倍率蛍光イメージングシステム用に設計されています。
製品詳細ARGO-SIMスライドは、蛍光顕微鏡・蛍光イメージングシステムの評価や精度管理を行うための品質管理ツールです。 当製品は、構造化照明顕微鏡およびデコンボリューションアルゴリズムを使用するシステム用に特別に設計されています。 ARGO-SIMスライドは、異なる波長での顕微鏡の性能を評価する際、役立ちます。 特に、正確な3D測定のためのz方向のキャリブレーションと共焦点顕微鏡の解像度測定に対して有用です。
製品詳細蛍光顕微鏡の品質管理ツール「ARGO-Check Resolution」は、構造化照明顕微鏡のほか、デコンボリューションアルゴリズムを用いるすべての蛍光イメージングシステム向けに特別に設計されています。 当製品は「ARGO-SIM」の廉価版です。 より高度な蛍光イメージングの評価を行いたい場合は「ARGO-SIM」をお勧めします。
製品詳細蛍光顕微鏡の品質管理ツール「ARGO-Check Intensity」は、高倍率、主に20〜100倍の倍率用として特別に設計されたものです。 専用ソフトウェア「Daybook」を使うことにより、蛍光顕微鏡の 強度応答性 分光応答性 再配置 を評価することができます。
製品詳細蛍光顕微鏡の品質管理ツール「ARGO-Check Homogeneity」は、高倍率、主に20〜100倍の倍率用として設計されています。 専用ソフトウェア「Daybook」を使うことにより、蛍光顕微鏡の、「均一性測定」、「視野の歪み」、「色収差」などを評価することができます。
製品詳細