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KLV大学 光センサーコース

フォトダイオードの動作原理と特性

フォトダイオード(Photodiode)は、受光することで電流が流れるため光検出に使われる半導体ダイオードです。 光検出器や光センサーとして使われることが多く、CMOSセンサーやCCDセンサーなどカメラのイメージセンサー、医療分野、分析分野、光通信分野、産業分野のセンシングなど幅広い用途に用いられています。

この記事では、フォトダイオードの動作原理、代表的な種類や考慮する特性について解説します。

フォトダイオードの動作原理

フォトダイオードの動作原理は光電効果のひとつである光起電力効果を応用しています。
半導体に光が当たってキャリア(電子と正孔)ができ、その場所に電界がかかっていれば、キャリアが移動して電流が流れます。

最も基本的なPNフォトダイオードの場合、半導体であるSi(シリコン)の一部をP(リン)などの原子で置き換えたN型半導体とSiの一部をB(ホウ素)などの原子で置き換えたP型半導体の2種類を接合した構成になっています。

N型半導体には動きやすい電子が多いため一部がP型半導体に移動して正孔と結合し電荷を打ち消し合い、「空乏層」と呼ばれる領域ができます。

空乏層に光を照射すると電子と正孔が発生し、内部電界により電子はN型半導体側の電極へ、正孔はP型半導体側の電極へ移動し、電流が流れます。

N型半導体・P型半導体に電極を取り付けることで電流を取り出し、電流値として光を検出できるようになります。

フォトダイオードの動作原理

フォトダイオードの種類と構造

代表的なフォトダイオードの種類を3つ記載します。

PN フォトダイオード

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PNフォトダイオードは最も基本的な構造のフォトダイオードで、p型半導体とn型半導体をpn接合した半導体です。

N型半導体には動きやすい電子が多いため一部がP型半導体に移動して正孔と結合し電荷を打ち消し合い、「空乏層」と呼ばれる領域ができるため、外部から電圧を加えなくても光が当たると電流が流れます。
応答速度は遅いものの暗電流が小さい特徴があり、光量測定によく使われます。

PIN フォトダイオード

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PINフォトダイオードはPNフォトダイオードにおける空乏層の代わりに電子も正孔もない絶縁性のi型半導体をはさんだ構成になっています。

PINフォトダイオードはi型半導体の部分に電圧をかけて光を照射することで、電子・正孔の移動が加速され高速応答性が得られます。 応答速度が速く、暗電流も小さいので光通信の受信機をはじめ最も多く使われているフォトダイオードになります。

アバランシェフォトダイオード

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アバランシェフォトダイオードは、キャリア濃度によって層を分けた構造になっていて、図ではp+型半導体はキャリア濃度が高い層、p-型半導体はキャリア濃度が低い層です。

p-型半導体の層は光を吸収して電子、正孔を生成する役割、p型半導体の層は生成した電子を高電界で加速して電子雪崩(Avalanche/アバランシェ)を起こす役割を担っています。
電子雪崩(Avalanche)は加速された電子が半導体の原子に衝突して電子・正孔を生成し、生成した電子がまた別の原子に衝突して次々電子・正孔を発生させていく現象です。こうして電子、正孔が何倍にも増えることで微弱な光でも大きな電流が流れて検出できます。
そのため、アバランシェフォトダイオードは増幅機能を持つ超高速応答性のフォトダイオード(PD)で、微弱光信号の検出に適しています。 電子雪崩をおこすために高電圧を印加する必要があります。

ブラックシリコンフォトダイオード

ブラックシリコンフォトダイオード構造 ブラックシリコンフォトダイオード構造

ブラックシリコンフォトダイオードはアバランシェフォトダイオードの一種でキャリア濃度が異なるものを組み合わせた構造になっています。

シリコンの表面に原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)コーティングと表面ナノ構造化技術を用いて凹凸を作成したブラックシリコンを通常のシリコンの代わりに使用しています。

ブラックシリコンは製造の際に強力なフェムト秒レーザーを表面に照射して細かな凹凸のような形状を作るため、光の反射が大幅に低減され吸収率も高くなるので見た目は黒っぽく見えます。

通常のシリコンよりも表面積を広くすることで、高い応答特性、広い検知角度を実現。
特に紫外域においては、PNフォトダイオードの2倍の応答特性を持つ。

メリット デメリット
PNフォトダイオード ・暗電流が小さい ・応答速度長い
PINフォトダイオード ・低電圧
・応答時間短い
・消費電力大
アバランシェフォトダイオード ・応答時間短い
・受光感度高い
・高電圧
・高コスト
ブラックシリコンフォトダイオード ・紫外領域も含めて受光感度が高い
・検知角度が広い
・暗電流が小さい
・高電圧

フォトダイオードの特性

フォトダイオードの代表的な特性について説明していきます。

1.電流ー電圧特性

暗闇中でSiフォトダイオードに電圧を加えると、整流用のダイオードと同様の電流ー電圧特性が得られます。図のように準方向に電圧(アノード/陽極に正電圧、カソード/陰極側に負電圧)を加えると、電流が流れます。逆方向に電圧を加えると電流は流れにくくなります。ある一定の電圧を逆方向に加えるとツェナー降伏やアバランシェ降伏が発生して、急激に電流が流れるようになります。フォトダイオードに照射される光が増えると、曲線は①→②→③のように平行移動します。また、Siフォトダイオードの光電流は入射光量に対して優れた直線性を持っているため、センサーとして利用しやすいのが特徴です。

フォトダイオードの動作原理 フォトダイオードの直線性

2. 分光感度特性

入射光量と光電流の関係(光電感度)は入射光の波長によって異なります。この波長と光電感度との関係を分光感度特性といい、受光感度、量子効率などで表します。 受光感度は入射光量をワット(W)、光電流をアンペア(A)で表したときの両者の比率で、受光感度が高いほど、弱い光でも効率よく電流が流れセンシングできます。

Siは可視光域において光吸収係数が大きいため、薄いウェハでも十分検出できます。 近赤外域では光吸収係数が極端に小さくなり透過する割合が増えるため、感度が低下。 近赤外域においてSiが高感度を実現するためには厚いSiウェハを使って光吸収層を厚くする方法がありますが、この場合高い印加電圧が必要、暗電流が大きくなる、応答速度が遅くなるといったデメリットが発生します。

フォトダイオード特性

3. 応答特性(応答速度)

生成したキャリアをどれだけ速く外部回路へ電流として取り出せるかをしめす値です。通常応答時間は出力信号が10%から90%に達する時間で表します。高速通信に利用する場合は応答速度が速いことは重要になります。

空乏層の厚さが大きいほど、キャリアの移動距離が長くなるので時間がかかります。また、電界が大きいほど移動は速くなります。 そのため、空乏層の厚さを小さくし、高い電圧をかけることで応答時間を短くすることができます。また、SINフォトダイオードのように半導体材料の選択や不純物濃度を変化させることで応答時間を短くすることができます。 空乏層を狭くするとキャリアが生成される領域が狭くなるため、分光感度特性に影響がでます。

4. 暗電流

受光素子に光を照射しない時に流れる電流を暗電流といいます。暗電流はノイズの要因となるため、なるべく小さくすることが求められます。

暗電流の主な原因としては、拡散電流と表面リーク電流が上げられます。 拡散電流は温度の上昇に比例して増加する傾向があるので、冷却してキャリアを減らす対策が有効です。表面リーク電流は、暗電流の主要な原因ですが、チャンネルストッパーやガードリンクを設けるなどの構造的な対策で低減することができます。 また、逆方向バイアスに比例して増加するため、印加する電圧を抑えることも対策につながります。

超高感度 ブラックシリコンフォトダイオード ElFys SM

超高感度 ブラックシリコンフォトダイオード ElFys SM

可視光・近赤外光の受光性能に優れたSMDパッケージのブラックシリコンフォトダイオード。
ウェアラブルデバイスのヘルスモニタリング用途において非常に高い性能を発揮します

製品情報
ブラックシリコンフォトダイオード

ブラックシリコンフォトダイオード

原子層蓄積(ALD)コーティングを組み合わせた表面ナノ構造技術により集光性を高めた、広い波長範囲において高感度に光を検出できるフォトダイオードです。

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